自動で飛行するパーソナルな空の移動手段「空飛ぶタクシー」が、様々な企業で研究開発されています。ボーイングはそのうちのひとつ「Cora」を開発したベンチャー企業、キティーホークとパートナーシップ協定を結んだと2019年6月25日(現地時間)、両社が連名で発表しました。

 自動制御で飛行するクルマ程度の小規模な垂直離着陸機は、これからの都市交通のあり方を変える存在として注目を集めています。

 俗に「空飛ぶクルマ」や「空飛ぶタクシー」などと呼ばれるこの航空機は、動力源として電気モーターを使うケースがほとんど。このため、都市の大気汚染対策にもつながるという側面もあります。

 今回ボーイングと提携したキティーホークは、アメリカのアリフォルニア州に本拠を置く航空ベンチャー企業。小型の電動航空機を開発しています。「Cora」は2人乗りの電動垂直離着陸機。飛行はすべてコンピュータ制御で行われ、パイロットを必要としない「空飛ぶタクシー」用に開発されました。

 個人向けには販売せず、企業の「空飛ぶタクシー」サービスや、カーシェアリングのような形での利用を想定しています。現在ニュージーランド航空が興味を示して支援しており、試験飛行はニュージーランドの現地法人ゼファー・エアワークスのもとで行われています。

 全幅約11mの主翼には、浮上用モーターとローターが12組取り付けられており、これで垂直に離着陸を行います。前方への推進は、機体後部に取り付けられた大型のプロペラが担当。

 各モーターは独立制御されており、不具合が生じても全体に波及せず安全に飛行・着陸ができるようになっています。飛行高度は500~3000フィート(約153~915m)、巡航速度は時速約180kmで100kmほどの航続距離と、都市の空を移動するには必要十分な性能といえます。

 ボーイングとキティホークの提携は、次世代型の移動手段を模索する上で、両社の価値観や考え方が一致していたというのが理由。

 ボーイングで次世代のエコな移動手段を研究している「ボーイング・ネクスト(Boeing NeXt)」担当副社長スティーブ・ノードランド氏は「キティホークのような企業と協業することは、未来の移動手段を希求する我が社の目標を達成しやすくするものです。私たちは人々や製品、アイデアをいかに未来へつなげていくか、というビジョンを共有しており、安全性やエコシステムの基準は、この種の移動手段を下支えしてくれるものとなります」と、今回の提携について語っています。

 キティーホークとしても、ボーイングのような大企業と提携することで、研究開発の基盤が強化されることになります。

 キティーホークのセバスチャン・スランCEOは「キティーホークは飛行に関する先進技術を確立し、生活に革新をもたらすことを目指してスタートしました。ボーイングとの協業で、安全な電気での飛行を現実化する動きが加速されることに、興奮を禁じえません」とコメントしています。

 今回の提携で、ボーイングは長年にわたる航空機開発のノウハウをキティーホークに伝え、ともに新たな空の移動手段を現実のものとするため、歩んでいくことになります。

<出典・引用>
ボーイング プレスリリース
キティーホーク プレスリリース
Image:Kitty Hawk

(咲村珠樹)