こんにちは、咲村珠樹です。ゴールデンウィーク最初の土曜となる4月27日、神奈川県にあるアメリカ海軍厚木航空施設(NAF厚木・通称:厚木基地)で「日米親善春祭り」が開催されました。今回はその様子をリポートします。


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アメリカ政府の歳出強制削減措置発動により、軍の予算も大幅に削減され、作戦に関係ないものは軒並みカット。特にイベント等の広報予算はほとんどが認められなくなりました。海軍のフライトデモンストレーションチーム、ブルーエンジェルスは訓練を含む全ての飛行が禁止に。空軍のサンダーバーズも飛行停止措置が採られ、今年の夏〜秋に予定されていた、日本を含むアジアパシフィックツアーが中止になりました。

もちろん、軍が協力する航空祭も軒並み中止に。日本でも5月5日に予定されていた海兵隊岩国基地のフレンドシップデイ(航空祭)は予算が認められずに中止、空軍の嘉手納基地、横田基地のフレンドシップデイも無期延期ということになり、実質的に開催されない状況です。特に岩国基地は、フランスからやってきた民間最大のアクロバットチーム「ブライトリング・ジェットチーム」の初来日公演(ショウ)が予定されていただけに残念な出来事でした。……岩国は中止となりましたが、ブライトリング・ジェットチームの飛行はこの他、5月6日に明石海峡大橋、5月11日に福島県(午前)と横浜港(午後)、5月12日に福島県いわき市小名浜港での飛行が予定されています。

厚木での春祭りも開催が危ぶまれましたが、無事予定通り開催の運びに。展示飛行のある航空祭ではありませんが、今年ではほぼ唯一の米軍航空イベント、そしてゴールデンウィークということもあって、多くの人(NAF厚木の公式発表で2万人以上の日本人)が来場しました。

NAF厚木では、セキュリティ上の理由から入場時に厳しいチェックが行われます。基本的に日本かアメリカの国籍を持っていないと入場することができません。国籍を確認する為に、パスポートや外国人登録証など、本籍(国籍)記載の写真付き身分証明証の提示が求められます。手荷物や身体の検査も厳重です。この為、入場に時間がかかり、担当部門の職員を総動員しても入場待ちの行列が数kmにおよび、時間内(11時~16時)に入場できなかった人も多くいました。自衛隊のイベントでも手荷物検査などがありますが、実戦状態にある軍事施設ですから、この厳しい措置は致し方ない面もあります。来場者が許容範囲を超えたんですね。

飛行場地区のフライトラインには、空母ジョージ・ワシントンで運用されるCVW-5(第5空母航空団)に所属する各飛行隊のCAG(飛行団司令)機や、海上自衛隊厚木航空基地に所属する第51航空隊・第61航空隊の機体が並びます。色とりどりのデザインが施されたCAG機は華やかの一言。

▼写真:フライトラインにCAG機が並ぶ https://otakei.otakuma.net/?attachment_id=29524

フライトラインにCAG機が並ぶ

しかしまず注目は海上自衛隊。新型哨戒機P-1の量産1号機(5503)が初の一般公開です。この機体、翌28日には海上自衛隊鹿屋航空基地に移動し、航空祭「エアーメモリアルinかのや」でも公開されました。

▼写真:P-1が一般初披露 https://otakei.otakuma.net/?attachment_id=29525

P-1が一般初披露

試作機XP-1との外見的差異や飛行特性の違いは殆どありませんが、コックピットにはヘッドアップディスプレイ(HUD)が装備され、更に使い勝手が向上しているとか。現在量産2号機(5504)まで受領していますが、間もなく3号機以降の2機(2008年度発注分)もメーカーから納入予定で、急ピッチで運用評価が進みそうです。

そして、海上自衛隊にわずか3機だけ残る、第61航空隊のYS-11(YS-11M・9042)も展示。後継機として、アメリカ海兵隊から中古のC-130R導入が決定し、既に要員の一部がアメリカで訓練を開始しているので、海上自衛隊でYSが見られるのもあとわずか。名残惜しいですね。

▼写真:61航空隊のYS-11は来年引退予定 https://otakei.otakuma.net/?attachment_id=29526

61航空隊のYS-11は来年引退予定

厚木での地上展示では、司令官挨拶でスティーブン・ウィーマン大佐が「我々の航空機をすぐ近くで見て、高度な訓練を積んだ搭乗員達と会話を交わすことによって、NAF厚木が帯びている比類なき任務と、この美しい国日本のよき客人として、安全を考慮して訓練に励んでいることを感じてください」と語ったように、周りをロープなどで囲わず、すぐそばで機体を見て触れるのが特徴。

