インフルエンザもピークに入っている折、帰省や大型イベントなどで人混みの中へ繰り出すという人も多い事と思います。冬の大イベントを無事に乗り切る為にも、インフルエンザを筆頭とした感染症の予防方法を今一度おさらいしましょう。

■飛沫感染と接触感染を何とかする

 風邪やインフルエンザなど風邪の症状を呈する感染症の主な感染経路は、感染者の咳やくしゃみによる唾液の飛沫を吸い込む事で感染発症する『飛沫感染』と、手などに付いた(接触した)ウイルスを口にしてしまい体内へ入れてしまう『接触感染』の2ルートが存在します。まずその2つをなんとかすることが大事です。

■予防の極意其の1 ~手を洗う~

 当たり前すぎるという突っ込みはさておき、手を洗わない状態と手洗いをきちんと確実に行った場合ではどれだけ違うのかを比較した表がありますが、手洗いなしの場合を基準にして見てみると、流水すすぎのみの手洗いにより雑菌の量が約1%にまで減少しています。さらに、石けんを使ってもみ洗いをした後に流水ですすいだ場合、約0.01~0.001%にまで菌は減少しています。

 しかし、アルコール消毒薬やクロルヘキシジンや第四級アンモニウム塩による手洗いでは流水すすぎのみの場合と比較してウイルス感染価の減少傾向はみられないという研究の結果が出ています。(森功次他 感染症学雑誌,80:496-500,2006より)

 この事から言えるのは

「水で物理的にウイルスを洗い流す」

事が第一の極意。

 ただし、いくら水でしっかり流したといっても洗い残しが出てしまえば意味がありません。洗い残しが多いところは、手のひらのしわの間、指の叉、指先の爪の間や隙間、手の甲、手首など。特に外出先でのトイレではノロウイルスを拾ってきてしまう可能性もこの時期特に上がっています。できればハンドソープを用いて2度洗いする事が望ましいといえます。

 また、外での飲食では必ず手を洗ってから。素手でお菓子をつまんだりフライドポテトなどをつまんだり、ドリンクの回し飲みなんかも感染経路の一つですよ。

■予防の極意其の2 ~鼻と喉を乾燥から守る~

 皆さんの中でカラオケでガンガン歌いまくったら次の日声が出なくなって、気が付いたら風邪を引いていたという人、いませんか?筆者、昔そんなことをやらかしていました。

 アレで何で風邪ひくかって言うと、鼻の粘膜やのどの粘膜が乾燥するからなんですよね。特にのどは鼻毛や鼻水によるウイルス防御バリアが弱い上に面積も広く、乾燥しやすい粘膜です。乾燥した粘膜というのはウイルスにとって絶好の増殖場所。インフルエンザの場合、乾燥したままウイルスに晒されていると数分から20分ほどで細胞内への侵入が完了してしまいます。

 ただし、インフルエンザウイルスは湿気に弱く、室温25度で部屋の湿度が30%の場合と60%の場合を比べた結果、60%に保ってある部屋ではウイルスの失活が早いという研究結果もでているので適切な湿度を保つことでインフルエンザを予防できると言えます。(西村秀一他 第63回国立病院総合医学会 2009より)

 これらの事から、

「乾燥させず、潤いを保つ」

事が第二の極意。

 暖房の入った室内では空気が乾燥しやすいので50~60%に湿度を保つよう、加湿器などを用いて調節しましょう。乾燥から身を守るためにはマスクの着用も効果があります。昨今、インフルエンザ予防におけるマスクの有効性について諸説ありますが、吐いた息に含まれる水分は意外に多く、マスクをする事で息から逃げる水分を逃さず鼻やのどに戻す効果が期待できるので、そうした面でマスクの着用は効果的です。また、マスクがなければこまめに水分を摂ったり飴をなめるなどの方法も。

■予防の極意其の3 ~栄養と休養を十分にとる~

 「それができたら苦労しねーよ!!」という声が聞こえてきそうですが、規則正しい生活と正しい食習慣は健康の基本。年末年始の疲れを忘年会や新年会で余計に増幅……なんて人、もしかしたら結構いるのでは?疲れは万病のもと、体の抵抗力が弱くなると風邪もひきやすくなるものです。特に寒さが堪えるこの時期、暖かくして早めの就寝と適度な飲食を心掛ける事で風邪の引きやすさは格段に変わってきますよ。

「早寝早起き正しい食生活」

これが第三の極意。暴飲暴食の多い季節な上に長期休みに入り、色々乱れがちなこの時期だからこそ、より意識しておきたい事です。

 全部当たり前の事と言えばそれまでの事ですが、なかなか意識しても意識したとおりにならないのが人間ってもの。だからこそ、当たり前の事を意識して大事にしていきたいですね。

<引用・参考文献>
Norovirus の代替指標として Feline Calicivirus を用いた手洗いによるウイルス除去効果の検討
加湿による浮遊インフルエンザウイルスの失活効果の患者隔離用簡易チャンバーへの応用
インフルエンザ(総合ページ)|厚生労働省

(梓川みいな / 正看護師)