各地で梅雨入りし、本格的な台風シーズンが近づいてきました。いつも天気予報でお世話になっている「台風の予想進路」と、その「予報円」。

 予報円は台風の中心が70%の確率で入ると予想される範囲を地図上に表したものですが、これが今後、半径を約20%小さく絞り込むとともに、予報の信頼度の表現をより的確に表現する形で発表されるそうです。2019年6月12日に気象庁が方針を明らかにしました。災害への備えにも役立ちますね。

 気象庁の発表によると、これは台風の進路予報の精度が向上したことによって実現されたもの。2018年から新しいスーパーコンピュータの運用が始まり、それとともに数値予報モデルの改良や、その利用手法を改善することにより、今後120時間後までを表す予報円の半径を平均約20%も小さく絞りこむことができたといいます。これにともない、風速25m/秒以上の暴風となる「暴風警戒域」も絞り込んだ予報がされることになるとか。

 予報円の大きさというのは、過去の台風進路予報の精度をもとに統計的に算出し、ある一定時間後に台風の中心が70%の確率で到達するであろう範囲を示したもの。これまで予報円の算出方法は72時間先までの直近と、96時間先以降の場合とで算出方法が違っていました。72時間先までの予報円では、台風の進行方向と速度ごとに算出し、96時間後以降は数値予報モデルで進路を複数予測し、その結果のばらつきをもとに描くという手法です。台風は偏西風など大規模な大気の流れの影響を受けて移動しますが、大気の流れが複雑になっている場合は、台風の動きも複雑なものとなります。夏の台風が「迷走台風」と呼ばれるのは、この大気の流れが安定せず、通り道ができにくいことが原因のひとつ。秋は比較的安定しているので、スムーズに台風が移動しやすくなるわけです。

 これが今後の予報円では、数値予報モデルを活用した算出方法に一本化されます。数値予報モデルで予測される台風の進路を複数算出し、ばらつきが小さい場合はグッと予報円を小さく、大きければそれをカバーできるよう大きめに描き、より可能性を的確に表現。さらに気象庁だけでなく、アメリカのNOAAなど複数の海外気象機関による数値予報モデルもあわせて利用、その要素を加味することで、よりサンプル数を増やし、信頼度を的確に表現することが可能になります。

 台風予報は過去の台風の進路情報の蓄積と、その活用によって精度を上げてきました。膨大なデータを短時間で処理できるスーパーコンピュータと、それを的確に活用する数値予報モデルの充実により、的確な予測が可能になったといえそうです。とはいえ、予測はあくまでも70%の確率。気象庁による台風の進路予報を活用しつつ、万が一のことを頭に入れて備えておきたいものですね。

<出典・引用>
気象庁 プレスリリース

(咲村珠樹)