「うちの本棚」、今回ご紹介するのは竹宮恵子の『ここのつの友情』です。
 デビュー前の投稿作品をリメイクしたもので、作者としても思い入れのある作品のひとつのようです。

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ここのつの友情

 本書は「少年シリーズ(1)」とカバーに記されている。
『ここのつの友情』は、デビュー前に投稿作品として描かれたもののリメイク。『ジョージの日曜日』はその後日談である。
 金髪に青い目の少年ジョージは、日本育ちで日本語もペラペラだが、その外見から周囲の人には敬遠され、自分でも殻に閉じこもるような状況だった。主人公の朗は、偶然ジョージと知り合い親友となり、ジョージが心を開いて仲間を作っていくのを見守る。
 実を言うと、この作品を読むまでは、9個の友情という意味だと思っていたのだけれど、実際は9歳という意味でした。

『アンドレア』は「ウィーン少年合唱団」を描いた作品で、合唱団ものの初期作品。作者本人とその親友が登場する、フィクションとノンフィクションが交錯した作風は、その後のシリーズにも踏襲されている。

『会話』は、親友の双子の姉に恋するトッポが描かれているが、「あとがき」によれば、トッポとその親友サリュウの長い物語の一部とのこと。雰囲気からは、トッポと男女の双子の三角関係が想像されるのだが…。

 最後に収録されている『漫画狂の詩』は「楳図かずお伝」のサブタイトルで、楳図かずおについて描かれたものなのだが、竹宮本人が面識のないところで仕事を請けていて、結果的に伝記というより、楳図かずおの印象を描いている。ある意味「永遠の少年」とも言える楳図かずおだから、「少年シリーズ」として収録してしまっても間違ってはいないかもしれない。

 全体として、前向きな明るい傾向を持った作品ばかりで、ドロドロとした愛憎や一度踏み込んだら抜け出せないような異世界が描かれていないことが、逆に意外な作品集だ。もっとも、この明るさは作者本人の印象に近いのではないかと思ってしまうのだけれど。
 ちなみに『ここのつの友情』の扉ページは、タイトルも含めてアシスタントを使わず竹宮恵子がひとりで描いたとのことである。

初出:ここのつの友情/小学館「週刊少女コミック」昭和46年30号、ジョージの日曜日/小学館「週刊少女コミック」昭和49年27号、アンドレア/小学館「別冊少女コミック」昭和51年10月号、会話/白泉社「LaLa」昭和51年9月号、
漫画狂の詩/小学館「週刊少年サンデー」昭和50年8月5日増刊号

書 名/ここのつの友情
著者名/竹宮恵子
出版元/小学館
判 型/新書判
定 価/320円
シリーズ名/フラワーコミックス(FC-151)
初版発行日/昭和52年1月5日
収録作品/ここのつの友情、ジョージの日曜日、アンドレア、会話、漫画狂の詩、<デビュー記念作>とわたし

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/