2019年1月のデトロイト・モーターショウでデビューした、トヨタの新型スープラ。その第1号車が1月19日(アメリカ山岳部時間)にアリゾナ州スコッツデールで開催されたビンテージカーのオークション「バレット・ジャクソン」に出品され、210万ドル(約2億3000万円)で落札されました。

 北米仕様のスープラは、最初の1500台が「2020トヨタGRスープラ・ローンチエディション」という限定版として5万5250ドル(約600万円)で販売されますが、この第1号車はエンジンカバーに豊田章男CEOの直筆サインが入った「グローバル#1」という特別版。収益は全額、アメリカ心臓協会と9.11以後の任務中に死亡・負傷した軍人とその家族を支えるボブ・ウッドラフ財団に寄付されます。

 アリゾナ州スコッツデールで毎年開催される、世界最大級のコレクター向けビンテージカーのオークション、それがバレット・ジャクソンです。この2019年のオークションで、出品番号3010として出品されたトヨタGRスープラ第1号車。ボディカラーはこの車のみのマットグレイで、真っ赤なドアミラーがアクセント。内装はブラック/レッドというスパルタンなもの。エンジンカバーにはトヨタの豊田章男CEOによる直筆サインが入れられています。

 この特別なスープラの収益が寄付されるアメリカ心臓協会(AHA)は、アメリカにある心血管障害、脳卒中の研究のほか、心肺蘇生教育に関する世界的な情報発信団体です。心肺蘇生に関しては「国際ガイドライン」の通称で知られる、標準的な心肺蘇生法を1974年に発表。それに関する教育プログラムも策定し、世界に向けて発信しています。

 そしてボブ・ウッドラフ財団は、アメリカABCテレビのジャーナリストであるボブ・ウッドラフ氏が設立した財団です。ウッドラフ氏は、イラクでアメリカ陸軍第4歩兵師団に同行して取材中の2006年1月29日、バグダッド近郊の路上で簡易爆発装置(IED)の爆発で頭や肩に重傷を負い、脳損傷もしていたために生死の境をさまよいました。この際、アメリカ軍が適切な処置を行い、その日のうちにドイツにあるアメリカ陸軍の病院へ搬送。容体が落ち着くのを待ってアメリカ本国のベセスダ海軍病院へ移り、療養生活を送りました。

 ウッドラフ氏は翌2007年2月にテレビ番組へ復帰。この時の経験から、海外派遣されている軍人たちがどのような危険にさらされているのか、そして負傷した際に本人や家族への手助けができないか、という考えから、この時の経験を綴った本の印税をもとに、ボブ・ウッドラフ財団を設立したのです。財団は身体的な負傷だけでなく、心的外傷を負った兵士やその家族へのサポートも行なっており、この活動を通じてウッドラフ氏は2014年に軍から感謝状も贈呈されています。

 ところでこの特別なスープラの落札者には、車だけでなく、特製のレーシングスーツを作ってもらってのサーキット走行体験や、バージニア州リッチモンドのリッチモンド・レースウェイで開催されるNASCAR「トヨタ・オーナーズ400」で、ペースカーを運転し、2回のデイトナ500優勝歴を持つ現役NASCARレーサー、マイケル・ウォルトリップ選手とのホットラップ(真剣勝負)を楽しむ権利も授与されたそうです。

Image:TOYOTA Motor North America

(咲村珠樹)