突然はじまる、母の貴族ごっこ……。何のことやらと思うかもしれませんが、そんな母をもつ漫画家・並庭マチコさんが描いた「母の妄想についていけない話」が話題を呼んでいます。

 ツイッターに投稿されたこの物語の主人公は並庭さんのお母様。普段のお母様の様子が描かれているのですが……。ある日、お母様と素敵なホテルに行った時のこと。ホテルのエントランスに着くなり「私の城へようこそ」と、何の脈絡もなく、自身がまるで一国を治める主のようなふるまいになるとか。これは、並庭さんの幼い頃から家族旅行に行く度に「私の別荘」「私の家」と城と言わずとも似たようなことをしていたのだそうです。

 その動機は未だ不明で、外出先のみならず家の中でも突然お母様の貴族スイッチが入り……。並庭さんが、玄関で靴を履いて出かけようとすると、ちょっと待ってといわんばかりに「領地の視察ですか姫?」「民のようすをごらんになるの?」と、一方通行の貴族トークが始まるのでした。

 毎回出かける度に、このような状態でご家族の方はどのように対応しているのか聞いてみたところ「のったりのらなかったり、私と同じような感じです」と、時々、面倒くさくなることもあるようです。お母様が貴族モードから民モードに戻る時は「ごっこ遊びなので、会話の流れで普通に戻ります」とのこと。

 因みにこの設定は、お母様のパート先でも続きます。パート先では「姫」と呼ばれているそうで、パート仲間には貴族らしくエアードレスでごあいさつ。世話話で気候の話が出ると「あなたの領地の穀物のようすはいかが?」と領主トークに花を咲かせます。「だからどういう職場だよ」とツッコミを入れつつも、パート仲間の柔軟な受け入れ態勢に「職場の人やさしいな」と感動する並庭さん。

 そのお母様の気高き貴族魂は、日常会話の中でも健在。並庭さんが「我が家の領地ってどこの設定なの?」と聞くと、「プレハブ~駐車場」と、いきなり現実世界にぐいーっと引き戻されるという……。そこはどうせなら妄想で、「もっと広いことにしない?」と提案するも、「それは他国に失礼だから」と気高いお母様。

 普段は、たまに喧嘩もするけれど、仲のいい家族だそうです。このお母様の唐突にやってくる貴族化に、すっかり慣れてしまったそうですが、以前から変わっているなと感じていたとか。それでも、お母様のその明るさにご家族全員が癒されているようでした。

<記事化協力>
並庭マチコさん(@manga_m)

(黒田芽以)