昨年はロープが登場していましたが、今年は再びロープを撤廃。これが厳重なセキュリティチェックの原因でもありますが、最新鋭の軍用機を間近に見る機会はそうそうありません。最新鋭の電子戦機EA-18Gのキモとも言える電子妨害ポッド、AN/ALQ-99にもベタベタ触れます。

▼写真:子供でも電子妨害ポッドに触れます https://otakei.otakuma.net/?attachment_id=29527

子供でも電子妨害ポッドに触れます

海上自衛隊のP-3Cも近くで見られます。ソノブイ投下口を興味津々で覗き込む人が目立ちました。

▼写真:P-3Cのソノブイ投下口に興味津々 https://otakei.otakuma.net/?attachment_id=29528

P-3Cのソノブイ投下口に興味津々

今年CVW-5に加入したHSM-77「セイバーホークス(Saberhawks)」のCAG機(MH-60R)は、その名の通り剣を構えた鷹が日米両国旗を持つ、日米友好をアピールするようなデザインが目を引きました。このMH-60Rは、最新の対潜水艦戦闘システムであるLAMPS Mk IIIブロックIII対応機種で、今回が日本初公開でした。

▼写真:HSM-77のCAG機 https://otakei.otakuma.net/?attachment_id=29529
▼写真:日米国旗と剣を持つ鷹のデザイン https://otakei.otakuma.net/?attachment_id=29530

HSM-77のCAG機 日米国旗と剣を持つ鷹のデザイン

また、来場者にとってラッキーだったのは、当日定期訓練飛行があり、CVW-5の所属機が離着陸を実施したこと。帰還時にはオーバーヘッドアプローチからのコンバットピッチに加え、デモフライトまではいかないものの、タッチアンドゴーなど若干のサービスもありました。

▼写真:訓練飛行中のHSM-77所属MH-60R https://otakei.otakuma.net/?attachment_id=29531
▼写真:着陸したVFA-102のCO機 https://otakei.otakuma.net/?attachment_id=29532

訓練飛行中のHSM-77所属MH-60R 着陸したVFA-102のCO機

着陸後には来場者にパイロットが手を振る姿も。

▼写真:フライト後観客に手を振るVFA-195のパイロット https://otakei.otakuma.net/?attachment_id=29533

フライト後観客に手を振るVFA-195のパイロット

地上展示でもパイロット達は飛行隊グッズを販売したり、記念撮影に応じるなど大活躍。

▼写真:サムアップで応えるVFA-27のパイロット https://otakei.otakuma.net/?attachment_id=29534
▼写真:VFA-115のパイロットがサムアップ https://otakei.otakuma.net/?attachment_id=29535

サムアップで応えるVFA-27のパイロット VFA-115のパイロットがサムアップ

VFA-102「ダイヤモンドバックス(Diamondbacks)」は、今年日本展開10周年。しかも隊のニックネームであるガラガラヘビ(Diamondback)と同じ巳年が重なって、記念のTシャツなどが並んでいました。

▼写真:VFA-102のCAG機 https://otakei.otakuma.net/?attachment_id=29536

VFA-102のCAG機

VFA-195「ダムバスターズ(Dambusters)」では、CAG機「Chippy Ho!」のマスコットも登場。緑の全身タイツにリアルなハクトウワシの頭とちょっと不気味な姿だからか、見ていた限りでは小さい子のウケはイマイチだったようです。

▼写真:VFA-195のマスコットも登場 https://otakei.otakuma.net/?attachment_id=29537

VFA-195のマスコットも登場

飛行場地区から離れたフィールドに設けられたステージでは、神奈川県立中央農業高校の和太鼓部や、基地内の有志によるバンド(副司令官バンドも登場)やDJによるパフォーマンスもありました。有志による野点や、各部署による模擬店もあり、来場者は楽しんでいましたね。CVW-5の婦人会(Wife’s club)のブースには「私達がCVW-5をコントロールしている」旨の張り紙があり、アメリカでも奥様方が実権を握ってるのかな、と思ったりもしました。

アメリカの歳出強制削減措置はいまだに終わりが見えません。このまま続くと、来年は更に歳出が減らされるので、今年以上に米軍関連のイベントは開催が難しくなりそうです。外国の財政事情の話なのでなんとも言えませんが、良い方に向かってくれればいいな、と思わざるを得ませんね。

(文・写真:咲村珠樹)