2019年4月22日(アメリカ西部時間)、トヨタはアメリカのトラックメーカー、ケンワースと共同開発した水素燃料電池のトラックをアメリカ、ロサンゼルスで公開しました。カリフォルニア州大気資源局、並びにロサンゼルス港と提携し、将来の「ゼロエミッション物流」実現に向けての実証実験を始めます。

 ロサンゼルスで公開されたのは、ケンワースの主力ヘビーデューティートラック(トレーラー)であるT680に、トヨタの燃料電池車「MIRAI(ミライ)」で培われた水素燃料電池駆動ユニットを組み合わせたもの。1回の航続距離は300マイル(約480km)以上。これは同種のトラックが走行する1日当たりの平均距離と同等だといいます。通常のT680には13リットル(405~510馬力)か11リットル(355~430馬力)のディーゼルエンジンが組み合わされているので、この燃料電池駆動ユニットも同等の出力を持つものと思われます。

 ロサンゼルス港はカリフォルニア州大気資源局との間で「ゼロ、そしてゼロに近いエミッションの貨物施設(Zero and Near-Zero Emissions Freight Facilities=ZANZEFF)」という総予算4100万米ドル(約45億9000万円)というプロジェクトを始めることとなっており、トヨタとケンワースが作り上げたこの燃料電池トラックが、重要な役割を果たすこととなります。トヨタとケンワースは、このトラックを10台提供します。

 トヨタ現地法人のボブ・カーター上級副社長は「トヨタは燃料電池による電動化で、未来に対してコミットしていきます。この方式はなによりクリーンで、幅広い距離でのゼロエミッション化の要望にお応えできるプラットフォームだからです」と、トヨタの燃料電池車戦略について語り、「今回のZANZEFFと、“岸壁からお店まで”のプロジェクトへの参画は、ヘビーデューティトラックにおける燃料電池駆動技術の商用化へとつながるものと考えています」と、トヨタにとっても、このプロジェクトが燃料電池車の可能性を広げる取り組みであるとしています。

 トヨタと燃料電池トラックを作り上げたケンワースのゼネラルマネージャー、マイク・ドズィアー氏は「このプロジェクトにおけるロサンゼルス港、トヨタ、シェル、そして私たちケンワースの相乗効果は、(T680などの)クラス8トラックにおける燃料電池駆動車開発の鍵となります。このプログラムにおける10台のT680開発は、現状のディーゼルと同等、もしくはそれ以上の性能を目指しています。そのうえ、副産物は水しか出しません」と語り、大型トラックにおける燃料電池車の未来を展望しています。

 今回発表された燃料電池駆動のトヨタ・ケンワースT680は、カリフォルニア州ロングビーチのコンベンションセンターで4月23日~26日(現地時間)に開催される「アドバンスド・クリーン・トランスポーテーション(ACT)エキスポ」のケンワースブースで一般公開されます。

Image:TOYOTAKenworth

(咲村珠樹)