現在、『八犬伝―東方八犬異聞―』というテレビアニメが放送されています。この作品は、あべ美幸の漫画を原作としたテレビアニメです。

主なストーリーは8つの玉を探すというもので、登場人物には犬という字が苗字に付いた者が多くいます。
帝都とか憲兵とかが登場するので、時代設定は明治時代~昭和戦前の間のどこかでしょうか。


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さて、もう既に皆さんお気付きでしょうが、本作の元ネタは曲亭馬琴の小説『南総里見八犬伝』です。同作は2013年に出版200周年という記念すべき年を迎えます。

南総というのは現在で言う千葉県の一部で、房総半島の辺り。里見は房総半島の辺りを治めていた大名です。千葉県館山市にある館山城は里見氏のお城です。

『南総里見八犬伝』の粗筋は、仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の玉をそれぞれ持ち、苗字に犬の文字が入った8人の登場人物が集結し、戦うというもの。明国の『水滸伝』の翻案であると言われています。

本稿では、数多く存在する『南総里見八犬伝』の映像作品の中から、主なものを振り返ってみたいと思います。

こちらの表は、『南総里見八犬伝』の映像作品における配役を纏めたものです。

続いて、私が特に注目した作品にコメントをしたいと思います。

――昭和29年(1954年)の映画『里見八犬伝』

この頃は、まだ月光仮面やウルトラマンといったヒーローが存在しない時代でしたが、その代わり、『笛吹童子』『紅孔雀』といった子供向け特撮ヒーロー時代劇映画が制作されていました。この『里見八犬伝』もそうした中の1種です。全5部作となっています。

――昭和48年(1973年)の人形劇『新八犬伝』

NHK総合テレビで放送された人形劇。人形を作ったのは辻村ジュサブロー。辻村は本作の後番組『真田十勇士』でも人形を作っています。また歌手の坂本九が講釈師を務めました。

――昭和53年(1978年)の映画『宇宙からのメッセージ』

何と『南総里見八犬伝』の舞台を宇宙に置き換えて映画化!宇宙に解き放たれた8個の“リアベの木の実”を入手した8人のキャラクターが集結し、“ガバナス帝国”に立ち向かうストーリーになっています。登場人物が“リアベの木の実”を投げ捨てるも再び戻ってくるなど、細かい部分では『南総里見八犬伝』を忠実に再現した描写も存在します。

――昭和58年(1983年)の映画『里見八犬伝』

原作は鎌田敏夫の『新・里見八犬伝』。スタッフ・出演者の顔触れを見ると、本篇監督・深作欣二、特撮監督・矢島信男、出演者・真田広之、千葉眞一、志穂美悦子、成田三樹夫ら『宇宙からのメッセージ』とかなり重複しています。但し『宇宙からのメッセージ』が東映のオールスター大作映画路線(『柳生一族の陰謀』『赤穂城断絶』『真田幸村の謀略』等)の1本であるのに対し、こちらの『里見八犬伝』は角川春樹によるアイドル映画路線(『ねらわれた学園』『セーラー服と機関銃』『探偵物語』『時をかける少女』等)の1本となっています。

――昭和61年(1986年)のテレビアニメ『ドラゴンボール』

原作は鳥山明の漫画。今年、新作のアニメ映画も制作されましたね。本作における7つの玉(ドラゴンボール)を集めるというプロットの元ネタが『南総里見八犬伝』です。

――平成18年(2006年)のテレビドラマ『里見八犬伝』

東京放送開局50周年記念スペシャルドラマ。本作で伏姫(演・仲間由紀恵)と結婚する犬・八房を演じている犬はカイくん。カイくんは、ソフトバンクのコマーシャルでお父さんを演じている犬でもあります。つまりソフトバンクのコマーシャルでも『里見八犬伝』でも人間と結婚した犬なのだ!

――平成24年(2011年)のアニメ映画『伏 鉄砲娘の捕物帳』

文藝春秋創立90周年記念作品で、桜庭一樹の『伏 贋作・里見八犬伝』が原作。人間の魂を食べて生きる獣人と、その獣人を追う猟師を描いたストーリーですが、劇中に『南総里見八犬伝』の原作者・曲亭馬琴(声・桂歌丸)が登場し、『南総里見八犬伝』の芝居も上演されています。そして、馬琴が『南総里見八犬伝』執筆にかけた思いを吐露するのでした……。

尚、東京都から千葉県にかけて走る鉄道・京成電鉄は、本作の公開当時、本作のスタンプラリーを開催したり、ラッピング電車を運行したりしました。

『南総里見八犬伝』はこれからも、日本の映像作品に影響を与え続けることでしょう……。

(文:コートク)