『鋼鉄ジーグ』表紙「うちの本棚」、今回は松本めぐむ(尾瀬あきら)によるコミカライズ作品『鋼鉄ジーグ』を取り上げます。

孤独なヒーローとして人間ドラマを主軸に描かれた本作は、ロボットアニメのコミカライズ作品の名作として、ぜひ読んでいただきたい作品です。


【関連:158回 大空魔竜ガイキング(松本めぐむ版)/松本めぐむ(尾瀬あきら)】
 
本作は東映動画(現東映アニメーション)制作、NET系(現テレビ朝日)系放映のテレビアニメーション『鋼鉄ジーグ』のコミカライズ作品である。初出は秋田書店の「冒険王」で、同時期には講談社の「テレビマガジン」で、原作コミックにあたる安田達矢版が連載されている。

本作は原作コミックともテレビアニメーションとも異なった展開を見せ、全体的に孤独なヒーローとしてジーグ(というよりジーグとなる宙(ひろし))が描かれている。

この時期の「冒険王」といえば桜多吾作の「マジンガーシリーズ」があり、こちらもテレビアニメーションとは違うストーリー展開でのちのち注目されることになった。

1975年前後は「ノストラダムスの大予言」や「日本沈没」などがブームとなり、いわゆる世紀末的な雰囲気が社会を包んでいて、ヒーローも自身の内面を掘り下げていくようなストーリーが多く描かれた時代でもある。本作においては主人公が自ら望む形ではなくサイボーグ化され、鋼鉄ジーグとなってハニワ幻人との闘いに投入されるという設定から、闘いの意味やヒーローの孤独を描きやすい作品だったともいえるだろう。松本はさらに、脳だけを残した強化をジーグがすることとなる展開で「感情などいらない」という意味のセリフを主人公に吐かせている。

『鋼鉄ジーグ』という作品そのものの特徴といえば、主人公である宙が人間体から機械的な外見へと「変身」し、さらに巨大なジーグの頭部へと変形したあと、手足などのパーツをマグネットパワーでドッキングするところにある。この磁力の力を使ったロボットというのは、もともと玩具メーカーの発案で、商品展開を前提とした企画であったが、本作のあと『マグネロボ ガ・キーン』などシリーズ化もされた「マグネロボ」というジャンルへと発展していく。

ジーグ自体は手足のパーツを状況に応じて交換しながら闘うというマシンとしての魅力もあったわけだが、松本版のコミカライズではメカニック的な魅力については描写こそあれ言及されることはなく、あくまでも人間ドラマとして『鋼鉄ジーグ』を描ききっている。またそれこそが松本版の魅力といえるのであるが。

「冒険王」連載作品は秋田書店の「サンデーコミックス」シリーズで単行本されることが多かったが、本作はその路線に乗ることはなく98年の双葉社版が刊行されるまで忘れられた作品となっていた。

初出/秋田書店「冒険王」1975年11月号~1976年6月号

書 名/鋼鉄ジーグ
著者名/松本めぐむ(尾瀬あきら)
出版元/双葉社
判 型/A5判
定 価/1200円
シリーズ名/ACTION COMICS スーパーヒーロークラシックス
初版発行日/1998年8月16日
収録作品/鋼鉄ジーグ

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/