この数年、急激に人気が高まっている「車中泊」。旅先で旅館やホテルに宿泊せず、車に宿泊するという旅のスタイルです。
新聞などではこの現象を「車中泊ブーム」と紹介されることが最近増えており、さらに専門誌や専用グッズが数多く発売されるなどもしています。

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オートキャンプ場

こうしたブームや震災後の意識の変化もあり、特にキャンピングカーへの注目は高く、日本RV協会が発表した『キャンピングカー白書2014年』によると、業界全体での売上げ金額は2011年・210億、2012年・281億、2013年・309億と順調に伸ばし、国内での総保有台数も2011年・75,600台、2012年・80,500台、2013年・85,200台と同じく右肩上がりで推移。

キャンピングカー白書2014年
キャンピングカー白書2014年

また、キャンピングカーの場合には「自作派」も多く存在し、さらには普通の車を工夫して快適性を高め車中泊旅を楽しむ人も増えているため、車中泊市場の全体はさらに大きいことが予想されます。

一昔前には車中泊というと「貧乏臭い」「くつろげない」など、酷い言われようでしたが、最近では市販の便利グッズも充実し、更に全国各地に道の駅も配置され、以前よりは工夫次第で快適に過ごすことができるようになっています。

では実際はどんな風に過ごしているのか?何が楽しいのか?その様子を少しだけ紹介してみたいと思います。

■出発前から旅が始まっている

普通、旅行にでかけるときは、行き先を決め、ホテルを決め、ホテルや移動の手配をして完了。あとは何をするか胸をときめかせ、ガイドブックを眺めつつ……となるかと思います。
しかし車中泊の場合には、車中泊可能な場所、キャンピングカーが大きい場合には走行ルート、入浴できる場所の調査、さらには行き先の気候に応じた設備の入れ替えなど何気にやることが沢山あります。
勿論、ふらっと行き当たりばったりも楽しいのですが、筆者の場合はあれこれ事前に調べたり、準備をする段階が楽しいので、これらの準備は念入りに行うようにしています。
あ、説明が後になりましたが筆者もキャンピングカーユーザーの一人です。

■宿泊先は道の駅からオートキャンプ場まで様々

「車中泊」での宿泊先は、ふらっと・自由に立ち寄れる道の駅やサービスエリア・パーキングエリア(以下、SA・PA)を利用する人がほとんどです。
道の駅やSA・PAの場合、一部を除き車中泊を許容してくれるところが多く、基本無料で利用できます。
ただ一部ではマナーの悪い人達の登場により、車中泊を禁じているところも出始めており、「車中泊ブーム」が抱える問題でもあります。

道の駅 PA

例えば深夜にエンジンをかけっぱなしにする、深夜に車外で騒ぐ、道の駅の駐車場でバーベキューをする、1か月単位の長期滞在など。
いずれも最近問題が取りざたされるようになり、若干ずつですが減る傾向にはあります。ただ、マナーを知らない車中泊者により、夏場増える傾向にあるのも事実。
以前は道の駅やSA・PA以外に、無料駐車場を利用する人も多く存在しましたが、最近車中泊を禁止するところが特に増えています。
今はまだ「道の駅」や「SA・PA」での車中泊がある程度許容されていますが、マナーの悪い人が増えればこちらも徐々に、「車中泊禁止」を掲げる場所が増えるのは明らか。
どの場所も、「基本は一時休憩をする場所」「公共の場」それは確実に忘れないで過ごして欲しいものです。

さて、道の駅やSA・PA以外には、最近増えているRVパークと呼ばれる車中泊車を迎え入れる駐車施設と、オートキャンプ場が存在しています。

オートキャンプ場

RVパークの場合には、駐車スペース、水場、トイレ、有料のお風呂、電源が用意されています。そしてオートキャンプ場の場合には、シャワー、水場、駐車スペース、テーブル・テントなどが出せるスペース、場所によっては電源も用意されていて、ゆったりくつろいで過ごすことができます。

各地を転々とする人は「道の駅」や「RVパーク」、一か所でゆっくりくつろぎたいという人は「オートキャンプ場」という風に皆さん使い分けて楽しんでいるようです。

オートキャンプ場やRVパークは有料ですが、素泊まりの宿泊施設よりは確実に安くあがります。価格はRVパークで1,000円~2,000円程度、オートキャンプ場で5,000円~10,000円(4人家族の場合)程度。

