最盛期、全国で2万近くあったものの現在はその4分の1程度まで減ったと言われるゲームセンター。
背景には電気代の値上げや建物の老朽化などがあるのですが、最も大きな問題は「消費税増税」と言われています。

そんな状況の中、独自の工夫で数々の難局を乗り越え、今では全国にその名を馳せる、東京都練馬区のゲームセンター『Game inえびせん』(以下:えびせん)に今回お邪魔してきました。

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『Game inえびせん』店内

■どこか懐かしさを覚える癒やし系空間

えびせんがあるのは、西武鉄道池袋線江古田駅南口から歩いて数分の場所。ゆったりとどこか懐かしい商店街の中にあるお店です。

店内に入ると小規模で妙に落ち着く狭さ。外からは商店街特有ののんびりとした空気や話し声が流れ込み、まるで学生時代のゲームセンターに迷い込んでしまったかのような、心地よい錯覚を覚えます。

看板の隣には不動産ののぼり!

看板の隣には不動産ののぼり!

階段の先にお店の入り口があります

階段の先にお店の入り口があります

えびせんではシューティングやパズルといったビデオゲームがメインに扱われています。1プレイは何と50円(一部100円)。
他には1時間同じゲームをやりこめるタイムレンタルや基板の入れ替えサービスが存在します。

■店長のやけっぱちから生まれた『Game inえびせん』

今回インタビューにご協力いただいたのは、店長の海老原氏。

海老原氏はえびせんの店長を務めながら『わっしょい』と呼ばれるイベントで筐体提供や設備を担当してきました。『わっしょい』は「シューティングゲームの神業をお酒を飲みながら楽しもう!」といった主旨で行われてきたイベント。

昨年はフランスで行われたゲームイベント『Stunfest(スタンフェスト)』内でも開催され、今年2月には幕張メッセで開かれたニコニコ闘会議内イベント『わっしょい!闘会議Editon』(こちらでは司会も務めています)での開催と、数多くの実績を残しています。

海老原氏がえびせんの店長を務める前、劇団で活動する舞台人だったそうです。その後音響の仕事を始め「将来はこのまま……」と考えていた矢先、突然仕事がなくなってしまいました。
一時は自暴自棄になり「どうにでもなれ!」と思っていたと振り返ります。

しかしある時、「ゲームセンターはどのくらいの予算があれば出来るんだろう」と思いつき、具体的に動き出します。その中で「行ける!」という確信を得られ、開店までこぎつけたそうです。

これまでを振り返り海老原氏は「今までの人生でどこか一個抜けていたら開店はなかった」と語っていました。

舞台人としての経験は『わっしょい』等イベントの出演へ、音響での配線知識や経験は「ゲーム映像をプロジェクタに映す」ことや「プロの音響さんとの折衝」へと。様々な要素が一つ一つ繋がっていったのです。「思えば不思議なものです」という一言が心に残りました。

■ ラジオでもいい配信、あえて顔出しで伝えたかったのは○○

えびせんでは『えびせんTV』と呼ばれる配信をustreamで行っています。

こちらは海老原氏と京城氏の二人が顔を出しながら雑誌アルカディア(今年2月28日に発売された168号にて定期刊行の終了と以降は不定期刊行になるとの発表がありました)に掲載されたハイスコアを振り返るもの。

このハイスコアとは、アルカディア内で掲載されるもので、全国のゲームセンターで申請されたスコアやタイムなどを毎月ある締め切り日まで集計し、その時点での全国1位を発表するもの。より良いスコアを追求するプレイヤーをスコアラーと呼びます。

えびせんには全国1位を目指して取り組む本気のスコアラーがよく集まります。そのためお店の雰囲気がキリキリしているなど怖いイメージを持たれていました。これは海老原氏にとって大きな悩みだったとのこと。ですから『えびせんTV』で顔を出し、和気あいあいとトークをすることで「えびせんにそういった雰囲気はないから安心して欲しい」と伝えたかったそうです。

このハイスコア集計、実は2月28日発売の168号で一時休止となっています。アルカディアの前身であるゲーメストから続いていた長い伝統に一度幕が下ろされたのです。
しかし先日、集計連載を続けられる媒体が見つかり引き継ぎが進められていることが発表され、多くのプレイヤーが沸き立ちました。

