「うちの本棚」、今回ご紹介するのは倉多江美の代表作『ぼさつ日記』です。ここまで破壊的なギャグ漫画を描ける少女漫画家がいただろうか、と改めてこの作品のパワーに圧倒されました。

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倉田江美/ぼさつ日記_NEW

 倉多江美の代表作であり、初連載作品。
主人公の地獄寺ぼさつ、その友人の火山灰裾野、そしてふたりに見込まれる男の子、留目トメオは『ぼくの心はバイオリン』からのスピンオフキャラだ(留目は名前もそのまま)。ギャグ漫画の主人公として、ぼさつと裾野はさらに人間離れしたキャラクターになっている。

 1話5ページ、全39話の作品だが読み始めたら一気に読んでしまった。このパワーは一体何なのだろう。改めて倉多江美の恐ろしさを感じてしまう。

 しかし、いくらギャグ漫画だからといってもここまでひどい主人公は前代未聞と言っていいのではないだろうか。土田よしこの『つる姫じゃ~っ!』だってここまでひどくなかったと思うぞ。いずれにしろ異色作ということは間違いないだろう。
異色といえば取り上げるネタも異色といえる。カフカの『変身』やカミュの『異邦人』などをギャグのネタにしてしまうのだから一筋縄ではいかない。

 全般としてはいま読んでも面白いのだが、連載当時のCMネタなど、当時を知らないと全く意味の通じない部分もあって、さすがに時代を感じる。

 単行本は本書(倉多江美傑作集②の表記あり)の後、FCワイド版(1991年8月20日初版発行)にも収録されたが、このとき収録作品は同じだが収録順に変更がなされていた。ちなみに単行本刊行前に「プチコミック」の倉多江美特集号でも本作の総集編が掲載されている。

初出:小学館「週刊少女コミック」昭和50年7月6日号~。

書 名/ぼさつ日記
著者名/倉多江美
出版元/小学館
判 型/新書判
定 価/320円
シリーズ名/フラワーコミックス(FC-352)
初版発行日/昭和53年4月20日
収録作品/ぼさつ日記 全39話

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/