乳幼児期の母にとって、唯一の救いの時間帯と言っても過言ではなかろう、NHKのEテレ子ども番組枠。なかでも、「おかあさんといっしょ」は長寿番組にして幼児の心をいつの時代もつかみ、そして母の安らぎの時間も与えてくれています。自分の子ども時代に見てきた番組が、出演者が代替わりしつつも、いつの間にか自分の子が見ている番組になったと気が付いた時、何だか遠い道のりを歩いてきた気分にもなったものです。

 そんな、「おかあさんといっしょ」で、2005年から14年間、「たいそうのおにいさん」を務めてきた、小林よしひささん(通称:よしお兄さん)が、遂に今年の3月で番組を卒業。よしお兄さんをみて育った14年分のファンたちから卒業をさみしがる声がネットには多数あがっています。

 筆者が長女を生んだのは、2004年の8月の事。「おかあさんといっしょ」を子どもと見始めたのはちょうどよしお兄さんが新人のたいそうのおにいさんなってすぐの事でした。「おかあさんといっしょ」の前の枠で放送されている「いないいないばあっ!」と「おかあさんといっしょ」は、乳幼児の心をしっかりつかんで離さない、まさに母親にとっての救いの神のような存在。最初こそ若干のぎこちなさもあったよしお兄さんでしたが、当時の歌のお兄さんとお姉さんであった、今井ゆうぞうさんとはいだしょうこさんと共演しているうちに、子どもたちの笑顔を鷲掴みにする存在に。

 2006年に生まれた次女も、よしお兄さんの事は大好きで、長女と一緒にぱわわっぷ体操を一緒によくやっていたものです。時々放送内でぐずる子どもを抱っこしているよしお兄さんをみて「いいなぁ……。」とぼそりとつぶやいた事も。えぇ、母も正直「いいなぁ……。」なんて思ってしまいましたよ。スタジオに入れる子どもたちが羨ましくて、何度も往復はがきを買っては応募したりもしました。結局、その夢もむなしく娘たちは成長していき、いつしか番組からも遠ざかってしまいましたが……。

 娘たちにそんな当時の事を聞いてみるも、「もう覚えてない」とそっけない返事。思春期バリバリ突入中な娘たちにとっては、そんな思い出話をするのはどうやら照れ臭いみたいです。が、母は覚えています。「おかあさんといっしょ ファミリーコンサート」の全国ツアーを見にコンサートホールに行った時、ゆうぞうお兄さんとしょうこお姉さんの歌声に喜び、ぱわわっぷ体操の時には張り切って客席で一緒に体を動かしていた事を。もうそんなおチビな娘たちの面影もかなり消えてきて、大人びてきても、やっぱりおチビ時代を懐かしんで、親子で番組を視ていた頃を思い出してしまうのです。

 歌のお兄さんとお姉さんもゆうぞうお兄さんからだいすけお兄さん、そしてゆういちろうお兄さんに、しょうこお姉さんからたくみお姉さん、あつこお姉さんとバトンタッチしてきた間にも、よしお兄さんはいつしかおかあさんといっしょの中でもリーダー的存在としていつでも子どもたちの中にいました。14年間という、歴代最長の体操のお兄さんを務めてきたよしお兄さんに、心からありがとう。

(梓川みいな)