2018年6月25日(現地時間)、ロッキード・マーティンは中東のバーレーンからF-16の最新型、ブロック70を16機分受注したと発表しました。F-16ブロック70の発注は、これが初めてとなります。

 F-16ブロック70は、元々インドに向けて提案されていた最新鋭のバージョン。レーダーシステムが最新のAPG-83AESAレーダーに強化され、デジタル化された操縦制御コンピュータシステムや最新のデータ処理システムを装備しています。コクピットは両足の間に収まるタッチ式のマルチファンクションディスプレイが追加され、暗視機能も持ったヘルメットマウントディスプレイ(JHMCS II)と合わせて、多くの情報をシンプルに処理することができます。

 APG-83はアクティブスキャン式レーダーで、空中・地上・海上合わせて同時に20以上の目標を捕捉して追尾可能。また、先進敵味方識別装置(AIFF)であるAN/APX-126は、最大115海里(207km)離れた相手を識別することが可能で、いわゆる「ファーストルック・ファーストキル(先に発見して撃破する)」能力が向上しています。また、地形に追従して自動で地上衝突を回避する装置(Auto GCAS)もついており、予期せぬGで意識を失ったり、操縦のミスで地上に接近しすぎた場合でも墜落を防いでくれます。F-16における死亡事故の75%が地上に接近しすぎての墜落事故となっており、それを少しでも少なくするための安全装置ですね。

 また、電子戦にもある程度対応しており、レーダー波照射を感知して警告するだけでなく、接近するミサイルに対してチャフやフレアだけでなく、ECM攻撃(ジャミング)を行い、狙いをそらすことも可能。もちろん、F-16の特徴である、多彩な搭載兵装はこれまでと同じように運用できます。ステルス性などはともかくとして、戦術面では第5世代ジェット戦闘機と同等レベルにまで強化された「全部入り」のパッケージと言えるでしょう。

 また、エアフレームも強化されており、従来の耐用飛行時間であった9000時間を大きく上回る1万2000時間を達成。長く使えるだけでなく、メンテナンスコストも従来のF-16より低減されています。

 バーレーン空軍向けの機体は、全機アメリカのサウスカロライナ州にある工場で製造される予定です。お手頃価格の戦闘機としてベストセラーになっているF-16。この最新版のブロック70を採用する国が出てきたことで、予算規模がそれほど大きくない国での次期戦闘機選定の動きも活発化してきそうです。

Image:Lockheed Martin

(咲村珠樹)