頭痛や腰痛、生理痛など、生きていると何かと痛みを感じる事があります。しかし、痛み止めをあまり飲まないように、と痛みを我慢すると、時にはさらに悪化して大変なことに……。そんな体験談がネット上で話題になりました。

 「頭痛や生理痛でお悩みの皆さん、 『鎮痛剤のちょっとした工夫』 で薬を使う機会を減らせるかもしれません。 痛みのキャパオーバーで搬送された際に産婦人科の先生から聞いたお話です」と、その体験談をツイッターに投稿しているのは、漫画家のカミヲシュウジさん。

 多くの女性が悩まされる、月経前症候群(PMS)は、精神的にも身体的にも様々な不快な症状を呈するものですが、よく起こりがちなのは、イライラ感や気分不快感、頭痛、腹痛など。カミヲさんもそのような症状に悩まされているひとり。その症状がひどく出たときに体験した出来事を、『鎮痛剤のウマい使い方』というタイトルでエッセイ漫画にまとめています。

 PMSの症状が出ているある朝、カミヲさんは軽い頭痛と生理痛とともに目が覚めました。いつものこと、と、治まるまでじっとしていたカミヲさんでした。しかし……

 痛みが軽いうちなので、と我慢している間に、痛みはどんどん悪化。子宮の方ではなくその奥の腸の方にまで痛みが及んでいるような感覚が。あまりの痛みに異変を感じたカミヲさん。

 顔が冷たく感じられ、冷や汗が止まらなくなってしまいました。あまりの状態に救急車を呼び、搬送された先で産婦人科医の診察を受けたカミヲさんが、医師から告げられたこの症状の原因は……「痛み」によるもの。

 医師の説明によると、痛みが伝わる神経の道は、長い時間に同じ個所の痛みを受け続けていると、太く強化されてしまうとのこと。なので、痛みの道を強化させないためには、痛みが出始めたら鎮痛剤を飲む、または痛みが出そうな状態を察知した時点で鎮痛剤を飲む方が好ましい、ということ。カミヲさんは、痛みの道を強化させる前に鎮痛剤を使うようになってからは、PMSによる痛みの増強もなくなり、鎮痛剤を使う頻度も減ったということです。

■ 痛みとはナニモノなのか

 そもそも、痛みというのはどうして出るものなのか。痛みというのは、体内外からの強い刺激に対し、防御反応として感じるものです。痛みを感じるということは、その痛む部分に何らかの手当てが必要というシグナルなのですが、時に、そのシグナルが強いせいで、心身ともに疲弊してしまいます。

 PMSの場合、女性ホルモンの急激な変化に毎月さらされることで、毎月ホルモンバランスが乱れて様々な症状が出ます。PMSを根本的に穏やかにするには、低用量ピルの継続内服などの治療法があります。また、ひどい生理痛には子宮筋腫や卵巣嚢腫といった病変が隠れている場合もあります。このため、1時間おきにナプキンを変えないといけないくらい経血が多かったり、冷や汗が出るほどの強い痛みがある場合は、産婦人科でまず診察を受けることが大事です。

 そういった病変がなくても、痛みが強く出る場合もあります。また、片頭痛の場合でも同じく我慢しているうちに、吐き気を伴うような強い痛みに変化していく事も少なくありません。この場合に必要となるのが、鎮痛剤なのです。

 痛みが出るメカニズムは、生理痛も頭痛も同じような形で、何らかの刺激で痛みを感じさせる物質が体内で作られ、その物質が神経を刺激し、その部分の血管を収縮させたり、過剰に拡張されたりすることにより起こります。この刺激となるものが、女性ホルモンの急激な変動や、アルコール、ストレス、チョコレートや赤ワインなどに含まれるポリフェノール、気圧の変動や環境的な因子など、多岐にわたります。

 その刺激を根本から避けることが難しいため、鎮痛剤を飲んで痛みがひどくなる前に対処するのが最も効果的、といえるのです。では、鎮痛剤はどのタイミングで、どれくらいの頻度で飲むのがよいでしょう。

■ 効果的な鎮痛剤の使い方

 片頭痛の場合、急激に痛みがひどくなる前触れみたいなサインを体が発していることがあります。それは、軽い頭痛だったり、目の前がチカチカするように感じられたり、ひとによっては、ギザギサの閃光が拡大して前が見えなくなる前兆(閃輝暗点)が起こったり、と、その前兆は様々です。また、気圧の急激な変化を感じると体調を崩しやすい「気象病」と総称されているものも多くみられます。PMSだと、軽い頭痛や頭重感、急激な気持ちの変化や腰痛などといった症状が出やすくなります。

 こうした前兆があった場合、念のため程度でも鎮痛剤を飲んでおくのは、その後の痛みの悪化予防につながります。しかし、あまりにもその頻度が多いと、鎮痛剤の副作用による胃痛や、「薬物乱用性頭痛」といった、薬により引き起こされる頭痛のスパイラルにもつながります。

 この負のスパイラルを避けるために、目安としては月10回以上頭痛薬のお世話になる人は、医師のもとで薬の選択や服用方法の指導を受けることが推奨されています。PMSの場合は数日の間、鎮痛剤を6時間以上開けて服用する程度で大丈夫かと思いますが、片頭痛の場合は、ホルモン変化以外の要因で痛みが起こることが多いので、神経内科や頭痛外来がある病医院で相談することが望ましいです。頭痛が起きたときに、起こった時間、原因となりそうな心当たり、どのくらい頭痛が続いたか、鎮痛剤をいつ使ったなどの「頭痛日誌」を付けると、自分で痛みが起こりやすい時や鎮痛剤を飲むタイミングがつかめやすくなります。

 カミヲさんの場合、「市販の鎮痛剤がきかないくらいお辛い方は、病院で座薬の処方もオススメします。 私は搬送されたとき、 『ボルタレンサポ』50mgを処方され、本当に即効きました。(その後25mgを処方され、もしもの為に保管もしてます) 痛みの道が太くなりすぎているなら、初めは強くアプローチするのが良いです」と続くツイートで医師から処方された痛み止めを紹介しています。ボルタレン座薬は、手術後の強い痛みにも使う強い薬で、腸の粘膜から直接吸収されるため、内服よりも効き目が早いという利点があります。しかし、この薬はかなり強力なため、どうしても痛みが強くてどうしようもない時の緊急薬と思っておいた方がよいです。筆者が整形外科病棟で看護師として働いていた時も、術後の患者さんの痛み止め指示としてよく出されていましたが、血圧が低めの人には推奨できないとしていました。

 ともあれ、日常的に痛みが出やすいという人は、まずは受診を。PMSの場合は、内服に条件が付きますが低用量ピルがよく効きますし、片頭痛の場合は市販の鎮痛剤よりもより効果の高い薬を処方してもらうことができます。また、全身の調子が乱れている場合は漢方薬を使うという手段もありますが、漢方薬は東洋医学の診察ができる漢方専門医や、漢方を専門に取り扱っている薬剤師によく相談してから取り入れましょう。漢方は「証」という東洋医学的に見立てた体質によって処方される生薬の割合や内容が異なってきます。

 痛みへのアプローチとしては、まず市販の鎮痛剤をタイミングよく飲む、続く場合は医師の診察を受ける、といった手順で大丈夫です。痛みは体からの何らかのシグナル。我慢をしないでその原因を突き止め、上手に対処していきましょう。

<参考>
社団法人 日本脳神経外科学会 やさしい頭痛のはなし

<記事化協力>
カミヲシュウジさん(@face_bokoboko)

(梓川みいな/正看護師)