道を歩いていたら頭から血を流した人が倒れていた……そんな経験、ありますか? 地域によってはまったく遭遇しなかったり意外と遭遇したり。うっかり遭遇してしまった場合、見過ごすわけにもいかず応急処置をする事になる場合もあります。そんな、応急処置をした人が救急隊から手渡された1枚のカードがネット上で話題になっています。

 「東京駅で頭から血流してる怪我人がいて、たまたま医療バッグ持ってたから対応したら、後から到着した救急隊員の方からこんなカード頂いた。てか、現場に居合わせた通行人の方非番の警察官だった!非番の警察官と我々非番の自衛官が居合わせる現場って何これ」と渡されたカードの画像と共にツイッターに投稿したのは、自衛官のAsaminさん。

 たまたまにしても医療バッグをもった応急処置に長けている非番の自衛官と、非番の警察官が居合わせたというのが人通りの多い東京駅だからなのか、単に偶然だっただけなのか……。いずれにしても発見次第即処置を行えるというのは慣れていないとなかなかできるものではありません。

 このAsaminさんの行動に称賛の声が集まるとともに、カードを渡す側の方の人からも「ご協力ありがとうございました!」という言葉が。そして、「こんな『感謝状+フォロー』あるなんて知らなかった!」「このようなカードがあること教えてくださってありがとうございます」とカードに対する注目も高まっています。

■ 1次救急とバイスタンダーフォローアップ制度

 「バイスタンダー」というのは、直訳してしまうと「傍観者」という身もフタもない言い方なのですが、各自治体の消防署が定義しているのは、「救急の現場に居合わせた人」を指すとしています。先進事例として岡山県の岡山市消防局が平成23年1月よりバイスタンダーフォローアップの取り組みを開始したという報告が出ています。現在は多くの自治体の消防局がこの取り組みや、バイスタンダーとなった時に傷病者から感染症が移ったり、心肺蘇生を行った際に精神的なストレスを受けるなどした時におりる保険「バイスタンダー保険」を採用している消防局も多くなっています。

 「倒れている人に心肺蘇生法を行った」というとすごくカッコよく聞こえますが、いざ実際に助ける側に回ってみると、「あの人あの後無事に生還できたんだろうか」「自分の行った蘇生法は間違っていなかっただろうか」という精神的なストレスが付いて回ります。特に生き死にに直接かかわってしまった時のストレスはかなりのもの。救命処置に慣れていない人にとってはその後が気になったり、大きなケガを見たショックなどそのストレスが大きく、時には医療的な介入も必要となる可能性も出ます。

 また、ケガの処置を行った際、傷病者の血液内に感染性のウイルス(肝炎ウイルスやHIVなど)があった場合、素手で処置を行うなどした場合はそれらの感染症にかかる率も上がってしまいます。血液を介した感染症は厄介なものが多いので、こうした処置にあたるには直接血液に触れないように、使い捨てゴム手袋や、なければビニール袋を手袋代わり手にはめるなどして直接血液に触れないように処置を行えば大丈夫です。Asaminさんの場合、医療バッグの中に使い捨てゴム手袋があったおかげでスムーズに応急処置を行う事ができたという事です。

■ もしバイスタンダーになったら

 目の前で誰かが倒れ、応急処置をした時、救急隊に引き継いだ時点でバイスタンダーになります。この場合、カードを導入している消防局からAsaminさんがもらった様にカードを手渡されます。カードには何か身体的・精神的に困った状態になった時に相談できる窓口を記した電話番号や協力病院などが書かれています。

岡山市消防局のバイスタンダーカード

 人助けと簡単にはいうけど、実際はなかなか勇気がいる事だったりします。そうした勇気がいる事でも果敢に率先して行っていける様、こうした消防局の取り組みも知っておくと安心かもしれませんね。

<参考>
総務省消防庁 紹介 バイスタンダーのこころのケア 紹介(PDF)
他 各自治体消防局

<記事化協力>
Asamin(@Takuma_ohio)さん

(梓川みいな / 正看護師)