2020年の商業化を目指して通信各社が開発をすすめている、新世代移動通信・5G。これまで以上の高速・大容量に加え、低遅延・多端末同時接続という特徴がありますが、このうちの「大容量」がどのような変化をもたらすのか、それを体感できるイベントが2018年7月14日・15日に東京・渋谷で開催されました。

 東京・渋谷のヒカリエで開催されたのは、NTTドコモが2020年の商業化を目指している第5世代移動通信システムを一足先に体験してもらおうというイベント「FUTURE-EXPERIMENT Vol.3」。スポーツやエンターテインメント分野における5Gの可能性を体感してもらう「FUTURE-EXPERIMENT」の第3弾です。今回のテーマは「観戦を、革命せよ。」ということで、新たな形でのスポーツ観戦を体験してもらおうというパブリックビューイングです。

 観戦するスポーツに選ばれたのは、ちょうどロシアで行われていたワールドカップにも関連するフットサル。都内某所にあるフットサルコートで行われるスペシャルゲームを、離れた渋谷で観戦します。5Gの特徴の一つである「大容量」を活用し、今までにない観戦スタイルを体験できると聞いてやってきました。

 会場に入って、まず圧倒されたのが、幅約20mもの3面マルチ4Kスクリーン。それだけでも大迫力ですが、そこに映る青いユニホーム着た10番と21番の選手を見て、さらに驚きました。

 元イタリア代表のファンタジスタ、アレッサンドロ・デル・ピエロ選手(ユベントス他)に、同じく元イタリア代表のレジスタ、アンドレア・ピルロ選手(ACミラン他)じゃないですか。特にピルロ選手は、つい2ヶ月ほど前の5月21日にサン・シーロスタジアムで引退試合を行ったばかり。なぜここに?という豪華な顔ぶれです。

 その他にも、JリーグOBで各年代の日本代表経験者である石川直宏、市川大祐、加地亮、鈴木啓太、福西崇史、前園真聖、森崎浩司の各選手の姿が。これだけで有料イベントができそうなメンバーです。この選手たちが「チームCORONA(コロナ)」と「チームSTELLA(ステラ)」に分かれて対決するという訳です。

 巨大な4Kスクリーンの奥には、アリーナとその両端に大型スクリーンが。こちらにはゴール裏からの映像が映し出されます。アリーナにも映像が映し出されていますが、どのようなものが表示されるかはゲームが始まってのお楽しみとのこと。

 まずは選手たちの調整も兼ねた、プレス向けのデモマッチが短時間行われます。キックオフされると、アリーナにはフットサルコートと背番号付きのユニホームが表示されました。コートの周囲に取り付けられたモーションキャプチャ用カメラで動きをとらえ、リアルタイムに選手とボールの位置を表示しているとのこと。確かに、スクリーンに映った選手の場所と同じです。

 床に映し出された映像だけを見ていると、なんだかゲームをやっているような感じ。コート全体を見られるので、各選手のポジショニングや動きなどが手に取るように判ります。通常のサッカー中継では、カメラがボールの動きを追うためにフィールド全体を見渡すことができず、サッカーで大切な「オフ・ザ・ボール(ボールを持っていない時)」での選手の動きが見られません。これなら実際に競技場で観戦している時と同じように見られるので、パスを受けるためにどのような動きをしてマークを外しているのか、逆にパスコースを潰すために、守備側がどのようなポジショニングをしているのかが一目で判ります。

 そしてゴールが決まれば、床いっぱいに派手な表示。これは実際の競技場では不可能なことですね。

 デモマッチは1-1のドロー。一般の観客が入った時、どのような反応になるか楽しみです。

 一般の観客が入場して行われる本番。実況に八塚浩さん、解説に福田正博さんが登場して、こちらもセリエAの中継を見るような雰囲気です。

 15分ハーフの特別ルールで行われたスペシャルマッチ。幅20mのマルチスクリーンいっぱいにコート全体の映像が映し出され、選手が等身大に近い状態です。まるでその場でプレイしているかのよう。

