ラストフライト記念パッチ2014年5月25日、ひとつの歴史が幕を下ろしました。陸上自衛隊北宇都宮駐屯地に所在する、航空学校宇都宮校の教官パイロットで編成されるヘリコプター展示飛行チーム「スカイホーネット」が、1974(昭和49)年より続けてきた活動を終えたのです。最後のショウとなった、北宇都宮駐屯地開設41周年記念行事の様子をご紹介します。

スカイホーネットは、航空学校宇都宮校で使用する練習機OH-6Dによる展示飛行チーム。今年度から練習機が新型のTH-480Bに更新され、それに伴ってOH-6Dが運用から外れる為、活動を終えることになったもの。駐屯地内にはTH-480Bに対応した真新しい教場が作られ、新型機での教育も始まっています。

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TH-480Bの教場 TH-480B

パイロット達の話では、TH-480Bは同種のエンジンを使用しているものの、エンジン出力をローターに伝えるトランスミッションで制限がかかっている為、OH-6Dに較べて機動性が劣り、スカイホーネットで行うような飛行は無理とのこと。練習機としては素直で良い機体だそうです。

駐屯地開設記念行事では、そのTH-480Bを先頭に祝賀飛行編隊が組まれました。

祝賀飛行編隊

続いてヘリコプターの飛行展示。茨城県の航空学校霞ヶ浦校から参加したAH-64Dは、前週に行われた霞ヶ浦駐屯地開設記念行事でも飛行を行った74504号機。機長も同じ方でした。

AH-64Dの飛行展示

北宇都宮駐屯地の第12ヘリコプター隊・UH-60JAは、隊員のリペリング降下とホイストによる吊り下げ回収の実演。同じ飛行場(宇都宮飛行場)を共用する栃木県警のヘリコプターも、ホイストによる救助活動の実演を行いました。今年の栃木県警は、いつもより派手な飛行を見せて観衆を沸かせていたのが印象的。

隊員をホイストするUH-60JA 栃木県警BK117の救助実演

スカイホーネットの飛行展示は今年で最後ということで、昨年に続いて午前と午後の2回、飛行を行いました。午前は5機のOH-6Dと1機のUH-60JAによるもの。OH-6Dの機体には、カラーボードにラストフライトを示すマーキングが。

スカイホーネットの展示飛行

例年趣向を凝らしたスペシャルマーキングで知られる展示機達ですが、今年のデザインは少々おとなしめ。訊くと「やはりスカイホーネットが最後なので、今年はOH(-6D)が主役ですから」ということのようです。その言葉を裏付けるように、OH-6Dの展示機はラストを意識したデザイン。マーキングに記された「OSCAR」はOH-6Dに割り振られたコールサイン(無線呼び出し時の符号)です。よく見るとハチは「Sky hornet」の文字で構成されているという凝りよう。1974年から、長きにわたって使われてきたOH-6Dに対する感慨に満ちあふれてますね。

地上展示のOH-6D Skyhonetのスペシャルマーキング

心なしか、記念撮影をする人も多かったような気がします。

スペシャルマーキングを撮影する人々

祝賀飛行に参加した後展示された連絡偵察機LR-2は、現在航空学校宇都宮校の機材が仙台で点検整備中だった為、沖縄の第15ヘリコプター隊からの借用機材。垂直尾翼には「WING of OKINAWA」のマーキングが施され、離島での急患搬送にも活躍する機体です。

LR-2 LR-2の尾翼マーキング

その他の展示機では、航空自衛隊の飛行点検隊(埼玉県・入間基地)から飛行点検機U-125が参加。当日は入間基地で航空自衛隊創設60周年記念式典が行われ、あちらが外来機でごった返すので帰投が夕方にずれ込むことに。また、キャンプ座間のアメリカ陸軍UH-60Aは当日朝に参加がキャンセルされるなど、受け入れる駐屯地側ではバタバタした面もあったようです。

飛行点検隊のU-125

ゼネラルアビエーションとの良好な関係から、いわゆる自家用機の参加も多いのが北宇都宮駐屯地の特徴。今回はセスナ172とビーチクラフト・ボナンザがコクピットを公開し、子供たちに大人気でした。

セスナC172 セスナC172

敷地に隣接し、飛行場(もともと前身の中島飛行機が設置した)を共用する富士重工は、ベル412とFA200エアロスバルを展示。栃木県航空協会のFA200アクロバットチーム「レッドスバル」も機体を展示していました。LR-2を操縦する陸上自衛隊のパイロットも興味津々で、FA200の機体について専門的な説明を求めるなど、飛行機乗り同士の交流も。

富士重工の展示機 飛行機談義をする自衛官と民間のパイロット

駐屯地の航空資料館には、新たな展示物が増えました。2012年に引退したLR-1の乗員養成に使用していた初歩的なシミュレータ、リンクトレーナー(1970年2月・東京航空計器製)です。オルガンを作っていた技術を応用して作られている為、姿勢変更を制御するのはフイゴによる空気圧(開発当時、信頼できる油圧装置がなかったことも影響している)、本体は木製という手作り感あふれるもの。海外ではポピュラーなのですが、日本には殆ど現存していないという貴重な品です。

飛行機談義をする自衛官と民間のパイロット

午後になり、スカイホーネットが最後の展示飛行に飛び立ちます。最後の飛行を行うのは、6機のOH-6D。

最後のショウへ離陸するスカイホーネット

「スカイホーネット」の由来となった、ハチのような特徴的な飛行音を響かせながら、卵形の愛らしい姿で空を縦横に駆け巡るOH-6D。これで見納めです。

■動画:

飛行終了後、パイロット達は機体の前で記念撮影。1974(昭和49)年からの歴史に終止符を打ちました。

機体の前で記念撮影

スカイホーネットのOH-6Dは姿を消しますが、偵察・観測ヘリコプターとしてのOH-6Dは、後継機となる純国産ヘリコプターOH-1の調達が早期に終了し、全てを置き換えることができなかったので、まだしばらくは各地で飛び続ける予定です。

スカイホーネットがいなくなって、来年はどうなるのか。毎年色々な趣向を凝らしてきた北宇都宮駐屯地ですが、ちょっと気になりますね。

(取材:咲村珠樹)