9月に開催された東京藝術大学の学園祭、2019藝祭でお目見えした学生制作の「牛頭馬頭神輿」。終了後に引き取り手を探すツイートがなされ、名乗り出なかった場合は解体されるということで行く末が心配されていましたが、静岡県伊東市にある「まぼろし博覧会」に引き取られることが決定しました。10月27日より公開されます。

 藝祭の名物ともいえるみこし。各専攻の1年生がジャンルを跨いだチームを作り、各々で趣向を凝らした立体物として制作されるものです。

 今回話題となった牛頭馬頭神輿「地獄の門番、牛頭と馬頭 逃げても逃げても四苦八苦」は、彫刻科、先端芸術表現科、音楽環境創造科、ピアノ科、管楽器科の1年生が作り上げたもの。モチーフになった牛頭と馬頭は、いずれも仏教の教えで地獄において亡者を責め苛む獄卒のことで、元の梵語(サンスクリット)で牛頭は「ゴーシールシャ」、馬頭は「アシュヴァシールーシャ」といいます。同じく牛や馬の頭と人間の体を持ち、姿が似ている牛頭天王と馬頭明王とは別の存在です。

 藝祭が終了し、役目を終えた牛頭馬頭神輿。制作したグループはTwitterを通じ、引き取り手を募集しました。

 このツイートが拡散され、ある人の元へと届きました。それは、静岡県伊東市にある不思議なもの全般が所狭しと展示されている“ニューカルチャーの聖地”「まぼろし博覧会」の館長、セーラちゃん。

 編集部の取材に対し、セーラちゃんは「ツイッターで見かけました。たくさんのフォロワーさんが紹介してくださいました」と、引き取ることになったきっかけを語っています。以降、内々に話しは進められ、セーラちゃん手配により運送の準備も完了。

 「芸術アートの最高学府である東京藝術大学の学生さんが、芸祭のために総力で制作され話題になった「牛頭馬頭神輿」を、27日にまぼろし博覧会にお迎えし宮入りしていただくことになりました。光栄なことであり、『ニューカルチャーの聖地』のシンボルにさせていただきます」と10月19日にツイートし、引き受けの手続きが終わったことを発表しました。

 知る人ぞ知る“ニューカルチャーの聖地”まぼろし博覧会は、これまでにも各地の秘宝館や閉館した博物館などの展示品を買い取り、貴重な文化遺産としてコレクションするとともに、新しい命を吹き込んで展示しています。







 牛頭馬頭神輿が安置されるのは、ガラス張りの大温室に設けられた場所。古代文明の遺跡レプリカをはじめ、とあるライブのために作られたという巨大な仁王像や、これまたインパクト大の聖徳太子像が居並ぶエリアです。「聖徳太子大仏、仁王像と並ぶ牛頭馬頭御輿の勇姿を楽しんでいただきたいです」と、セーラちゃん。



 巨大な仏像や古代文明の神像などが居並ぶこのエリアなら、異形の獄卒である牛頭馬頭像を安置するにふさわしい場所といえそうです。すでに漆黒の台座が用意されており、その場所を見つめるように、東京の高校生が作った狛犬像「むにむにぎゅっ」が鎮座しています。

 2019年10月27日、この台座に神輿の牛頭馬頭像が安置され、様々な仏像、神像とともに展示される運びとなりました。かなり大きな像なので、おそらく直立している馬頭の頭は天井に近くなるのではないでしょうか。

 実際に鎮座すると、牛頭の矛は目の前に迫り、まさに地獄で業苦を味わう亡者の気分になりそう。ぜひ「まぼろし博覧会」で、その迫力を堪能することをお勧めします。

<記事化協力>
2019藝祭 牛頭馬頭神輿(@senkanchoonpi)
セーラちゃん まぼろし博覧会(@maboroshimusume)

(咲村珠樹)