『人生オワタ\(^o^)/の大冒険』『ロッコちゃん』開発者のキング氏インタビュー(後編)『人生オワタ\(^o^)/の大冒険』『ロッコちゃん』開発者のキング氏インタビュー。とうとう「孔明の罠」に言及。後編です。


【関連:『人生オワタ\(^o^)/の大冒険』『ロッコちゃん』開発者のキング氏インタビュー(前編)】
 

――『ロッコちゃん』のサウンドトラックアルバムはどのような経緯で作られたのでしょうか?

公開して何ヶ月か経ったぐらいに海外よりジェリアスカさんという方から「インタビューしたいんですけどスカイプで話させていただいてもよろしいですか?」というメールがきまして。
ちょっと不安ながらも承諾して1時間ぐらいインタビューを受けたのですが、その中で「ロッコちゃんのサウンドアルバムを作りたいのですがよろしいですか?」という話になったんです。
本当にそんな事が出来るのかと思いつつも、もし出来るのであればという事でお頼みする事にしました。

すると、日本国内から海外まで、チップチューンで名を馳せている人達をどんどん集めてくださって……。
後々になって調べてみると、そのジェリアスカさんは日本にも結構来られている人で、国内のコンシューマーゲームの作曲者の方々にもインタビューしてるような人だった事を知って驚きました(笑)

僕自身も作曲のASAGENさんやCDのパッケージのデザインをデザイナーのAさんにお願いしたりと簡単な取次ぎ程度のことはやったのですが、アレンジ曲を作ってくださる方々との交渉は全部ジェリアスカさんは進めてくださり、あれよあれよという内に完成まで漕ぎ着けました。

それで最終的に曲が集まり、いよいよCDを作ろうという段階になった時に、海外で募金を募ってお金が集まったらそのプロジェクトを実行するというkickstarterというサイトがありまして。
募金してくださった額に応じてお返しをするというそういう仕組みのところなのですが、ジェリアスカさんの提案でそこで募金を募ることにしたんです。
僕は仕組みがよくわかっておらずにそこも全部ジェリアスカさんにお願いしたのですが、彼が設定した期間は一週間で8000ドルという結構厳しいものでした。
ほんとにそんなに集まるのだろうか、と思っていたのですが、蓋を開けてみれば国内外問わず多くの人が協力してくださり、1万2000ドル近くという想像以上のお金が集まってくれました。
そうして出来上がったのがあのサウンドトラックです。

自分の作ったゲームのサウンドアルバムなんていうのはほんとに夢のような話だったので、思わぬ形で夢が叶ってしまったという感じでほんとに嬉しかったです。
突然のお願いにも関わらず快く協力してくださった皆さんには本当に感謝しています。

(参考リンク:実際のkickstarterで募金を募ったページ)
http://www.kickstarter.com/projects/jeriaska/nubuwo-summer-bundle-music-inspired-by-videogames

――『人生オワタ\(^o^)/の大冒険』には、『ロックマン』や『スーパーマリオ』のテイストもあると思うのですが、ご自身のゲーム制作のルーツってなんでしょうか?

そうですね……僕ってプレステ以降のゲームってあんまりやってなくて。
プレステ全盛期の頃もファミコンとかゲームボーイ、スーパーファミコンとかそういった古いゲームばかりやっていたんです。
どうにも3Dのゲームって性に合わなくて(笑)
なので、自分で遊ぶにしても作るにしても、やはりそういったレトロゲーム調になってしまうんだと思います。

――『人生オワタ\(^o^)/の大冒険』は二次創作ではあるんですけど(2ちゃんねるのキャラクターの)、オリジナルでも大丈夫だったような気もするんです。二次創作にこだわるっていうのはどうしてなんでしょうか?

元々僕がゲームを作り始めるきっかけが、「今までにない新しいゲームを作りたい」っていうよりも、「自分が昔好きだったゲームを自分の手で作りたい」だったんです。
なので、はからずともああいう二次創作みたいな感じになってしまったという感じですね。

今まで自分でゲームをやっていて、ここをこうしたらいいのにとか、あそこがこうだったらいいのになっていうのが結構あって。
実際にそれを実現するために作り始めたってところもあるので。

これから先も出来れば新しいのを作りたいとは思いますが、あの頃に好きだったゲームになんとなく似てるって感じになりそうな気がします(笑)

――『人生オワタ\(^o^)/の大冒険』は、例えば、「シャキーン」という決めポーズがあったり。最初に、たいていの人は、バスターを撃つと看板に当たって跳ね返ってきて死んでしまうという(笑)ような発想はどこからきたのですか?

ゲームにおいてこれやったらこうなるかもなーっていうところに、実際に何か反応があったら面白いじゃないですか。
例えば、この壁こわしたら通れるんじゃないかとか、ここ調べたら何か隠しアイテムがあるんじゃないかとか。
隠しボタンによるリアクションなんかもそういう理由でつけましたね。
「シャキーン」とか特に意味は無いんですけど、ああいうの自分で見つけたらなんか嬉しいじゃないですか(笑)

罠や仕掛けも同じ発想を元に作っていて、そういうのを逆手にとって自分がプレイヤーになったらどういう動きをするかを想定して、そこにちょうど合わせるように罠や仕掛けとかを仕掛けたんです。
結果的に理不尽なゲームと呼ばれる事になったわけですが……。

――例えば、針天国のところがあって。あそこはどうしようもなくて(笑)オワタのポーズをして飛び降りるしかないんですけど。

あそこに来る頃にはプレイヤーはもうこれ絶対に罠だろうな、と理解してるはずなんですよね。
それでも気になって引っかかってしまう。
普通初見殺しな罠っていうのは引っかかると理不尽さに凄いイライラするんですよね。
でもオワタの場合はもう罠があること前提になっているおかげで、
本来イライラするような初見殺しを逆に楽しめる、そんな作りになったんだと思います。

