ノースロップ・グラマンとロッキード・マーティンの合弁企業、ロングボウ有限会社は2019年11月12日(現地時間)、同社のAH-64Eアパッチ用ロングボウ火器管制レーダーの性能向上試験が、アメリカ陸軍により成功裏に終了したと発表しました。

 攻撃ヘリコプターAH-64D/Eアパッチには、高性能なAN/APG-78“ロングボウ”火器管制レーダーが装備されています。Kaバンド(27~40GHz帯)を使用したレーダーで、特にヘルファイア対戦車ミサイルとの相性が良く、実戦において多くの戦車を撃破してきました。

 性能向上型のAH-64E向けには、これまでの空対空モード、空対地モードに加え、空対艦モードが新たに加わり、より幅広いシチュエーションでの戦闘に対応できるようになっています。今回の性能向上試験(FOT&E II)では、アメリカ軍がTOWやヘルファイアの後継として採用したAGM-179 JAGM(Joint Air-to-Ground Missile)の運用に対応するソフトウェア・バージョン6(AN/APG-78 V6)の性能が確認されました。

 試験は地上目標、海上目標の双方を対象に行われました。ロングボウ・レーダーは半径8~16kmの範囲で最大256の目標を探知し、うち攻撃の優先順位の高い16目標を選び出し、射手が選択可能な目標として提示。射手は選んだ目標に対してAGM-79を発射、目標の撃破に成功しています。

 ロングボウ有限会社の副社長を務める、ノースロップ・グラマンのミッションシステム担当副社長、スーザン・ブルース氏は「私たちのオープンシステム・アーキテクチャは、ハードウェアを何ら変えることなく、新たな機能を付加することができます。今回のバージョン6は、ロングボウ・レーダーにとって大きなアップデートとなり、より高性能な目標探知・追尾能力を提供します」と、今回のバージョンアップについて語っています。

 ロングボウ有限会社の社長であり、ロッキード・マーティンにおいてこのプログラムを統括するジム・メッシーナ氏は、バージョン6について「ロングボウのバージョン6ソフトウェアは、AH-64E乗員の生存性を高め、任務での負担を軽減するとともに、いわゆる“撃ちっぱなし”の範囲拡大をもたらします」とメリットを強調しています。

 試験が終了したことで、実戦部隊で運用されているAH-64Eのロングボウ・レーダーにも、このバージョン6がインストールされ、AGM-79運用能力が付加されていくことになります。見かけは変わりませんが、現代の装備はソフトウェアのバージョンアップにより、どんどん性能を向上させていくものなのです。

<出典・引用>
ノースロップ・グラマン プレスリリース
Image:U.S.Army/U.S.Navy

(咲村珠樹)