『週刊新潮』(新潮社)3月5日発売号に、川崎市・中1男子生徒殺害事件の、主犯格とみられる18歳少年の実名及び非加工顔写真(以下、顔写真)が掲載されたことについて、ネットで様々な意見があがっていた。

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■「いいぞもっとやれ」「よくやったといいたい」

少年法第61条は、未成年時(20歳未満)に犯した犯罪について、犯人の実名・顔写真など本人と推しはかることができる情報は報道してはならないと定めている。ただもし違反をしたとしても特に罰則はない。
罰則はないにしても、大手マスコミはじめ報道の多くは、犯人の実名・顔写真を報道することはほぼなく、少年法に従い今事件も同様に扱っている。

ただ、週刊新潮はつい先月の2月5日発売号でも、名古屋市・77歳女性殺害事件で、愛知県警に1月逮捕された女子大生(19)の実名・顔写真を掲載しており、新潮社の他の雑誌も過去度々実名報道を行っている。(例:1997年・神戸連続児童殺傷事件/『FOCUS』酒鬼薔薇実名報道)

さらに『新潮45』では、1998年・堺市通り魔事件(犯人当時19歳)で実名報道を行った際、加害男性から訴えられているが、2000年2月大阪高裁の判決で、「社会の正当な関心事で不当でなければ、プライバシー侵害にはあたらない」と加害男性の訴えが退けられ、新潮社側が勝訴。「場合によっては実名報道できる」という例を作っている。
そうしたことから、週刊新潮に限らず新潮社全体が「少年法第61条を形骸化させる存在」と囁かれている。

その週刊新潮の先月に続く実名報道には、ネット上で実名報道自体を支持する声が多くみられている。
「いいぞもっとやれ」「よくやったといいたい」「被害者ばかりが晒(さら)されるのは不公平」「これはGJ」など。

反対意見については支持者の方が多すぎるためか、余り目立っておらずネット上では少数派と言わざるを得ない。

しかし実名報道の是非とは別に、一部からは週刊新潮に対し「売り上げのためでしょ」「実名報道したぐらいで正義ぶるな」という声もみられている。

■事件発覚直後から複数の個人情報流出

今回18歳少年の実名を報じた週刊新潮より先に、事件発覚直後から、ネット上には「犯人の可能性がある人物」として、複数の実名・顔写真などが出回っていた。

これは今回に限ったことではなく、凶悪事件が起きたり、ネット上で違法行為が見つかった場合、「正義」という名のもとに、ネットユーザーらが自発的に犯人・関係者の素性を暴くケースが近年増えている。

犯人自身のSNSアカウントが見つかれば過去履歴は全て調べられ、SNSに繋がる知人がみつかれば、そこも調べるなどして芋づる式に暴いていく。

そのため実名報道については、「マスコミが報道した」という点を除き、あまりセンセーショナルではなくなっている。
週刊新潮が報じる前から、ネットでちょっと検索すれば、少年らの情報は簡単に手に入っていたし、今回の場合には18歳少年の自宅前からインターネット生放送する者まで現れている。

ただ昨今のネットユーザー先行による情報拡散は、情報が早い反面問題も多く指摘され、過去には事件関係者の親族としてネットに晒された人物が、実は無関係だったということも起きている。
その時は、晒された人物の職場に抗議の電話や手紙が殺到。警察に被害届が提出され、個人情報を投稿した人物らは書類送検されている。

今回の事件も初動、沢山の情報が流された。逮捕された少年のものも含まれていたが、事件とは関係ないと思われる人物らの情報や写真も一部で流されていた。
誤った情報が流れるケースは初動特にあり、流す側も良い人ばかりとは限らず、悪意をもって嘘の情報を流す者も居る。そのため、ネットで流れる情報精査は発信する側ではなく、受け取る側に求められているのが現状。

世論では実名報道のあり方について大きく議論されているが、ネットにおけるこうした情報の扱いについても、今後何らかの形で規制がかかる可能性を持っている。

■実名報道は「事件により判断すべき」との声も

今回の実名報道をうけ、冒頭紹介したような賛同の声の中に、こんな意見もいくつかあがっていた。
「事件により実名報道を判断すべき」という声。

未成年が起こす犯罪の中には、家庭環境、経済的事情により犯罪に追い込まれる者も居る。

例えば、2014年10月北海道南幌町で発生した女子高校生による、祖母・母親殺害事件については、犯行に至る原因に10年に渡る壮絶な虐待があると考えられおり、周囲含め世間は加害者に対し同情の声が多い。実際、情状酌量を求め行われた署名は1万人以上を集めている。

そのため、「実名報道は必要」と感じつつも、「事件の性質をみて匿名報道をすべき」と考えている人もいるようだ。