グラフィティやストリート・アートと言えば、まずバンクシーが頭に浮かぶ。
そんな風にすぐ思いつくほど彼の風刺画は誰もが一度は目にしたことがあるものではないでしょうか? そんなバンクシーが12月に発表した新作がスティーブ・ジョブズだと話題になっています。

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バンクシーが描いたスティーブ・ジョブズ

バンクシーは美術館や画廊で自分の新作を発表するのではなく、世界のどこかの壁にステンシルで風刺画を描くというスタイルを主としているアーティストです。そんなゲリラ的な活動ゆえに彼は覆面芸術家であり、ドキュメンタリー映画『イグジット・スルー・ザ・ギフト・ショップ』では全て顔が見えないように撮られていました。

▼参考:
http://www.banksy.co.uk/

■バンクシーって誰?

バンクシー? 誰それ? と思う人でも、例えば彼が絵を描いた壁が約5800万円で落札されたことで話題になっていた「KissingCoppers」ならば見たことがあるという人もいるのでは?

▼参考:
https://www.instagram.com/explore/tags/kissingcoppers/

もしもバンクシーが夜中のうちにやってきて自宅の塀に落書きしていってくれたらそれが5000万円以上、下手をしたら1億円で売れてしまうくらいレアリティが高く人気なことでもたびたび話題になります。

バンクシーが世間一般に知られるようになったのは2005年3月、メトロポリタン美術館を初めとする有名な美術館や博物館に勝手に自分の作品を展示し、他の作品と同じように丁寧なキャプションまでつけていたためにしばらく気づかれなかった、というインスタレーションで話題になったのが皮切りではないでしょうか。

■超憂鬱な気分になれるディズマランドもプロデュース

スタイリッシュに皮肉を効かせた風刺画だけではなく、昨年8月にはイギリスのウェストン・スーパー・メアに登場した訪れた人が漏れなく憂鬱になるようなディストピア的テーマパーク・ディズマランドをプロデュース。5週間で15万人が訪れるという盛況ぶりの後、今回新作が現れたフランスの港町カレーに移転し難民シェルターとなっています。

▼参考:
http://banksy.co.uk/index5.asp

さて、今回はアップル社の創始者でシリア人を父にもつスティーブ・ジョブズを描き「難民の入国を禁止することは第2第3のジョブズの芽を摘むことになる」という痛烈なメッセージを込めて社会批判をしたバンクシー。

ディズマランド含め参加型アートによって観る者を楽しませながら社会風刺するというスタイルは、今回も憂鬱なディズマランドをイギリスからフランスへわざわざ移転し転用して難民シェルターにすること、そしてそこにジョブズの絵を描くこと、さらには彼の絵を他でもないお上に保護させるまでが実に皮肉に満ちていて、これこそがバンクシーのアートの真髄と言えるのではないでしょうか。

(文:大路実歩子)