乳幼児を育てていると、健診や予防接種、子育てセンターなどへのお出かけなど、様々な外出の機会があります。そんな時、交通機関を使うことも多いのですが、「混雑していない時間を」と行動しても、たまたま乗った電車が混雑していた……なんてことも。さらにはそんな状況の中で子どもがぐずりはじめると、親としては周りに対して萎縮したり、申し訳なかったり……。そんな状態を救ったある女性の話がネット上で絶賛されています。

 ツイッターで育児日記を漫画にして投稿している、ネットユーザーのまみさんが、「我が母ながら凄いなと思った話」と、お母さんから聞いた様子を漫画にしています。

 お母さんが電車に乗っていた時、座席に座っていた母親の膝の上で、1歳くらいの男の子が泣き出したそうです。車内はやや混雑しており、周りの雰囲気も泣き声うるさいなぁって言うより、何も手助けできないもどかしさとか罪悪感が漂っていたそう。そんな中、どうしても放っておけないと思ったお母さんは、人混みをかき分け、その母親の前へ。「あらあら、眠いのかなぁ」と、にっこりと。

 子どもの様子を見て、頬が赤くなっている事に気が付いたお母さん。車内の人混みで着ているものが暑く感じているのかもと思い、母親に「上着を脱がせてもいいかも」とアドバイス。脱がせるのを手伝いつつ、「眠いんだろうねぇ……」と、子どもの背中を優しくトントンしてあげたのでした。

 すると、徐々に落ち着き泣き止んだ子どもは、そのままトントンされながら眠りに。「すみませんでした」とすまなさそうな表情の母親に、「うちも孫がいるからよく分かるの。どうにもならない時もあるわよね」とお母さん。「じゃあ私は降りるから。大変だろうけどがんばってね」と励ましの言葉をかけて降りようと思ったら……

 「ありがとうございます……」とその母親は涙をぽろぽろ。「お母さん、大丈夫。大丈夫だからね」そう声を掛けてお母さんはその場を離れたそうです。

 お母さんの行動の背景にあったのは、「幼子を持つ娘(まみさん)や歳をとった母(祖母)がいつどこで誰に助けて貰ってるか分からないから」。だから、お節介かもしれないけど、「若いお母さんやお年寄りには特に、私は私のできることをしてあげたい」って思うのだそう。

 まみさん自身も、同じくらいの子を持つ身。「でも子の母親本人はそれがどんな視線であっても怖いし慌てるしパニックになるし(経験談)、収拾つけられる保証もないのに他人が声掛けるのも本当勇気がいることだし(経験談)」と、自身の経験を振り返って、やはり自分が同じ立場に置かれたらなかなか同じように行動は起こせない、と振り返っています。そして、やはり同じ様に誰かに助けてもらっている経験もあるので、まみさん自身も誰かの力になりたい、と思うのだそうです。

 この話はツイッター上で5万回近くリツイートされ、大きな話題になりました。読んだ人がみな思わず涙し、まだまだこの日本でも子育てできそうな気がした、という声も。確かに、今の日本は子育て世代に厳しい場面も多くあります。ベビーカーを使わざるを得ない状態でバスに乗っても、畳めと言われたり、ぐずる子をあやしていてもどうにもならずに、うるさいと睨み付けられたり。

 マイナスの言動はプラスの言動よりも問題として取り上げられやすく、どうしても子育て環境に対する否定的な言葉が目につきやすくなります。さらには糾弾されることが多すぎて、交通機関を使うことすらためらいを覚える母親がとても多いのです。

 一度でも子どもを連れて嫌な目に遭うと、外に出る事が辛くなります。そんな目に遭うくらいなら、と、地域の子育て交流センターに行くことすら辛くなってしまいます。しかし、このお母さんのように、お節介であったとしても「誰かを思いやる気持ち」が周りの人たちの心の中に少しでもあれば、世界も少し変わったものになるかもしれません。

<記事化協力>
まみさん(@aimika_mama)

(梓川みいな)