この時期、多くの街の夜空を花火が彩ります。様々な光と色、そしてその迫力はただ見ているだけでも見とれてしまうものですが、ある写真家が、花火を「火の鳥」にしたいと試みて撮影した写真に多くの人が目を奪われています。

 写真家の長瀬正太さんは、この道約10年のプロ写真家。風景・草花のマクロ撮影を得意とする長瀬さんは、花火大会での撮影を続けているうちに、いつしか「火の鳥」を花火の撮影で表現してみたいと思うようになり、4年前の前橋花火大会から火の鳥をイメージした撮影を始めました。

 そして、先日行われた長岡まつり大花火大会にて、「お隣の方に『なぜカメラを動かして撮ろうと思ったんですか?』と聞かれ…『火の鳥が撮りたかったんです』と。たぶんきっと、幼少の頃に図書館で読んだ手塚治虫先生の『火の鳥』のイメージなんだと思います」と、その時撮影した写真とともにツイート。



 夜空に咲く大輪の花も美しいのですが、カメラを動かして光のすじをつくることで、花火が散らすたくさんの火花を流線的に写し出しています。たくさんの光のすじが織り成すその様子は、抽象画の様でもあり、見た人のイマジネーションをかきたてるものがあります。

 その写真を見た人たちからは、「実写版火の鳥!美しいです」「普通でも美しい花火に更に華が添えられた感じ」「飴細工のようで素敵」と、さまざまな感想がリプライに寄せられています。中には「アニメのガッチャマンの科学忍法火の鳥」を思い浮かべる人もチラホラ……。

 この撮影法、失敗することも多いそうで、上手く撮れても一枚として同じものにならないところが奥深いようです。また、一期一会の奇跡が生み出す光の動きは全て似ることがなく、長瀬さん自身も火の鳥を追いかけ続けているといった感じです。

 長瀬さんに、今までの中で一番気に入っている写真について聞いてみたところ、ライトベージュのオーガンジーの透けた布を何枚も重ね合わせたような、神々しい雰囲気の1枚を見せてくださいました。

 長瀬さんは、「最も予想外の描写で好きだなと感じる1枚」とこの写真を評しており、「花火の玉の中の火薬を星と言いますが、その星の中にもさらに細かい星が入っていて分裂しながら弾け飛んでいくことでヴェールのような描写が得られました。そのイメージからか良く『女性っぽい』『花嫁っぽい』という感想を貰います」とコメントしてくださいました。

 見る人によって、色々な見方ができる表現方法。夏の夜空を彩る花火に、こんな撮影方法があったのですね。

<記事化協力>
長瀬正太さん(@syouta0002)

(梓川みいな)