――「あなたはラッキーだ」みたいにウインドウに書いてるじゃないですか。それをクリックすると、「えーっ!?」みたいな。せっかくここまで来たのにみたいな。
そういうイタズラ心みたいなものをすごく感じる罠もありますよね。

そうですね。ひたすら何やっても死ぬという感じで。

――とにかくオワタが弱くて一発で死んじゃいますからね。

言ってみればそれを楽しむゲームなんで(笑)

――オワタは一応、マルチエンドになっていますよね。

あれは最初から想定していたわけではなく、継ぎ足し継ぎ足してやってきたので……。
収集が付かなくなったのでああいう形になってしまったという感じです。
世界の果てまで行ってまたそこから戻ってくるのも面倒ですし、もうそれぞれのルートを独立させてしまおうと思って仕上げた結果、マルチエンドになってしまったわけです。

――すごい面白いゲームで、やりごたえもあったんですけど。

いや、ほんとありがとうございます。

――『ロッコちゃん』は、今度はチームで制作されたということで。グラフィックが綺麗になって、音楽がついてという形になってるのですが。こちらは、なんか、好きな絵とかキャラクターとかありますか?
絵本から飛び出してきたような可愛い背景であるとか。キャラクターもすごく可愛いですが。

そうですね、個人的にお気に入りなのはマッドステージの最初のステージに出てくる姉妹のボスですね。
実際にプレイしてくれた方々からも結構好かれているようで嬉しいです。

ロッコちゃんのキャラクターとかはお絵かきチャットにみんなで集まってアイデアを出し合っていたのですが、あの姉妹も僕がイメージと動きを伝えたらデザイナーの人がそれに沿うような形で作ってくれまして。
そういった風にみんなで作りあげた感じなので、言ってみたらどのキャラもそれぞれ愛着はありますね。

ロッコちゃん設定資料 ロッコちゃん設定資料

――『ロッコちゃん』は裏設定があるんですよね。亡くなった少女をロボットに……。

ストーリー設定は製作中にも考えていたのですが、結果的に『鉄腕アトム』と『ロックマン』を足して割ったような感じになってしまいましたね(笑)
どちらも好きなのですが、そこから影響を受けた上で世界観と合わせたら自然とああいうストーリーに落ち着きました。

――いわれてみればそうですね。『ロッコちゃん』の場合は、ツワモノも多いじゃないですか。オワタモードとか。バスターだけとか。そういうモードがあるじゃないですか。
それで、例えば20分台でクリアする人がいるという……。

そうですね、デバッグに協力してくれた人達の中はロックマンのプロというか、タイムアタックで世界記録に近いようなタイムを叩き出すような人達ばかりでして。
そういう人達からも意見を聞いて、何度も遊べるように縛り実績やクリア後のお楽しみをつけました。
ちなみにランキングトップの人もその中の知り合いの内のひとりだったりします(笑)

――オープニングとエンディングのムービーもドッターの方が全部描かれたんですか?

そうです。オープニングのアニメーションなんかは最初想定していなったのですが、僕が2ヶ月くらい体調を崩して寝込んでいる時があったのですが、その時にドッターのAさんが「やることがなかったから」というノリで作ってくれてて。
僕も初めて見せて貰った時は驚きました。
ステージクリア時のアニメーションなんかも彼が作ってくれたのですが、ほんと感動ものですよね。
そのおかげもあって始まりと終わりのクオリティはかなり上がって、締りのある仕上がりになったと思っています。

――ご自身がアイデアを提案されたところは?

ゲームシステムやステージ構成、敵の動きやデザインなど、全体をちょっとずつという感じです。
最終的な決定や、おおまかなアイデアなんかは僕がしていたのですが、敵キャラのデザインやステージの構成のアイデアはデザイナーの方々も進んで提案してくれて
僕がそれを元に構成していったという感じです。

――おすすめのステージはありますか?

ギミックには結構拘ったので、風の浮き上がるジェットマンステージ、ツタを伝って進むフォレストマンステージ、電気が消えたり床を回して進んだりするライトニングステージなど、仕掛けのあるステージ全般が気に入ってます。

――近況、告知を教えてください。

おかげさまで会社には勤められたのですが、最近仕事が忙しくてなかなか創作が出来ておらず、残念ながら報告出来ることは何も……。

――去年を振り返ってみていかがですか?

去年は関東に来たおかげで人との繋がりの広がった年でした。
ロッコちゃんのおかげで尊敬していたFlasherの方々や、チップチューン界隈の方々、制作に協力してくださった方々など様々な方達にお会いすることが出来ました。
今年はそういった人達と協力してまた面白いことが出来たら、と思っています。

――今年はどういう年にしたいですか?

今年は……そうですね。
去年は本当に仕事ばかりにかまけていてなかなか自分の作りたいものが作れていなかったので、今年は仕事しながらにせよ時間を作って、何かしら新しいのを作って公開出来たらと思っています。

――お忙しいところ、ありがとうございました。

【プロフィール】
キング:フリーFLASHゲームの名作の『人生オワタ\(^o^)/の大冒険』や、大作『ロッコちゃん』の開発者として広く認知されている。また、海外のPCゲーム『I WANNA BE THE GUY』の開発者が『人生オワタ\(^o^)/の大冒険』から影響を受けたと公言している。

【リリース情報】
アルバム
『Rokko Chan Soundtracks』
http://rokkochan.bandcamp.com/

【オフィシャルサイト】
「王の巣窟」
http://king-soukutu.com/index.html

【ブログ】
http://king75.blog53.fc2.com/

(インタビュー:川上竜之介)