夜景の写真は、暗い夜空をバックにして、明かりに照らされた建物などがいいムードをかもし出してくれます。TwitterなどSNSでも夜景の写真を投稿しているアカウントは多いですよね。でもそんな素敵な夜景に、意外なものが写っていたら……。そんな写真がTwitterで話題になっています。

 Twitterで東京タワーの夜景を投稿したたかだ・ちん・らーゆ(@chin_tkd)さん。スローシャッターで撮影しているため、車のライトなども光の筋となって流れ、とっても素敵な光景に。……ところが、その中に妙な「流れ」が。


道路をアップにすると……

道路をアップにすると……

 「空車」「空車」「空車」「空車」「空車」「空車」「空車」「空車」……。

「空車」の無限ループ

「空車」の無限ループ

 たかだ・ちん・らーゆさんのツイートによると「東京タワーの夜景を撮っていたのですが、目の前をタクシーが横切ったらしく…」とのこと。ということは、この「空車」の列の上にある青い光跡は、タクシーの屋根についた社名表示灯(俗称:行灯)だったんですね……。

 ところで、なんでこういう写真が撮れたんでしょうか。ヒントはスローシャッターにあります。たかだ・ちん・らーゆさんによると、この時は感度をISO125相当、絞りF10でシャッター速度2秒で撮影したといいます。この2秒の間にタクシーが通り過ぎて「空車」の列を作っていったんですね。

 見た目では判りませんが、LEDは非常に速いサイクルで点滅を繰り返しています。一般家庭のLED電球では、使用している電気の周波数(50Hz/60Hz)の倍となる1秒間に100回/120回。このタクシーの「空車」表示のようなディスプレイも、画面表示を非常に速い頻度(リフレッシュレート)で更新しているため、高速で移動するLEDディスプレイをスローシャッターで撮影すると、コマ送りのような形で文字や画像が写りこむというわけです。

 実はこの問題、列車撮影を楽しむ鉄道ファン、いわゆる「撮り鉄」の間では比較的早くから問題になっていました。それは列車の正面にある種別・行先表示板(いわゆる「前サボ」)が車両整備の効率化のためにLED化された車両が増え、走行する列車を写し止めようと高速シャッターで撮影すると、その表示が消えていたり、一部に黒い筋が入ってしまうようになったのです。現在では倍数がLED表示板の点滅速度に重ならないようなシャッター速度を選択して回避したりするテクニックが広まりつつありますが、全てオートになるコンパクトデジカメやスマホで撮影すると、列車の表示がおかしい写真が撮れたりします。

 LEDが点滅を繰り返しているということを知ると、最近増えているLED信号機は?と思う方もいると思います。もちろんLED信号機も設置場所の電気の周波数により、1秒間に100回ないしは120回点滅しています。つまり、事故や違反の証明に使われることの多くなったドライブレコーダーでも、動画の秒間記録コマ数(fpsという単位で表される)によっては、信号が全部消えている状態のコマが存在するのです。現在はそのような「信号機が消えているコマ」が存在しないよう、記録コマ数が100や120に引っかからないようなもの(27.5fpsなど)や、画面のチラつき(これも光源が点滅していることによって起こる)を抑えて記録するドライブレコーダーが販売されているので、それを選択するといいですね。

 普段はInstagram(ins_ta_kada)でダジャレをイラスト化したものを投稿しているという、たかだ・ちん・らーゆさん。普通なら「失敗写真」として公開しない人もいる中、公開したのは、こういう面白さをシャレのめすキャラクターだったからなのかもしれません。

<記事化協力>
たかだ・ちん・らーゆさん(Twitter:@chin_tkd/Instagram:ins_ta_kada )

(咲村珠樹)