同人誌即売会のお約束として「お支払いは小銭でお願いします」というのがあります。もちろんスペース側もお釣りは準備しているのですが、最初からドン!と万札が来た日には眩暈を起こしそう。今回はそんな憂鬱を吹き飛ばすような素敵なコインシリンダーのご紹介です。

 こちら、実は戦魂さんという方が作られているコインシリンダー500円用なんです。親指をお金の上でスライドすると直ぐに取り出せて、しかも下のものもまたスッと取り出せちゃうすぐれもの。売り手ならスッと取り出し「スタイリッシュおつり」をしても楽しそう。

 夏インテ(SUPER COMIC CITY 関西23)に出る予定の筆者としては是非ゲットしておきたい!見た瞬間思わずぴぴーんと感じました。そしてついでにこの便利なものを作った方にお話を聞いてみたい!ということで戦魂さんにあれこれ聞いてみましたよ。

■サークル歴約20年が考えた「あるといいな」

 製作するきっかけは、元々は500円玉用のコインシリンダーを個人で作ってる知人がいて、その人に「コインシリンダーというものを広めてくれないか」と頼まれたことと、当時はポーチにお金を入れていたそうですが、ジャラジャラ音がなることも気になり作ることにしたそうです。

 また、当時は100円玉用のものは市販されていたけど、500円玉のものがなかったというのも製作するきっかけになったそう。確かに、コインケースは一般にも売られていますが大体は蓋の開閉式。実はこれは落とすと、蓋が開いてバラッと散らばるので机の端に置けないし、ましてや見えるところに置けば盗難の危険があるので、縦型スリムなこれならば、スペース的にも安心なのです。よく考えてるー!

 実は戦魂さん、約20年にわたりサークル活動を行う元々売り手側の人物。サークル活動って、長くやってるうちに「あるといいな」って思うものは増えてきますが、売られるものは「そうじゃないんだ!」「あと少し工夫が欲しい!」というのが続々出てきます。市販だと何か足りないんですよね……。そこをサークル側の立場で突き詰めて開発しているので、同人活動者としてはほんとありがたいの一言。

 最初は広めて欲しいという話から始まっていますが、現在は金型を作り、知人の工場に置かせて貰って、イベントが近くなると工場を借りて量産体制に入っているそうです。 「型っ!?」と驚いていると、「大掛かりなクッキーの型みたいのを想像していただけると」と工場系疎い人間にもすごくわかりやすい説明をいただきました。すごく優しい。紳士です。

 このコインシリンダー、購入者からプラスティックで出来てて扱いやすいというコメントをみていたので、そのあたり素材をお伺いしたところ、「ABS(ミニ四駆とかオーディオ機器に使われてる丈夫なプラスチックみたいなもの)を溶かして型に入れて作ってますよ」と。すごい、本格的すぎる!これプロの仕事としか思えない!と感心してしまうばかり。
試しに4mの高さから500円玉を25枚入れた状態でアスファルトに落としてもちょっとした傷しかつかない位に丈夫になっちゃったそうで、うっかり屋の人には本気で便利なアイテムです。

■製作は試行錯誤の連続

 しかし、戦魂さん、ここに至るまでは本当に思考錯誤の連続だったのです。最初は100均のコインケースを改造し、バネを入れて試作を繰り返しました。やはりバネは決め手だそうで、バネ選びは特に苦労したのだとか。そしてイベント毎にバネと接着剤を変えて出し、買ってくれた人の反応を聞いて作り直して……そんな試行錯誤の末、完成したのが今のコインシリンダーの形態。追及し続ける姿ってほんと素晴らしい。話を聞きながら筆者の脳内ではプロジェクトXの主題歌、中島みゆきさんの「地上の星」が延々流れていました。かぜのなかのすーばるー。

 ちなみにケースがとてもシンプルな色合いなので、腐女子的には推し色のストーンで飾りたい欲求があるんですが、「そういう使い方しても怒りませんか?」と図々しく聞いてみました。すると「改造はどんどんしてください!!」という素敵なお言葉が! また、このコインシリンダーには、革巻き(革ケース)のオプションもあり、今回合同で取り組んでいる『いまじならっく』さんの革巻きをつけると首から下げられるので、即売会で買い物をする時も超便利です!

 売り手にも買い手にも嬉しいコインシリンダー500円玉用は、以前別の記事で紹介した『サークルスターターセット』を扱うhondel(ホンデル)さんで販売されています。 500円玉30枚(15000円分)が入る本体のお値段は2160円。本体+革巻きホルダーセットが2700円で、革巻きホルダー単体が800円。 この夏、出陣予定のある方は、ぜひ備品として検討してみてはいかがでしょうか? ※記載は全て税込みです。

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(天汐香弓 / 画像提供・hondel)