みなさんは英単語を覚える時に、どのように学習しますか? ほとんどの人が、ノートに何回もスペルを書いて覚えようとするのではないでしょうか。筆者もそうだったのですが、何回スペルを書いても、頭の中を通り過ぎるだけで、記憶として定着しづらいというのが悩みでした。そんな、ノートに何回も書いて覚える面白くもなんともない学習から解放されるかもしれない? そんなアプリがTwitterで話題を呼んでいます。

 英単語をゲーム感覚で遊びながら学習できるという知育アプリ「SPELL MASTER(スペルマスター)」。魔法陣の中に文字を書くと、アイテムやキャラクターが召喚されるという、現実にはあり得ないシーン。このようなファンタジーの世界をバーチャル体験しながら英単語を学べるアプリとか。

 まず専用の魔法陣シートをダウンロードし、太いペンで英単語を記入。アプリをスマートフォンにインストールした後、魔法陣を読み込みます。書いたスペルがあっていれば魔法陣が光り、もやもやとしたどす黒い煙が出現。おー、ついに来たか!と思わせる演出にもワクワク。そして魔法陣の中から、ぽわんっ!とそのものが3Dモデルで召喚されるというもの。夢にまで見た魔法使い気分が味わえ、尚且つ英単語が覚えられるという一石二鳥のアプリ!


 こちらを制作したのは、「デジタルとアナログのいいとこどり」をテーマに、大人、子供にとらわれず楽しめるモノづくりをしている「KATAKOTO(カタコト)」さん。元々、出身大学が一緒で、在学時も講義の課題を一緒に制作していたというWATANABEさんとMATSUIさんからなるユニットとか。その時の経験がきっかけで、ものづくりの趣向が合い、社会人になった後も継続して一緒にものづくりを進めているそうです。そんなものづくりを楽しみながら制作されているカタコトのデザイナーMATSUIさんにお話を伺いました。

――スペルマスターを考案されたきっかけを教えて下さい

元々、二人とも「英語学習」というのが苦手であり、初めて英語を聞いていた時「呪文」ように聞こえた、という話をしていました。そんな時、想像したイメージをそのまま具現化し、楽しさを加えたものを作れば英語学習が楽しくなるのでは?と考えたことがきっかけです。そこからは、いかに子供が想像する「かっこいい呪文」「かっこいい魔法」というのを意識して、開発を進めていきました。

――こちらのアプリは、現在は発売準備中ということですが

とくに商品化の予定はないので、正式にリリースの予定はありませんでしたが、反響をいただいたこともあり、ここから先1~2か月程度で文字認識などの精度を高め来年にはリリースできればと考えています。現在、アプリは無料のものを想定しております。

――アプリで読み込むとその書いたものが飛び出して表現されるという仕組みは、どのような技術が使われているのですか?

技術としては大きく3つほど使用しています。

1:文字認識 (手で書いた英単語の読み取り)
Google Cloud Vision APIというものを使用し、書いた手書き文字の認識を行っています。

2:3Dモデルの動的な検索 (認識した英単語の3Dモデルを検索)
「Google poly」という3Dモデルのプラットフォームから利用許可が明記されているものを動的に検索をして、リアルタイムにダウンロードをしています。

3:AR技術 (3Dモデルを魔法陣から召喚されたように表現)
最近だとPokémon GOなどにも使われているAR技術を用いて、あたかも現実の世界に3Dオブジェクトが召喚されたように表現しています。

――因みに、日本語で間違えて書いて読み込んだ場合は、どのように表示されますか?

現在は英語のみの対応となっていますので、召喚が失敗してしまうようになっています (召喚失敗の表示が出ます)
非対応の言語、スペルミスなどはすべて「召喚失敗」という設定にしています。今後、多言語対応を見据えて、日本語の対応も視野にいれられたらと思っています。体験者の方からの要望でも多言語対応はいくつか、いただいておりますので、今後、対応を検討しています。

――召喚させたもの同士を戦わせる機能はあるのでしょうか?

開発当初は召喚以外の機能は想定していなかったのですが、何回か展示させていただいた体験者の方から、そのような機能をつけられないか、とお話をいただいたりしましたので、対戦機能も含め、色々発展させた機能の検討を進めています。

――考案してから、アプリになるまで制作期間はどのぐらいかかりましたか?

アイデアを出し、実際の開発含め1か月程度です。

――周りの方々の反応などあれば教えて下さい。

当初は着想のきっかけにもある通り、子供の英単語学習をコンセプトとして、お子さんに楽しんでいただくことを想定していました。ただ、いくつか展示をさせていただき、体験していただく中で、むしろ大人の方の反響の方が大きかったです。大人の方だと「あれは出るんだろうか?」と次々と試してみたくなるようで、ある意味で大喜利のように楽しんでいただける、というのは、予想していませんでした。結果として大人子供関係なく楽しめるプロダクトであることに気づくことができました。

――今後作ってみたいものはありますか?

今回のスペルマスターのように、色々な技術を掛け合わせつつも、体験としてはアナログの温かみや楽しさを感じられるような、「デジタルとアナログのいいとこどり」を体現するプロダクトを作っていきたいです。

<取材協力>
KATAKOTO(カタコト)(Twitter:@katakoto_std / HP:katakoto.tokyo

(黒田芽以)