RVパークは施設数がまだまだ少ないですが、日本RV協会のHPによると将来的には全国各地での展開を目標にしているそうです。またキャンピングカーユーザーを対象にした同協会の2014年調査では、全体の75%が「旅先にRVパークがあれば積極的に利用したい」と回答しているとおり、今後各地での充実が期待されています。

■旅先での食探しが意外と楽しい

「車中泊」で忘れてならないのが「食事問題」。ホテルや旅館のように食事が出るわけではないので、自分達で何とかしなければなりません。
筆者の場合には、宿泊費がかからないかわり、できるだけ現地の食材を調達し、外食の場合には普段より「ちょっとリッチな食事をする」ことを心がけています。

野菜、ハム、ウィンナーなどについては道の駅で現地のものを購入、そして肉や魚類は現地スーパーや地元商店から。
現地スーパーや商店には地元の野菜やお肉などが格安で並んでいることが多く、普段の買い物とはまた違った目線で食材探しが楽しめます。

直営店 道の駅

静岡や千葉なら新鮮な魚介類、群馬や栃木なら新鮮な野菜にハム・ウィンナー。大した料理はしなくても、少し良い食材に、なにより素晴らしい景色をみながら取る食事は格別です。
子供の頃聞いた「景色はご馳走」という言葉はこういう事なのかと、車中泊を始め初めて気づかされました。

買い物例

外食については、できるだけ漁協直営など地元に関連した施設か、個人で経営されているようなお店を利用しています。ネット情報も調べますが、現地でぶらぶら歩いてふらっと立ち寄った方が意外に良い店が見つかったりします。またそういう店に限ってネットに情報がなかったりも?
他にも、場所によっては、テイクアウトを利用することもあります。
例えば、千葉県・鋸南町にある「漁協直営食堂ばんや」では、生もの以外基本持ち帰ることができるので、煮魚や焼き魚を車にもちかえり、ゆっくり食べる。こういう楽しみ方もできるわけです。

ちなみに車中泊者の間では、車の中でご飯が炊けるDC炊飯器『タケルくん』(12ボルト向けが4,980円、24ボルト向けが5,480円)が人気になっています。シガーソケットにつなぐだけで約25分でご飯が炊けちゃうすぐれもの。おかずだけ調達して、車の中で炊きたてご飯と一緒に食事する人も多いようです。

タケルくん

■お風呂問題

RVパークやオートキャンプ場の場合には、近くに入浴施設がある、もしくはシャワー設備が整えられているため特に問題はありませんが、道の駅やSA・PAには近くにない場合が多いので、なかなか頭を悩ます問題です。

そんな時便利なのが道の駅の案内所。近隣の旅館やホテルの立ち寄り湯情報が置いてあるからです。また温泉地の場合には、「共同浴場」の地図がおいてあることが殆ど。
特に共同浴場の場合には格安で、場所も多いので「湯巡り」をして楽しむこともできます。健康センターなども良いもんですが、偶然立ち寄った旅先、共同浴場で地元の人と一緒に汗を流すのもなかなか良いもんです。

町営入浴施設 共同浴場

■さいごに

今から10年ほど前、知人に「車中泊で旅行してる」と話したところ、おもいっきり「ケチ」扱いされたことがあります。
当時それぐらい「車中泊」のイメージは微妙だったのです。

それがこの数年の車中泊ブームのおかげで、周囲からの「白い目」はうっすら和らいできました。
書店にも専門誌がいくつか並ぶようになり、ネットにも専門サイトが登場しています。
マナーについては以前は無法状態だったのが、ブームの後押しもあり徐々にそれが整理されつつあるようです。

でも今はまだ時期的には「流行始め」であることは変わりません。
今以上、車中泊できる場所が減らないよう、利用者の皆さんは一層注意して欲しいものだな……と願うばかりです。

■おまけ

「さいごに」を書いたあとに何ですが、静岡・南伊豆方面へよく旅する方に悲報です。車中泊者&サーファーに人気の南伊豆町営『下賀茂温泉 銀の湯会館』が6月7日の営業をもって来年3月まで改修工事に入るそうです。『弓ヶ浜温泉 みなと湯』は通常通り営業され、6月中旬から営業時間が10時から21時になります。

下賀茂温泉 銀の湯会館