体に過剰な負担は、時に命にかかわる事に繋がります。そんな実体験がツイッターに投稿され反響を呼んでいます。(梓川みいな / 正看護師)

 妖怪、魔物、都市伝説物をメインに扱う同人サークル「幻怪集落W.S.P」をはじめ、最近ではイベント時のお役立ちアイテム「コインシリンダー」製造までと、なにかと手広く同人活動を行っている、戦魂さん。今ではまったりのんびりと自分のペースで作業しているそうですが、同人活動を続けていく中で若いころにはかなり無理をしたようです。その結果、20代の冬に命を落とす一歩手前まで行ってしまう事態に。

「コミケ原稿頑張ってる諸君、この時期に頑張りすぎると私みたいに心筋梗塞&脳卒中でフルコンボ喰らって毎日注射とお薬飲むようになるで 薬代が毎月20000円行くか行かないか位 落としたくないのも分かるが体調管理も大事やで」

とご自身に使っている薬の画像をツイッターに投稿されています。「若くしてこんなに重症となるなんて」と見た人は衝撃を受けています。

 いったい何故、こんな重症になってしまったのかお話を聞きました。

 戦魂さんが最初に心筋梗塞を起こしたのが24歳の時。その後26歳の時にも再発しています。太い血管からワイヤーを通して血栓除去し、大きな血栓ができないようにステントという針金できた網目状のかごの様なものを血管内に留置し血流を正常に戻す治療を受けた後、血液をサラサラにする薬を飲み続けるという治療を受けていました。

血管内に留置されたというステント

 この時、血栓症でも珍しい症例として治療をしていたそうで、当時の循環器医師からは「全身エコノミー症候群だな君は」と言われたくらい血が固まりやすい体質であり継続して内服治療を続けていく必要があったそうです。

 しかし、病院側とのトラブルがあり一時治療を中断していた時期もあった様子。その時期に仕事4つ掛け持ちと同人関連活動で徹夜続き、栄養ドリンクがぶ飲み、さらにきつめのタバコを1日25本程度喫煙していたという、まさに重病トリガーのフルコンボ状態。

 この為、28歳で脳卒中となり意識不明で救急に緊急搬送、検査の結果脳の静脈に大きな血栓ができていたという事でレントゲンで状態を目視しながらの血栓除去と脳内の大きな静脈(静脈洞)へのステントの留置を受けたそう。診断名は、静脈洞血栓症。この手術で何時間にもわたってX線を照射したため髪の毛がごっそり抜けてしまうという副作用も。頭を洗った時にごそっと抜けた時はかなりビックリされたそうです。

X線照射により抜けた髪の毛

 こうして脳の大きな静脈にできた血栓を取り除いた後に三度目の心臓の血栓除去術。血中にできていると思われる血栓を取り除くためのフィルターも太い血管内に留置となったそうです。物理的に血栓を取り除いた後は薬で血栓を溶かし、新たなものができないように継続して薬を使い、血栓で太い血管が詰まる心配がなくなった所でフィルターの除去が行われました。

 この脳に血栓ができた事で何が起こっていたかというと、動脈から送られてくる血液が脳を循環し本来なら静脈を通って心臓へ帰っていくところ、ほぼ詰まっていて血液が流れていく事ができずに脳にたまり、脳全体がひどくむくんだ状態であったという状態。この状態では脳全体に大ダメージとなり治療が遅いと脳が特に強くダメージを受けたところに関係する機能が失われる事となります。文字や空間を認知する事が困難になったり、感覚をなくしてしまったり運動機能が失われたり、発語ができなくなったり飲みこむ力に影響が出たり……。

 しかし、処置により回復可能になった事とコミケと同人活動の為に必死にリハビリを行った事で戦魂さんは見事に復活。現在も治療を継続しながら同人活動を続けています。

 戦魂さんが入院中、なぜか医師に同人活動している事がバレたという事でしたが病院のスタッフの話ではこの冬の時期、コミケへサークル参加する若い人は原稿終わって安心したときにぶっ倒れた人よく運ばれてくるそうで、若い患者さんは大体コミケ入稿後だとか。
実際、心疾患と脳血管疾患の患者さんは他の季節よりも冬場が格段に多く、特に喫煙や不摂生な食生活でリスクが何倍にも膨れ上がります。老人だけの病気ではないのです。

 入院時には血栓があちこちにできていたせいか血糖値も360というやたら高い数値が出て、握力も下がっていたり計算や文章の処理がおそくなっていたりと様々な脳機能の異常による症状が出ていたものの、現在は継続した治療と無理のない生活をしているおかげでほぼ正常までに回復されているそうです。

 若いからと無理をすると基礎疾患がなくてもぶっ倒れます。若い人の脳梗塞はデスクワークで水分をあまり摂らない、食生活が偏っている、運動不足な人が大半。たまにこの様に血栓ができやすいなど珍しい疾患がベースになっている事もありますが、健康な人は健康だからこそ、そこに過信しないで気を付けて頂きたいと思います。

・禁煙
・運動
・規則正しい生活と十分な睡眠
・偏りのない食事

これを守れば防げることは多くあります。寒い時期、体を動かすのも億劫かもしれませんが、だからこそ、意識しておきたいですね。

<記事化協力>
戦魂さん(@ikusadamasii)