『大空魔竜ガイキング』表紙「うちの本棚」、今回からアニメ・特撮ドラマのコミカライズ作品を取り上げます。今週は松本めぐむによる『大空魔龍ガイキング』。

単にロボットアクションに留まらない人間ドラマが本作の魅力といえるだろう。


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『大空魔竜ガイキング』は1976年~1977年にフジテレビ系で放映された東映動画(現・東映アニメーション)のオリジナル作品で、本作は徳間書店の「テレビランド」に連載されたコミカライズ版。ほかに講談社「テレビマガジン」では森藤よしひろ、秋田書店「冒険王」には古城武司がコミカライズ版を連載していた。また朝日ソノラマの「サンコミック」からは細井雄二による書き下ろしで全2巻の単行本が出ていた。原作のクレジットは、中谷国夫、杉野昭夫、小林 檀の連名となっている。

当時のロボットアニメは単独のパイロットによる操縦(『マジンガーZ』など)から、複数の機体の合体による、数人のパイロットの操縦(『ゲッターロボ』など)に主流が移っていて、本作『大空魔竜ガイキング』では、主役ロボット自体は単独パイロットによる操縦だが、母艦となる「大空魔竜」のパイロットが複数になり、人間関係も複雑になっている。さらに本作の場合、敵として地球侵略を行うゼーラ星が、ブラックホールに飲み込まれる運命であり、地球への移住が侵略の動機となっている点で、ストーリー上も正義のありかが不確かになるという複雑さをみせている。ことに本作の松本めぐむ版ではそのあたりを構成上の要としている印象があり、低学年・幼年向けだった「テレビランド」の連載作品としては異色だったのではないかと思う。
※敵側の設定を含め、同じ東映動画の作品『レインボー戦隊ロビン』と共通したところがあり、ロビンをたたき台とした企画だったとも考えられる。

基本的にロボットアニメのコミカライズであり、主役ロボであるガイキングや母艦である大空魔竜の登場シーンも多いのだが、やはり人間ドラマの印象が強いのが松本めぐむ版の特徴と言っていいだろう。ことに7話、8話のラストシーンは、本作がただのコミカライズ作品ではないと感じさせる名シーンといっていいだろう。

とはいえ読者対照の年齢層に合わせるためか、以後のエピソードではコメディ調の展開となっている。

本作が刊行された「スーパーヒーロークラシックス」シリーズでは、カバーイラストを著者とは別の中村淳一が担当している。また本編自体も原稿の紛失などから掲載誌から版をおこしている部分もある。

書 名/大空魔龍ガイキング
著者名/松本めぐむ(尾瀬あきら)
出版元/双葉社
判 型/A5判
定 価/1200円
シリーズ名/ACTION COMICS スーパーヒーロークラシックス
初版発行日/1998年8月16日
収録作品/大空魔龍ガイキング 全12話

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/