レッドブル・エアレース2019最終戦、千葉大会の予選が9月7日に行われ、逆転ワールドチャンピオンを狙う日本の室屋義秀選手は5位となりました。予選トップはスペインのフアン・ベラルデ選手です。

 金曜フリープラクティスとは違い、風向きが南ではなく東よりとなった土曜の予選。予選前最後のフリープラクティスまでは、弱めの風が海から(トラックの真横から)吹いていました。

 ところがチャレンジャークラスの予選直前、にわか雨が降り、それをきっかけにするように、風向きが東(浜から見て左側)よりに変化したのです。そして、コンディションは金曜より悪く、どのパイロットも金曜フリープラクティスのタイムより遅いタイムとなりました。

 予選ラウンド、最初に飛んだドイツのマティアス・ドルダラー選手が57秒159。3番目に飛んだフランソワ・ルボット選手が57秒052のタイムでトップに立ちます。


 そして8番目に飛んだベラルデ選手が、57秒の壁を破る56秒760をマーク。上位の目標タイムは57秒前後となってきました。

11番目に登場したイギリスのベン・マーフィー選手は、1本目のゲート2でパイロンヒット。ウイングレットにパイロンのパーツをつなぐジッパー部分が絡みつき、そのままタイムアタックを続けると危険と判断し、マーフィー選手はフライトを中断してセーフティ・クライムアウト(SCO)。


 幸い、上空で色々動いているうちに、絡みついたパイロンのパーツがウイングレットから外れてくれました。エアゲーターによるパイロン修復後、マーフィー選手は2本目のタイムアタック。58秒663で予選10位となりました。

 マーフィー選手に続いて、室屋選手がレーストラックに向かいます。観客席では、室屋選手を応援するフラッグを手にした、小さな女の子の姿も。

 最初のセクターは12秒551と、ベラルデ選手より速いタイム。しかしマリンスタジアム側の折り返しターンで遅れます。

 千葉のトラックは、一度エネルギー(速度)を失うと挽回が難しいレイアウト。室屋選手のタイムは57秒570となり、暫定4番手。惜しくも予選ポイント圏外が確定し、ソンカ選手とのポイント差を縮めることはできませんでした。

 続くオーストラリアのマット・ホール選手は、2018年千葉大会の覇者。2019年第3戦バラトン湖大会でも優勝しており、連勝と連覇を狙います。

 最初のセクターは12秒630と、ここまでで3番目に速いタイム。しかし折り返しのターンでタイムを大きく落としてしまいました。ホール選手のタイムは58秒056と暫定6位。室屋選手と同じく、予選ポイントの加算はなりませんでした。

 最後に残るは、現在ランキング1位のマルティン・ソンカ選手。最初のセクターで12秒464と最速を記録しますが、そこからタイムを落とし、56秒879でフィニッシュ。ベラルデ選手には届きませんでしたが、予選2位となり、2ポイントを積み増すことに成功しました。


 予選トップはベラルデ選手。ソンカ選手とルボット選手までが、予選ポイント対象となりました。4位にドルダラー選手、室屋選手は5位。年間ランキング2位のホール選手は7位となりました。

 予選順位により、決勝ラウンド・オブ14の組み合わせが決まります。室屋選手が対戦するのは、予選10位のベン・マーフィー選手となりました。予選10位とはいえ、マーフィー選手は千葉と似たトラックレイアウトの第3戦で2位に入っており、油断はできません。

 予選トップのベラルデ選手は、3回のフリープラクティスで全て2番手タイムをマークしており、千葉のトラック対策が十分にできていることがうかがえます。朝のハンガー取材で筆者が好タイムの理由を聞くと、

「バラトン湖大会が終わってから、千葉のトラックレイアウトのデータを使ってシミュレータ訓練などを積み重ねてきたんだ。特に千葉では風が大きなファクターになるけれども、それについても細かくデータを収集して、対応できる準備を整えてきたのが大きいかもしれないね」

 と語ってくれています。


 予選2位となったソンカ選手。金曜日のフリープラクティスで、2回ともトップタイムをマークするなど好調です。ハンガーで好タイムの秘密を質問すると

「秘密っていうほどのものじゃないよ。各セッションごとに気象条件は変わっているし、その時のフライトに集中することで、タイムが出たということだと思う。千葉のトラックは幅が狭く、両端の折り返しターンで少しでも膨らむと、トラックリミットラインをオーバーして1秒のペナルティを受け、簡単に順位を落としてしまう。とにかく先のことは考えず、1回ごとのフライトに集中していくことで、結果はおのずとついてくると思ってるよ」

 と答えてくれています。ソンカ選手は予選で2ポイントを積み増し、ホール選手との差は6ポイント、室屋選手との差は12ポイントに広げることに成功。過去ポール・ボノム選手しか達成していない、2年連続のワールドチャンピオンが視界に入ってきました。

 室屋選手がワールドチャンピオンを手にするためには、かなり厳しい状況となりました。予選後の記者会見で室屋選手は、可能性はゼロではないので、とにかく全力を尽くすことを口にしていました。


 日曜日の決勝は、接近しつつある台風15号の影響を考慮し、スケジュールが大きく前倒しとなりました。午前9時開場で、決勝ラウンド・オブ14開始が10時。ラウンド・オブ8からファイナル4は、12時開始予定となります。

 スケジュールは天候により、飛行の安全が確保できない場合には、キャンセルの可能性もあります。最新情報はレッドブル・エアレース千葉2019特設サイトや、公式Twitter(@rbar_jp)で、こまめに確認することをお勧めします。

(取材・撮影:咲村珠樹)