■ゲーセンがなくて遊べない人から本気でやりたい人まで、誰もが遊びやすいように

アーケードゲームを本気でやろうと思っても環境が整わないことがあります。

まず1つ目は「ゲーム」がない場合。これは遊びたいゲームがゲームセンターに設置されていない・家でゲームを揃えようとするとハードルが高いといったものが含まれます。

家でアーケードゲームを遊ぶ環境にするには、基板、電源、コントロールパネル等様々な専用設備が必要になります。これらを揃えるには全部合わせて数万円ほどかかるのです。

続いて連射機能がない場合。こちらはコントロールパネルに対して装置を取り付けるのですが、知識がないと壊してしまう可能性があります。そして録画環境。筐体からの映像や音声を取り込むにはこちらも知識や機材が必要になるため揃えることが難しいのです。

ですからえびせんでは、このような環境を全て取りそろえ、プレイヤーが求めるものを提供できるよう整えているそうです。

『Game inえびせん』店内

■ゲームセンターに必ずある「アレ」は店舗内にはありません

えびせん内部は完全禁煙で灰皿は外にしかありません。これは「最近の若年層で煙草を吸う人は少ない」という話しを見聞きしたことから始まります。そこで常連の方と相談した結果、禁煙に踏み切ったそう。

これにより、タバコを吸わない・敬遠する層の来店が促され、インカム(売り上げ)も増加したそうです。
また海老原氏は「掃除が楽になった!」とも語ります。今ではモニター清掃はほこりを払って軽く拭くだけ、、エアコン清掃もシーズン始まりと終わりだけ。筐体が黄ばむこともなく1月に1回、外側を水拭きするだけだと。しかしこれは「周りの協力あってこそ叶った部分です」と嬉しそうに教えてくれました。

■ゲームセンターを取り巻く厳しい現状

ゲームセンターを取り巻く環境は、冒頭紹介したとおり、かなり苦しい状況です。えびせんでも消費税増税や電気代の値上げにより、相当な負担を強いられました。

中でも最もきつかったのは「消費税」という話。8%の増税以前に比べ、年間のランニングコストは約1か月分が上乗せされる形になったそうです。

海老原氏は「このことから先々を考えて黒字の内に畳んだお店も多いのでしょう。現状、それぞれが手段を考え何とか乗り切ってはいますが、今後10%に増税したら……」と不安を漏らしていました。

しかし、悪いこともあれば、良いこともあり、「ゲームセンターの経営規模に対して適切なプランを選べるようになってきた」とも教えてくれました。

あるメーカーでは買い取りやレンタル料金の体系をいくつか用意し、お店の規模に合ったプランを導入できるようになったそうです。
また、先日SUICAなどでゲームができるシステムの導入の話も出てきたとのこと。稼働した場合、店によって独自の料金設定が1円単位で可能になります。導入費用などまだ不明な部分はあるそうですが、「今後明るい期待が持てそうで楽しみだ」と語ってくれました。

■ゲームセンターだから覗けるディープな世界にぜひ

今、ゲームに触れられる形は様々です。ゲームセンター・スマホ・据え置き機・PC……。

そんな中、動画や配信などを見たのを機に「遊んでみよう」と思い立ち、現在では『わっしょい!闘会議editon』に出る程まで上達した方がいます。彼はまだ10代ですが、今では全国に名を知られるプレイヤーになっています。

またゲーム音楽から入る人も多く筆者もその一人。ゲーム音楽自体を聞いても楽しめますが、ゲームをしながらだと良さはさらに膨れ上がります。

海老原氏は最後に「これらを機にゲームセンターに行ってゲームやプレイヤーに触れ、ディープな世界を覗いてみるのはどうでしょう。また違った楽しみが広がりますよ」と話してくれました。

『わっしょい!闘会議Edition』ニコニコ生放送タイムシフト;
http://live.nicovideo.jp/watch/lv206841086

ゲームセンターではゲームだけでなく共通の趣味を持った仲間との出会いなどたくさんの楽しいことに出会えます。訪れて1クレジット入れてみるのはいかがですか?

■取材協力店情報
店名:Game inえびせん
住所:東京都練馬区旭丘1-75-12 ヤジマビル2F (西武池袋線江古田駅南口から徒歩2分)
公式サイト:http://www.ebi-cen.com/

(取材:らくしゅみっくす)