ここのつの友情-作品集 「うちの本棚」、今回ご紹介するのは竹宮恵子作品集から初期の作品を集めた『ここのつの友情』です。
デビュー作『弟』は竹宮の才能を感じさせる必読の短編でしょう。

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ここのつの友情-作品集

 この竹宮恵子作品集は『空が好き!』『ファラオの墓』といった代表作のほかは本シリーズが単行本初収録という作品が多いのだが、第7巻では『ここのつの友情』その続編である『ジョージの日曜日』そして初期の短編『ゆびきり』が再録となっている。とはいえデビュー作『弟』、初期作品『かぎっ子集団』を初収録していて見逃せない巻になっていることも事実だ。
『ここのつの友情』が巻頭に収録されているほかは、発表順の収録となっている(『ここのつの友情』は、収録されているのは後年描き直されたものだが、もともとはデビュー前の習作と考えればすべてが発表順あるいは制作順とも言える)。「フラワーコミックス」版の『ここのつの友情』では続けて『ジョージの日曜日』が収録されていたが、本巻ではその他の作品をサンドイッチにする形での収録である。

 『弟』は8ページの短編だが、内容そのものは16ページの作品に匹敵するもの。というのはかなり細かいコマ割りを用いて短いページ数でストーリーを展開しているからだ。少ないページで8コマ、最大で21コマのページがあるが、すんなりと自然に読ませるところは、後に伊藤愛子も衝撃を受けたと言っている。登場人物は兄と弟、そして兄の恋人の3人だけのシンプルなもので、両親を亡くした兄弟は、弟が血のつながっていない養子であり、そのことでグレてもいる。ラストには子供の頃のように仲のいい兄弟に戻るといった展開ではあるが、肩を組む兄弟の姿は、後に描かれる同性愛物を連想してしまったりするのだが、この作品を描いた時点で竹宮もそれは考えていなかっただろう。

 『かぎっ子集団』は当時の社会状況がわからないとピンとこないところもあるかもしれない。「かぎっ子」という名称自体が死語だろう。団地や空き地といった舞台設定にも時代を感じる。「かぎっ子集団」というグループや周囲の大人たちのグループへの偏見など、その後の作品でもたびたび描かれるモチーフが扱われているところは注目していいだろう。

 『もうっ、きらい!』はボーイッシュな女の子が主人公のラブコメディで、学校でも大人気の可愛い女子が、実は主人公が好きで…という百合もの。外見的にも性格的にも男っぽい主人公が、告白されて「まるで童話の王子さま」と自分を感じるシーンでは、ピーターパンや星の王子さまと共にウィーン少年合唱団までが例えにあらわれる。主人公ミツルには『空が好き!』のタグ・パリジャンの匂いが漂っている気がする。ちょうど『空が好き!』の第一部と第二部の間に描かれたためかもしれない。

 『ここのつの友情』『ジョージの日曜日』に関しては「フラワーコミックス」版の紹介で、また『ゆびきり』は「花とゆめコミックス」の『夏への扉』の紹介でそれぞれコメントしているので今回は省略いたします。

初出:ここのつの友情/小学館「週刊少女コミック」昭和46年30号、弟/虫プロ商事「COM」昭和42年12月号、かぎっ子集団/虫プロ商事「COM」昭和43年7月号、ゆびきり/講談社「なかよし」昭和44年1月増刊号、もうっ、きらい!/小学館「週刊少女コミック」昭和47年17号、ジョージの日曜日/小学館「週刊少女コミック」昭和49年27号

書 名/ここのつの友情(竹宮恵子作品集7)
著者名/竹宮恵子
出版元/小学館
判 型/B6判
定 価/450円
シリーズ名/プチコミックス・竹宮恵子作品集7
初版発行日/昭和54年1月15日
収録作品/ここのつの友情、弟、かぎっ子集団、ゆびきり、もうっ、きらい!、ジョージの日曜日

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/