忠直卿行状記今回取り上げる時代劇映画は昭和35年の『忠直卿行状記』。

市川雷蔵演じる松平忠直は結城秀康の長男で越前藩主。大坂の陣で真田幸村を討ち、徳川家康(演・二代目中村鴈治郎)から褒められますが、ふとしたことから家臣に対する不信と孤独を深め、乱行が目立つようになります。


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時代劇映画で描かれた暴君と言えば昭和38年の映画『十三人の刺客』で菅貫太郎が演じた松平斉韶が有名ですが、『十三人の刺客』における斉韶が登場時から暴君であったのに対して、『忠直卿行状記』は忠直が暴君になる過程を描いています。
また、家臣から心情を理解されず自暴自棄に陥る忠直が、忠臣・浅水与四郎(演・小林勝彦)と腹を割って話し合うことで与四郎への信頼を取り戻すエピソードが描かれており、忠直を単なる暴君と描かなかったところに本作の価値があります。

(文:コートク)