[JAXA公式]-DPRスペシャルムービー今、ネットで「JAXAはじまった!」と話題を集めてる動画があります。それはJAXAが公開した、ある人工衛星を紹介したアニメ。今年度(2014年1月以降)にH-IIAロケットによって、種子島から打ち上げられる予定です。

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[JAXA公式] DPRスペシャルムービー | Anime for JAXA & NASA Space Mission
https://www.youtube.com/watch?v=VGUddLHDVts
(提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA))

 
JAXAの宇衛座はるかとNASAのソフィア・シグレーというふたりの女性の交流を通じてJAXAとNASAの共同開発を紹介し、併せて衛星のミッションと搭載されるDPRを紹介するストーリー。個人的には、JAXA筑波宇宙センターがあるつくば市の隣町である土浦市の繁華街(モデルは土浦駅前の「桜小路」?)で酔っぱらって肩を組むはるかとソフィアのシーンと、旧友の結婚式に出席する為、はるかが自転車で爆走するシーンが印象的です。制作を担当したのは『STEINS;GATE』や『ヨルムンガンド』シリーズ、『はたらく魔王さま!』で知られるWHITE FOX。

このアニメで紹介されている「DPR」とは、アメリカ航空宇宙局(NASA)と共同で開発している「GPM主衛星」に搭載される、メインの観測機器の名前。正式には「二周波降水レーダ(Dual-frequency Precipitation Radar)」といいます。

まず、GPM主衛星が行うミッションである「GPM計画」からご説明しましょう。これは「全球降水観測(Global Precipitation Measurement)計画」といい、地球全体の降水状況について観測するという大規模なプロジェクト。

水は地球を地球たらしめていると言っていいほど、地球という惑星の環境を特徴づけている重要な物質です。この水の循環は我々人類の生活を左右する重要な要素のひとつ。干ばつや洪水などといった水の問題だけでなく、これからは地球温暖化など気候の変化により、異常気象が増えることも予想されています。このような問題に対して、まずは我々の生活に重要な真水(淡水)の供給源である降水の状況を精確に把握することが必要です。

これまでにJAXAはNASAと共同で、地球全体の降雨量の3分の2を占める亜熱帯・熱帯地域での降水状況を観測する「熱帯降雨観測衛星(Tropical Rainfall Measuring Mission=TRMM)」で、1997年から実績を積み上げてきました。この実績を基に、より精度の高い観測機器を積んだ衛星を使って観測範囲を地球全体に広げよう……というのがGPM計画という訳です。

TRMM(トリム)では1機の観測衛星でしたが、GPM計画では複数の衛星(現在参加が予定されているのは9機)の観測機器を使って宇宙から降水状況を観測し、更に地上での気象観測データを併せて3時間ごとに地球全体における降水の様子を把握します。人工衛星はJAXAとNASAだけではなく、欧州宇宙機関(ESA)やフランス、インドなどが参加。2012年5月に打ち上げられた第一期水循環変動観測衛星「しずく(GCOM-W1)」も観測の一翼を担います。このGPM計画の中心となるのが、JAXAとNASAが共同開発するGPM主衛星であり、計画に参加する様々な衛星の観測データを分析する際、基準となるデータを取得する重要な観測機器が、JAXAが情報通信研究機構と共同で開発したDPRなのです。

DPRは「二周波降水レーダ」の名が示す通り、ふたつの異なった周波数で降水状況を観測します。ひとつはTRMMでも使用していた強い雨を見るのに適した13.6GHz(Kuバンド)の降水レーダ(KuPR)、もうひとつは弱い雨や雪を見るのに適した35.5GHz(Kaバンド)の降水レーダ(KaPR)。「ケーユー・ピーアール」「ケーエー・ピーアール」と読むのですが、つい「くぱぁ」「かぱぁ」と読んでしまうのは、筆者の煩悩のせいかもしれません。

降水レーダの反応(レーダーエコー)を示す電波強度は、レーダ波を反射する降雨自体によって減衰します。これはレーダが使用する周波数と、その波長に合致した雨粒の大きさによるので、複数の周波数を同時に使うことによって互いのエコー強度の減衰をカバーしあい、精度の高い観測が可能になるという訳です。

日本はこのような降水に関するリモートセンシング技術は世界一。同じく世界に誇れるコンテンツであるアニメを使ってプロジェクトを紹介するのは、実にマッチした方法だと思います。アニメ制作はあくまで広報活動の一環であり、訴求力の高い手法を模索した結果だそうですが、10月17日にYouTubeで公開して以来、わずか4日で再生数が3万回を突破するなど、大成功と言えるでしょう。

GPM主衛星の打ち上げシーンで映るロケットが、長くて細いSRB(固体ロケットブースタ)から判る通り、H-IIAではなくH-IIなので、ディープな宇宙ファンからは「間違ってる!」とツッコミが来そうですが、これはTRMMの打ち上げ映像(1997年11月28日、H-IIロケット6号機で打ち上げ)を作画の参考資料にした為のようです。

10月19日に行われた「宇宙の日」記念の筑波宇宙センター特別公開でも、GPM主衛星の紹介コーナーでこのアニメを公開。大人気でした。また、アニメをモチーフにしたメタリックステッカーも。前年まではDPRの筆文字ロゴを使ったピンバッジがありましたが、このステッカーも人気でした。

筑波宇宙センター特別公開の様子

DPRスペシャルムービーのポスター GPM/DPRステッカー

ところで、このGPM計画のとりまとめをしているNASAのゴダード宇宙飛行センターですが、こちらではこんなエンターテインメント性の高い動画をYouTubeに公開しており、お国柄が現れています。子供番組を思わせる手作り感あふれるミッション解説動画と、ブライアン・イライジャ・スミスさんの楽曲「Pour on Me」を使ったミュージック・クリップ調のイメージ動画。どちらも楽しく、完成度高いですね。

‪NASA | For Good Measure‬
https://www.youtube.com/watch?v=6orv6v4ZLjQ

‪NASA | WATER FALLS Trailer‬
https://www.youtube.com/watch?v=3uC-4M_PjzQ

(提供:NASA)

NASAでは2013年2月から4月にかけて、GPMのマスコットキャラを募集する「GPMアニメチャレンジ」を開催しており、グランプリには宇宙機ファン(擬人化)で知られる日本のまんが家、霧賀ユキさんの作品「GPM」が輝いています(コロラド州ハドソンに住むアニメファンの14歳、サブリン・バックホルツさんの「みずちゃん(Mizu-chan)」と同時受賞)。ある意味、もっとも日本のアニメやまんがに縁の深いミッションがこのGPM計画だと言えるでしょう。

GPM計画で取得されたデータは関係各機関に提供され、身近なところでは天気予報の精度向上や、災害対策策定の為の基礎データなどに利用される予定です。

JAXA GPM/DPRスペシャルサイト
http://www.satnavi.jaxa.jp/gpmdpr_special

NASA・ゴダード宇宙飛行センター GPMスペシャルサイト
http://pmm.nasa.gov/GPM

NASA 「GPMアニメチャレンジ」結果発表ページ
http://pmm.nasa.gov/education/anime-winners

(文・写真:咲村珠樹)