テーブルの上のコップをひっくり返し、中のものをこぼした経験は誰にでもあるはず。それがもしも墨汁だったら……人気コミック「四十七大戦」の作者、一二三先生が自身に起きた悲劇をツイートしたところ、その惨状に同情と共感の声が集まっています。

 各都道府県に「ゆる神」という“会いに行ける神様”が存在し、日本の首都をかけて戦うバトルの末、なぜか鳥取県が勝利を収めてしまうまでの物語を描く人気WEBコミック「四十七大戦」(WEBマンガ総選挙2018第1位)。現在コミックスは6巻まで発行され、今秋の2.5次元舞台化もひかえる作品の作者、一二三先生を悲劇が襲ったのは、2019年7月3日(日本時間)のことでした……。

 早朝に「四十七大戦」の執筆作業を進めていた一二三先生。もう少しで今日のペン入れノルマが終わる……という時間帯でした。

 作業している机の上もいっぱいになり、作業の進捗状況やアシスタントさんに渡す原稿などを分かりやすく分類しておこう……ペン入れした線が乾くまでのちょっとした時間を活用しようとしたその瞬間。

 ノルマが終わる安心感で気が緩んだのでしょうか、一二三先生は机の上に置かれた墨汁(ペン入れ用)の容器を落としてしまったのです。ペン入れ作業はまだ終わっていなかったので、フタは開いたまま、そして床には整理しようとしていたペン入れが終わったばかりの原稿が……!

 中の墨汁がこぼれながら落ち、周りに飛び散っていくその瞬間を、一二三先生は「今際(いまわ)の際(きわ)に全てがスローモーションに見えるって本当なんだな……って思いましたね……」と語ってくれました。

 飛び散った墨汁は床と原稿、そしてペン入れ済みの原稿をデジタル化のためスキャンする複合機(買い換えたばかりの新品)を黒く染めました。一二三先生はその様子を「ちょっとあの……久々にすごい声だしましたね……」とツイート。具体的な言葉について伺ったところ「『ギャー』と激しく叫ぶというより『ぅへぁおぁああ!?』みたいな、従来の表現では形容できない情けない」ものだったといいます。

 原稿は幸いにして、一番上のもの以外は少しの被害で済んだそうで、1枚目だけ修正すればなんとかなりそうとのこと。背景はデジタル作画で入れる予定で、書き込みの少ないページだったのも救いだったそうです。取材に一二三先生は「細かいページだったら、そのまま成田に飛んでハワイ行きの便を買って現実から逃走していましたね」と心境を語ってくれています。

 飛び散った墨汁はある程度拭き取ることができたそうですが、複合機が重いため、その部分はカーペットを剥がして拭くのが難しいとのこと。「今から退去時の床の状況を考えて、遠い目になっているところです」と一二三先生。

 この惨状を写真付きでツイートしたところ、ファンや同業のまんが家さんから次々と同情と共感の声が寄せられました。筆者も以前ペンでまんがを描いていたことがあり、こういう事故はよくある話なのですが、かなりメンタルにダメージがくるのも事実。

 一二三先生は今回の悲劇について「早朝の悲劇がネタに昇華されるなら本望です」と、記事化を快諾してくれました。なんとかメンタル面のダメージから立ち直り、素敵な作品を仕上げてくださることを願っています。

<記事化協力>
一二三さん(@hifumix_0123)

(咲村珠樹)