痛み止めの中で、効果が強くよく使われている、ロキソニン。しかし、ロキソニンで深刻なアナフィラキシー反応を起こしたという事例がツイッターに投稿されたことで、ネット上では薬に関する知識について関心が高まりました。

 今年の1月にそのアナフィラキシーの顛末をツイッターに投稿したのは、ネットユーザーのYuriさん。

 「実は昨日、旦那が突然嘔吐して気を失って倒れました。 脳神経外科とかにたらい回された後に、喘息発作→体中に蕁麻疹に気づきました。 どうやらロキソニンでアナフィラキシーを起こしたらしい。 慌ててまた病院に飛び込み、ステロイド点滴でようやく回復。 ヤバかったです。 皆さんも気をつけて」と注意を呼び掛けるツイートを投稿したところ、多くの反響が。お見舞いの言葉とともに、同じく薬剤性アレルギーになったという人の体験談も寄せられています。

 Yuriさんのご主人は、幼少期よりアレルギー性鼻炎があったそうで、成人後にぜん息を発症。昨年、好酸球性副鼻腔炎と診断されました。これは難治性の慢性副鼻腔炎で指定難病にも認定されています。元々ぜん息の既往があったというご主人、その日処方されたロキソニンを飲んだ30分後、突然アナフィラキシー症状を発症したということです。ロキソニン自体は、以前は飲んでも大丈夫だったと言うことでした。

■ ぜん息持ちの人は大半の痛み止めが使えない

 ロキソニンに代表される、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、バファリンAなどに含まれるアスピリン、ロキソニンSなどに含まれるロキソプロフェン、イブなどに含まれるイブプロフェン、ノーシンや新セデスなどに含まれるエテンザミド、セデス・ハイなどに含まれるイソプロピルアンチピリンなどなど、市販薬・処方薬を含めると内服・外用薬ともに非常にたくさんの薬が出ています。

 これらNSAIDsに共通していることがあります。それは、鼻茸(はなたけ、鼻ポリープ)、副鼻腔炎(蓄膿症)の既往や治療歴、手術歴のある患者さん、大人のぜん息患者さんがこれらNSAIDsを服用すると、「NSAIDs過敏症」という状態を引き起こしやすくなるということです。Yuriさんのご主人は、これらの症状に全部合致していました。ちなみに、成人でぜん息の持病がない人はNSAIDs過敏症を起こすことは通常はありません。

 NSAIDs過敏症は、その過敏症状により、ぜん息型(気道型)とじんましん型(皮膚型)の2つに大別できます。Yuriさんのご主人の場合、じんましん型でも症状の重かったものであると考えられます。20歳以降になってぜん息が発症した患者さんの10%以上が、解熱鎮痛薬に過敏であると言われており、Yuriさんのご主人も30代になってからのぜん息発症であったので、この10%に入ってしまったものであると考えられます。

 このNSAIDs過敏症は、かつて「アスピリンぜん息」と呼ばれていましたが、アスピリン系以外にも化学構造式の似ていない、いろいろな種類の解熱鎮痛薬や非ピリン系の薬剤でも発症するので、現在はNSAIDs過敏症として総称されています。NSAIDs過敏症が起こる原因は現在はまだ解明されていません。

■ アレルギー体質の人が安全に使える薬は??

 アレルギー体質があり、過去にアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎がある人は小児ぜん息になりやすいという研究結果が出ています。しかし、成人後のぜん息では、アレルゲンを発見できるのは6割程度。残りの4割はアレルゲンを発見できない「非アトピー型ぜん息」と言われています。この場合、大人になってから(とくに中年以降)発症するケースが多くみられます。

 いずれのぜん息でも、NSAIDs過敏症を引き起こす原因となりますので、子どもでも大人でも、ぜん息がある人はNSAIDsの使用は極力避けた方が望ましいと考えられます。では、熱が出たときに使える薬は?

 アレルギー体質でも、比較的大丈夫だと考えられているのは「アセトアミノフェン」や「セレコキシブ」を主剤とした薬です。処方される薬の中では、カロナールやセレコックスといった薬が該当します。なお、ぜん息のある人は、病院で処方された薬を服用するのが最も望ましいので、あくまで知識として得るにとどめ実際必要な場合には必ず医師に相談してください。

■ ぜん息がある人が気を付けること

 ぜん息患者の気道は、炎症によって刺激に敏感になっているため、さまざまな要因がぜん息発作や悪化を招きます。特に、風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症、喫煙は、成人ぜん息を悪化させる要因となります。また、室内のダニやカビがアレルゲンである場合には、掃除などでアレルゲンを極力排除する・マスクを着用するなどアレルゲンから身を守る必要があります。

 NSAIDs過敏症に一度陥ってしまうと、原則的に一生過敏症は続くと言われています。ロキソニンなどは炎症を抑える効果もあり、比較的よく出されがちな薬ですが、ぜん息がベースにある人は、症状が治まっていてもNSAIDsを処方されないよう気を付けておく必要があります。

 これから連休に入り、ぜん息がある人は症状が出ないように続けておく必要がある薬を忘れがちになる人も出るかもしれません。薬を使い忘れて免疫力が低下すると、あらゆるウイルスから身を守り切れなくなる恐れもあります。旅行中など、出先で調子を崩してしまった場合にかかりつけ医以外を受診する際は、必ず、普段どの薬を処方されているか、持病に何があるか、使っていけない薬があればそれがどの薬であるのかをしっかり伝えることが重要です。

<参考>
NSAIDs解熱鎮痛薬不耐症・過敏症:独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター/NSAIDsを理解するために
独立行政法人環境再生保全機構 成人喘息の基礎知識|さまざまなぜん息|アスピリンぜん息(解熱鎮痛薬ぜん息)
難病情報センター | 好酸球性副鼻腔炎(指定難病306)
小児アレルギー科医の備忘録

<記事化協力>
Yuriさん(@yuri_lovesiames)

(梓川みいな/正看護師)