日本固有のお酒、日本酒。その種類はもとより、酒器にも工夫を凝らした様々なものが存在していますが、そんな酒器の中でも近頃ひときわ話題になっているものがあります。その名も「うぐいす徳利」。

 話題になったきっかけは、2009年の「文鳥まつり03」より白文鳥のグッズを作っているというtori*TORIさんがTwitterに投稿した動画。「ずっと欲しかったうぐいす徳利。この可愛さをみんなに見てもらえて良かったなー!」と、念願のうぐいす徳利が手に入り、興奮している様子が伺えます。青い羽の小さなうぐいすが上部にちょこんと乗った六角柱の徳利を横に揺らすと、「ホーホケキョッ」とは上手に鳴きませんが、ヤカンの沸騰した音のような高い音が鳥のさえずりに聞こえます。

 リツイートでは「なんだこれすごい! どういう仕組みになっているのでしょう… まさか口笛で吹いてるとかはないですよね?」「私飲めないけどこの徳利は欲しいと思った。これにお茶入れてぴよぴよぴーする!」と、どういう仕組みでこの鳴き声が聞こえてくるのか興味を持つ人が多いようです。

 そこで、こちらの「うぐいす徳利」を販売している菊水酒造さんに、その構造や歴史について詳しく伺いました。

――「うぐいす徳利」とは昔からある酒器なのでしょうか? 菊水酒造さんのオリジナル商品なのでしょうか?

菊水で販売する「うぐいす徳利」は、既成品(梅染錦・梅木)とオリジナルデザイン(市松模様)があります。うぐいす徳利自体は、明治から昭和にかけて流行したとされる酒器です。庶民には馴染みのなかったお酒が、江戸時代には広く親しまれるようになり、陶磁器製の酒器も作られるようになりました。遊び心がある様々なデザインや形の酒器が誕生し、酒卓が楽しく彩られ、うぐいす徳利もその1つであったと考えられております。

うぐいす徳利 梅染錦

うぐいす徳利 梅木

当社は「菊水日本酒文化研究所」に、酒や食にまつわる資料を3万点ほど収蔵し、これらの資料を紐解きながら日本酒を面白くする「コト」を生み出しています。当研究所には、うぐいす徳利の他、昔の人がいかに酒を楽しんでいたかを教えてくれる酒器を多く収蔵しています。

菊水日本酒文化研究所 展示エリア


収蔵品 うぐいす徳利 非売

――音が鳴る仕組みを教えてください。

うぐいす徳利は水笛の原理を応用した酒器になります。うぐいす徳利の内部構造は縦に二分割(底部で連結)されています。それによってお酒を注ぐ際に水位変化が生じ、複雑な空気の出入りがうぐいす型の笛を鳴らします。

――(動画の盃とは別に)側面に穴があいた盃があり、こちらも鳴くと聞きましたが、どのように飲むと鳴るのですか?

盃の突起穴のところからお酒を飲むと「ピュー」と音が鳴ります。昔懐かしい駄菓子のフエラムネと同じ原理です。

――こちらの陶器は何焼きになるのでしょうか?

美濃焼です。

――「うぐいす徳利」の柄は何種類ありますか?

デザインは全部で3種類ありますが、梅染錦、梅木は既製品で、菊水オリジナルデザインは市松模様です。カタチの異なるうぐいす徳利として、波佐見焼の「片口徳利」がございます。

――うぐいす徳利の形状上、洗いづらそうですがどのように洗うのですか?

水ですすいでお酒を流した後に、さらにお湯を通して洗います。音が鳴る工夫がされた形状ですので、中をしっかり乾かすことが大切です。

――今回話題になったことにより何か反響はありましたか?

オンラインショップ(楽天・Yahoo)ではうぐいす徳利・うぐいす杯のご注文が前の年の5倍となり、反響に驚いております。また後日、菊水酒造Twitter(@kikusui_pr)で発信したツイートでも、大変多くの方からリツイートしていただきました。

 最後に今度の展望を伺ったところ「菊水では「モノ」と「コト」を融合させ新たな提案を創出し、日本酒を面白くすることを目指しています。菊水日本酒文化研究所から生まれる新しいコトづくりにどうぞご期待ください」と意気込みを語ってくださいました。

【うぐいす酒器シリーズ】
・菊水酒造の酒器 うぐいす盃と徳利セット
1セット 4704円(税込・送料別)

・菊水酒造の酒器 うぐいす盃
1個 924円(税込・送料別)

・菊水酒造の酒器 うぐいす徳利
1個 3780円(税込・送料別)

<取材協力>
菊水酒造(菊水日本酒文化研究所「酒器」:https://www.kikusui-sake.com/collections/index.html

<記事化協力>
tori*TORiさん(@toritori_twt)

※訂正:初出時、うぐいす徳利の産地を「岐阜県多治見市」と記しておりましたが、記事掲載後に菊水酒造より窯元は別の市であったと訂正の連絡をいただきました。このため該当箇所は削除し「美濃焼」のみの記載に訂正するとともに、関係者各位ならびに読者の皆様には心よりお詫び申し上げます。(2018年9月21日訂正)

(黒田芽以)