航空自衛隊のブルーインパルスをはじめ、各国の空軍にはそれぞれフライトディスプレイチーム(アクロバットチーム)を持っています。

 アメリカ(海軍のブルーエンジェルスと空軍のサンダーバーズ)やスイス(パトルイユ・スイス)など、一部の例外を除いては練習機を使用しているのですが、その練習機の世代交代が進みつつあります。オーストラリア空軍でも、これまでのPC-9/AからPC-21に更新されることになり、それに伴って空軍のアクロバットチーム「ルーレッツ」の使用機もPC-21に変更。合わせて機体の塗装デザインも刷新され、2018年10月17日(現地時間)に公開されました。

 オーストラリア空軍のフライトディスプレイチーム「ルーレッツ」は、ビクトリア州のイーストセール空軍基地にある中央航空学校の教官パイロットによる6機編成のチーム。

 1970年にオーストラリア空軍50周年を記念して結成され、同年12月のポイントクックでのエアショウで初めての展示飛行を行いました。結成当初はジェット練習機のアエルマッキMB-326を使用していましたが、空軍練習機の世代交代にともなって1989年に使用機をターボプロップ(プロペラ)機のピラタスPC-9/Aに変更して現在に至っています。

 展示飛行の構成は6機での編隊飛行のほか、1~4番機の「ダイヤモンド」と5番機と6番機の「シンクロペア」によるソロの演技を組み合わせたもの。ブルーインパルスに似た形式といえます。プロペラ機のため演技中の速度は最高で250ノット(時速460km)。しかし演技の最低高度はブルーインパルスの3分の1ほどの低さとなる250フィート(80m)なので、迫力ある演技が楽しめます。



 オーストラリア空軍では導入から30年経過したPC-9/Aの老朽化と、F-35導入に伴って計器類などアビオニクス関連の高度化・コンピュータ化が進むため、PC-9/Aの後継機として同じスイスのピラタスPC-21を採用。2017年から納入が始まり、2019年初めには全49機が揃う予定です。PC-21はコクピット計器が3つの大型タッチパネル式液晶ディスプレイに集約されるほか、ヘッドアップディスプレイも備えており、スイス空軍とオーストラリア空軍の主力戦闘機であるF/A-18と共通の使い勝手を実現しています。また、エンジン出力も4割ほど増加し、プロペラも4翅から5翅に変更されて非常にパワフルなものとなりました。

PC-21(手前)とPC-9(奥)

PC-21(手前)とPC-9(奥)

 これに伴い、ルーレッツの使用機もPC-21に変更されることになりました。あわせて、機体の塗装デザインも変更されています。これまでのPC-9/Aは赤地に白のストライプが入った、イギリス空軍のレッドアローズに似た感じのデザインでした。これに対しPC-21では、同じくオーストラリア国旗に由来する赤・白・紺の3色を使うものの、白と紺の使用比率が逆転。赤地に紺の三角パターンを大胆にあしらい、白は縁取り程度に変わりました。機体上面の赤がメインとなった配色に対し、機体下面の配色は紺がメインとなり、遠くから見ても機体の裏表が判別できるようになっています。また、垂直尾翼の「R」のサイズは少し小さいものに。

編隊を組んで飛ぶPC-21(先頭)とPC-9

編隊を組んで飛ぶPC-21(先頭)とPC-9


PC-21(手前)とPC-9の垂直尾翼

PC-21(手前)とPC-9の垂直尾翼

 2018年からルーレッツの編隊長を務めるタフリー少佐は、2016年にオーストラリア空軍で最初にPC-21への機種転換訓練を修了した人物。機種変更後初のシーズンを迎えるルーレッツを率いるにふさわしい人物といえるでしょう。

編隊長のタフリー少佐とチェスター退役軍人相

編隊長のタフリー少佐とチェスター退役軍人相

 南半球のオーストラリアでは、これからが本格的なエアショウのシーズン。この新しい6機のPC-21による最初の展示飛行は、2019年2月26日~3月3日に予定されているアヴァロン・エアショウとなる見込みです。

Image:Commonwealth of Australia/Department of Defence

(咲村珠樹)