 そしてアリーナの方では、スタンドから観戦するように、床に映し出された選手の位置どりを見ながら、両側のゴール裏映像を楽しめます。アリーナに降りて、まるでコートの中で見ているかのような角度で観戦する人も。

 ゴールすると、自然と拍手が起こります。本番では両チームともシュート回数が多く、ゴールが量産されました。

 ハーフタイムと試合終了後には、各選手のデータ(スタッツ)も表示されました。デル・ピエロ選手は前半だけで9本のシュートを放ち、1得点。そしてピルロ選手は5本のシュートを放って1得点。特筆されるのは46回のパスを出して42回成功で成功率が91%。これは群を抜く数字で、試合全体では92%に達しました。レジスタと称された稀代のパサーぶりは、フットサルでも変わらないようです。



 また、各選手がどの位置からシュートを放ち、ゴールしたかを床面のコートにマッピングする表示も。これも成功したシュートの具体的な場所が判るので、観戦の助けになりますね。

 結局スペシャルマッチは、8-6でデル・ピエロ、ピルロ選手のチームCORONAが勝利。やはりアズーリ(イタリア代表)を長年牽引した2人の力は偉大だったようです。

 さて、このスペシャルマッチを中継した5Gのシステムは、どのようなものだったのでしょうか。まず幅20mのマルチ4Kスクリーンに投影していた映像は、4台の4Kカメラで撮影した映像をNTTが開発した高臨場感メディア同期技術「Advanced MMT(MPEG Media Transport)」でリアルタイムに同期させ、つなぎ合わせてイベント会場へ転送、それをまたAdvanced MMTで3つのスクリーン用に分割して投影しています。4Kの高精細な映像がそのまま、しかも3つのスクリーンに同時に投影される同期技術もすごいですね。

マルチスクリーン用の4Kカメラ4台(画像提供:NTTドコモ)

 選手やボールの位置や動きは、コートの周囲に設置された12台のモーションキャプチャ用カメラで撮影し、位置情報をリアルタイム処理して、床面スクリーン用のトラッキングカメラ4台の映像と合成。イベント会場の天井に設置されたプロジェクターで床面に投影しています。今回は赤いボールを使っていましたが、これはコートの色である緑の反対色(補色)でコントラストを強め、ボールの動きを捉えやすくしたものだそう。実際は通常の白いボールでも問題なく捕捉できるそうですが、念のため赤いボールを使ったとのこと。

コート周囲に配置された多数のカメラ(画像提供:NTTドコモ)


天井に設置された床面投影用プロジェクター

 これに加え、ゴール裏に設置されたカメラ2台に俯瞰映像用のカメラ1台、そして選手のアップを狙うカメラ3台にハイライト映像を撮影するカメラが4台、計30台のカメラを使って中継していました。複数の4K映像に、選手のデータを合わせると200~250Mbpsのデータが転送されていたのです。かなりのデータ量ですが、5Gは10Gbpsもの容量を持っているので、これでも容量のほんのわずかしか使っていないことになります。5Gは、場所の特性に合わせて3.7GHz、4.5GHz、28GHzと3種類の周波数帯を使用することが想定されていますが、今回使用したのは4.5GHz帯(4.4~4.9GHz)でした。

 例えば、これにVRの情報をプラスすれば、VRゴーグルで選手と一緒にフィールドに立っているような観戦方法もできるかもしれません。また、実際に選手の指導でVRのデータを使い、プレイの再現をして自分の長所や欠点を知ることも可能になるかも。

 5Gはあくまでも通信技術なので、どんなデータを送るかはアイデア次第。今回のイベントで、新たなパブリックビューイングの可能性を予感させてくれました。今回のイベントの様子は「FUTURE-EXPERIMENT」特設サイトで体験可能となっています。

取材協力:株式会社NTTドコモ

(咲村珠樹)