エアバスは通算1万2000機目の機体となったA220-100を、組み立て工場のあるカナダのミラベルでアメリカのデルタ航空に引き渡したと、2019年5月20日(現地時間)発表しました。この機体はデルタ航空にとって12機目のA220。ヨーロッパの航空機メーカーが合同して設立されたエアバスにとって、記念すべき1万2000機目がアメリカ大陸(カナダ)で製造された機体となり、アメリカの航空会社に引き渡されたということは、エアバスのビジネスが大きく拡大していることを象徴するものとなりました。

 1960年代後半、ボーイングやマクダネル・ダグラス、ロッキードといったアメリカの航空機メーカーによるジェット旅客機市場の寡占が進んでいました。それに危機感をおぼえたヨーロッパの航空機メーカー、そしてイギリス、フランス、ドイツ政府が合同し、ヨーロッパの航空会社が要望する低コスト運行の短中距離ジェット旅客機を作る「エアバス」構想を母体としてエアバスは誕生しました。最初の旅客機であるエールフランス向けA300B2(型番は「エアバス(Airbus)の300人乗り級旅客機」を表す)が引き渡されたのは1974年のこと。エールフランスでは受領したA300B2を1974年5月23日、パリ~ロンドン線でデビューさせました。

 エアバスはその後A310、A320、A330、A340と機種を増やし、2007年には総2階建となる巨大なA380がシンガポール航空によって運航を開始しました。今回達成した1万2000機の半分となる、通算6000機目のエアバス機(A380)がエミレーツ航空に引き渡されたのは2010年1月。足掛け36年の道のりでしたが、6001機目から1万2000機目までの6000機は、わずか9年足らずしか要しませんでした。最初の6000機目までと比較すると4倍のスピード、通算1万1000機目の引き渡し(2018年3月)からは、たった14か月で1000機を引き渡しています。ちなみに通算1000機目(A340-300)がエールフランスに引き渡されたのは、最初の機体が引き渡されてから19年後の1993年3月でした。それだけ航空会社の受注と生産能力が拡大したということですね。

 また、この引き渡しに先立つ2019年5月8日には、デルタ航空に引き渡し前のA220-100を使って、カナダのケベック州上空で「12K(1万2000)」の巨大な文字を描く試験飛行も行っています。あまりにも規模が大きすぎて肉眼では確認できませんが、飛行機の飛行状況がわかる「Flightradar24」などのWEBサービスやアプリでは、この壮大な一筆描き飛行の軌跡が確認できました。

 今回デルタ航空に引き渡された通算1万2000機目のエアバス機となるA220-100は、もともとカナダのボンバルディエが開発した小型ジェット旅客機の「ボンバルディエ Cシリーズ」。ボンバルディエはCシリーズの生産・販売に関してエアバスと提携し、エアバスA220シリーズとなったものです。デルタ航空はA220を90機確定発注しており、A220シリーズ最大のオペレーターです。

 エアバスが公開した資料によると、エアバス機の引き渡し先でトップとなったのは、アジア太平洋地域の航空会社でおよそ4分の1以上。機種別で見ると、A320やA220の小型機シリーズが全体の7割を占めています。ボーイングでも大多数が小型機のB737シリーズで占められていますから、小型機による高頻度運航のニーズが高いことがうかがえます。世界の旅客機需要は旺盛に推移しており、エアバスもこの需要に応えるべく、カナダだけでなく2019年1月にはアメリカのアラバマ州に2か所目となるA220組立工場の建設も開始しています。この新工場で組み立てられたA220の引き渡しは2020年から始まる予定。通算2万機目の引き渡しも、そう遠くない将来にやってきそうです。

<出典>
Airbus:Airbus celebrates delivery of its 12,000th aircraft – an A220-100 to Delta Air Lines

(咲村珠樹)