NASAの研究チームは、木星の衛星エウロパに水蒸気の存在を確認した、とする論文を科学誌「ネイチャー・アストロノミー」2019年11月18日付電子版に発表しました。ハワイにある世界最大級の望遠鏡による観測で、表面から水蒸気の噴出を確認したといいます。

 エウロパは、木星の内側から6番目の位置を公転している衛星で、1610年にガリレオ・ガリレイによって発見された「ガリレオ衛星」のひとつ。地球の月よりわずかに小さい大きさです。

 NASAのボイジャー2号(1979年)や、木星探査機ガリレオ(1995年~2003年)の観測データにより、非常に滑らかな表面をしていることが確認されているガリレオ。このことから天文学者の間では、凍った表面の下に液体の水が存在しているのではないか、という仮説が立てられてきました。

 ルーカス・パガニーニ氏ら、NASAゴダード宇宙飛行センターの天文学者チームは、ハワイのマウナケア山頂にあるW.M.ケック天文台にある世界最大級の望遠鏡を使い、2016年から2017年にかけてエウロパ表面の観測を行いました。17日分の観測データの中から、わずか1回ですが水蒸気の噴出を示唆するものを確認することができたのです。


 パガニーニ氏は「これまで研究者たちは、液体の水を直接確認することはできないでいました。しかし我々は、次善の証拠である水蒸気を確認することができたのです」と語っています。研究チームの観測データによると、エウロパ表面から毎秒2360kgもの水蒸気が噴出していたといいます。

 NASAでは2020年に、エウロパを詳しく観測するための探査機「エウロパ・クリッパー」を打ち上げる計画が進行しています。今回、水蒸気の噴出が確認されたことで、エウロパ・クリッパーに寄せる期待も高まりそうです。

 ルーカス・パガニーニ氏らの論文「A measurement of water vapour amid a largely quiescent environment on Europa」は、科学誌「Nature Astronomy」電子版の2019年11月18日付に掲載されています。

<出典・引用>
NASA プレスリリース

<原論文>
A measurement of water vapour amid a largely quiescent environment on Europa」L. Paganini, G.J. Villanueva, L. Roth, A.M. Mandell, T.A. Hurford, K.D. Retherford & M.J. Mumma「Nature Astronomy」
Image:NASA

(咲村珠樹)