幕末太陽傳昨年2012年は映画会社日活の創立100周年の年です。

会社が設立された年としては、日本の大手映画会社、即ち松竹、東宝、大映(角川書店)、東映の中で最も古い。
そして日活創立100周年を記念して、昨年、昭和32年の日活映画『幕末太陽傳』デジタル修復版が公開されました。


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映画の監督は川島雄三、録音技師は2年前の映画『聯合艦隊司令長官 山本五十六』も手掛けた橋本文雄。特撮を手掛けたのは日活特殊技術部で、ラストシーンの遠景にマット画合成が用いられるなどの特撮を見ることができます。出演はフランキー堺の他、石原裕次郎、二谷英明、小林旭の姿も見えます。

ストーリーは幾つかの落語を繋ぎ合わせたもので、オープニングでは現代の品川駅、国鉄の車輛、品川の町並み(赤線地帯)が映し出され、ナレーターが、売春防止法によって昭和33年に赤線が廃止されることを説明します。そして映画の本篇は、幕末の文久2年を舞台に、品川の遊郭を描くのでした。幕末の遊郭は大勢の人々が入り乱れて猥雑ながらも活気に満ち溢れ、消滅する運命にある昭和30年代の赤線と、栄華を極めた在りし日の遊郭が、好対照をなしています。

主人公の居残り佐平次(演・フランキー堺)は所持金もないのに品川の遊郭で豪遊し、しょうがないので遊郭で働くことになります。佐平次は抜け目のなさと図々しさで金儲けに邁進しつつ、遊郭内で発生したトラブルを次々と解決し、他の従業員から頼られるようになるのですが、前半と後半の変貌ぶりがなかなか愉快です。また、高杉晋作(演・石原裕次郎)との信頼と友情も爽やかでした。

(文:コートク)