「超人バロム・1」表紙「うちの本棚」、今回取り上げるのは古城武司のコミカライズ版『超人バロム・1』です。

かつてテレビドラマを見ていたという人も、まったくドラマを知らないという人も十分に楽しめるヒーロー活劇作品。原作ドラマの持っていた怪奇性や登場するユニークな魔人も再現したコミカライズ作品のお手本のような仕上がりです。

バロム1・古城


本作は東映制作による特撮テレビドラマ『超人バロム・1』のコミカライズ作品である。このドラマのコミカライズ作品は、本書の古城武司版以外にも、さいとう・たかを/さいとうプロ、松本めぐむによるものが講談社「テレビマガジン」「たのしい幼稚園」、黒崎出版「テレビランド」に掲載されていたようだが、古城版を除いて単行本化はされていない。

テレビ版は当初アニメ作品として企画され、検討される中で『仮面ライダー』のセカンドという形で特撮ドラマとして制作されることが決まった。
原作はさいとう・たかをが講談社の「週刊ぼくらマガジン」に連載していた作品だが、ヒーローである「バロム1」自体のデザインやストーリーは大幅に変更されている。テレビ版からこの作品に触れたボクなどは、のちに原作コミックを見て違和感を感じた(笑)。
『仮面ライダー』が当初怪奇性を打ち出していたように、『超人バロム・1』も怪奇性の強い怪人やストーリーの印象が強い。特に魔人の造型はグロテスクと言ってもいいものが散見され、のちに「トラウマドラマ」としてあげられることも多かった。

さて、古城武司によるコミカライズ版だが、全11話中,魔人が単独で登場するのは4話のみで、基本的に2体の魔人が登場する構成となっている。当然ストーリーもテレビ版をアレンジする形になりオリジナル色も濃い。
注目したいのは、バロム・1や魔人の造型がテレビ版をしっかり再現しているところ。前述したようにこの作品では魔人の造型がひとつの特徴とも言え、コミカライズ版でもそこをしっかり再現しているのは本作品のポイントといえるだろう。
基本的には正統派の少年漫画で、ヒーローの活躍が堪能できる。ある意味、コミカライズ作品の典型ともいえ、コミカライズ作品を多く手がけた古城武司だからこその仕上がりといってもいいだろう。単に魔人が現れ、バロム・1が倒すというだけでなく、各話きちんとしたストーリーがあるのもいい。元のドラマを知らない読者でも十分に楽しめる作品になっている。

本作は連載中に秋田書店「サンデーコミックス」から単行本化され、全2巻が刊行された。が、最終話が未収録のまま再刊行の機会がないまま30年あまりが経ち、マンガショップシリーズから完全版での再刊行となった。特に記載は無いものの、最終話は印刷物からの復刻のようである。

初出:秋田書店「冒険王」1972年8月号~1973年1月号

書 名/超人バロム・1
著者名/古城武司
出版元/パンローリング・マンガショップ
判 型/B6判
定 価/1890円
シリーズ名/マンガショップシリーズ
初版発行日/2007年1月2日
収録作品/呪いの魔人フランケルゲ、快腕魔人エビゲルゲと変化魔人アンコルゲ、毒ガス魔人ゲジゲルゲと地震魔人モグラルゲ、ミノ虫魔人ミノゲルゲ、魔女ランゲルゲ、吸血魔人サソリルゲと洗脳魔人ヤゴゲルゲ、毒ガス魔人クチビルゲと光線魔人ヒャクメルゲ、骸骨魔人ホネゲルゲと脳波魔人ノウゲルゲ、毒トゲ魔人トゲゲルゲ、残忍魔神トゲゲルゲと幻惑魔人クビゲルゲ、対決!! 悪の支配者 大魔人ドルゲ

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/