東京・千葉を中心に、先週あたりからじわじわと感染が広がってきている風疹。今まであまり見かけないケースだっただけに医師ですら見落としてしまう、なんて事が実際に起こってしまったようです。

 埼玉県に在住の漫画家・大江しんいちろうさんが、実際に体験した出来事を漫画に描いてツイッターに投稿しています。その中で起こった事とは……。

 熱が出て市販の薬を飲んで休んでいた大江さん。熱が出たその日の夜に上半身にボツボツと赤い発疹が出現したので、夜間診療にかかったのだそうです。が、そこでは「薬のアレルギー」と診断。一晩経って良くならなければ皮膚科へ、という医師の指示を受けて帰宅し、一晩様子を見るも発疹は減るどころかますます増える一方。

 そして翌日、近所の皮膚科へ。そこで診断されたのが、何と「あせも」。しかもこれ以上は分からないので心配なら内科へと言われ……内科へ。内科では食物アレルギーを疑ってアレルギーの検査をするも、特に異常なし。そして内科で言われたのは……「これ以上は分からないので皮膚科で診てもらってください」。また皮膚科にたらい回される大江さん。

 そして、最初に行った皮膚科とは別の皮膚科ではじめて感染症を疑われ、血液検査。ウイルスの検査を行った結果、やっとここで「風疹」である事が判明しました。症状が出てから結果が分かるまでの間にかかった日数は5日。そしていった病院は4件。気の毒過ぎる……。

 大江さんが発症したのは8月13日の夕方。熱が出始めた後に、上半身の発疹から始まりそれが足の先までと全身に広まり、さらに全身の関節痛も出たそうです。

■ 風疹のココが怖い

 風疹の特徴である発熱と発疹、リンパ節の腫れはその症状の重さによって出方が変わってきやすく、この3つが揃って出ない事も多くあります。その為か、診察でも見落とされる事もありがちな感染症。さらに、最近は子供の感染はワクチンのおかげで見られなくなっている一方で大人の感染者が出るなど、一昔以上前の「子供がかかりやすい感染症」のイメージから外れてきています。

 麻疹とは異なり、基本的にかかっても重症化する事はかなりまれなものなのですが、妊娠中に風疹にかかると風疹ウイルス感染が胎児におよび、先天異常を含む様々な症状を呈する「先天性風疹症候群」に。これは先天性心疾患(動脈管開存症が多い)、難聴、白内障、色素性網膜症など子供の一生に関わってくる障害。

 風疹の潜伏期は感染源に接触してから2~3週間で発症し、感染者の咳やくしゃみなどの飛沫を吸い込む事で起こる「飛沫感染」が主な感染ルート。現在乳幼児に定期接種されている「MR(麻疹・風疹混合)ワクチン」は2006年から定期接種に組み込まれましたが、それ以前は1977年8月~1995年3月までは中学生の女子のみが風疹ワクチン定期接種の対象でした。

 ちなみに、1994年に予防接種法が変わり、それまでの学校での集団接種から親が子供を病医院に連れて行って個別で接種するという方法に変わってから、中学生の接種率が激減となってしまったという事実もあります。

 そう、先天低風疹症候群はその当時から知られていて、女子のみワクチンが定期接種となっていたのでこの“ワクチンを接種していない空白の期間”に子供時代を送った現在の成人はウイルスに対して丸裸状態な訳なのです。母子手帳を見てみるとワクチンの接種記録が残っているかと思いますが、大人になってからその時の記録がどこにあるのか分からないという人も多いハズ。

■ 怖い感染症はワクチンで予防!

 ワクチンは接種を受けるとおおよそ2週間くらいで免疫が付きます。ちなみに費用は自費負担となり、1万円あたりが一般的です。風疹自体は生まれてからかかっても滅多に大ごとにはなりませんが、生まれる前にかかったら一生大変な事になります。自分が「移す側」にまわってしまうと、うかつに外出もできなくなります。

 今、東京と千葉で風疹が拡大しています。7月30日~8月5日までの報告数と8月6日~12日の報告数を比べると、東京では4人から16人、千葉では8人から15人と一気に数が増えています。まるでパンデミック初期のような動きにも見えるため、今後さらに報告数が増加していくことも考えられます。

 もし、熱の後に発疹やリンパ節の腫れ、関節痛などが出た時はまず医療機関に電話で連絡を入れてから受診してください。そして、特に妊娠している人は人混みに出ない事、マスクをして防御する事を心掛けてください。「移す側」にも「移される側」にもならないために、予防接種が不明な人はワクチンを接種しましょう。

<引用・参考>
国立感染症研究所 首都圏における風疹急増に関する緊急情報:2018年8月15日現在(2018年8月21日掲載)

<記事化協力>
大江しんいちろうさん(@s_ooe)

(梓川みいな)