毎度駅弁を包んでいる紐のような話題をお送りしております「無所可用、安所困苦哉」でございます。今回はかなり私的になりますが、地味で些細でつまらないけど譲れないコダワリ「ウェスタンギア」についてのおはなしをお送りいたします。


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1)ジーンズはブーツカット

ジーンズはブーツカット派です。少数派閥です。ですが実はブーツ(カウボーイブーツ)を手に入れたのは近年になってからだったりします。ブーツ履いてなかったのにブーツカット派なのは、脚にぴったりくっつくパンツ・ズボンは苦手だからです。
特にジーンズのような重くて堅いもの(最初から柔らかいジーンズなど論外!)は、ある程度ゆとりをもって穿きたいのです。

Cinchブーツカットジーンズ

ブーツカットに出会ったのはリーバイス517が最初でした。まだ中学生くらいの頃、さすがに丈が短くなったから自分で買ってこいと母親からお金をいただき、ジーンズを買いに行ったわけです。
しかし501のボタンフライはちと苦手(当時)。さらに流行していて何種類もあったスリムフィットは前述のとおり大嫌いでしたので、お店でう~んと考えておりました。この時行ったお店は実家のある横浜最東部ではめずらしいジーンズ専門店、各社のジーンズがありました。どの棚もプラスチックのプレートで商品紹介がされている中、棚の外に積み上げられたジーンズに、ダンボールに手書きで「リーバイス517 ブーツカット」と書かれているものがありました。
ブーツカットってどんなのですか?とお店の人に聞いてみると、裾が少し広がっていて、ブーツが入るようになっています、と、裾と膝あたりの幅の違いを見せて下さいました。ブーツを履く予定なんてありませんが、裾が広がっているのは好みです。ということで試着。いい感じの履き心地で、裾をカットする必要もなく、これに決定となりました。
その後かなり長い期間、買うのは必ず517でした。しかしある日会社の大先輩から「ブーツカットならLeeの方がいい」と言われ、Lee102も買ってみました。確かにこれもいい。リーバイスとは若干色が違います。ゴワゴワと堅いのも気に入りました。

そしてここ数年。ついにジーンズを個人輸入し始めました。日本では手に入らないらしいCinchというメーカーのものは、色合い・風合いが絶妙です。ただ残念ながらちょっと柔らかい。

ARIATというブーツメーカーのジーンズも買ってみました。初めてのブーツをARIATにしたということで。こちらは風合いはCinchに及びませんが、ブーツメーカーのブーツカットだけあってブーツとのフィット感はなかなかです。
これらアメリカのジーンズはメキシコ製かコロンビア製。もうMade in USAは作られていないのが残念ですが、まぁ安い。送料かけてもジーンズ2本で日本では1本分の値段です。またウェストと長さの両方を指定して買うので、裾上げもありません。ちなみに同じ長さを指定しているのにCinchよりもARIATのほうがかなり短いです。

2)じゃあブーツだ

そして念願のカウボーイブーツも購入。これでブーツカットが本領発揮です。
ブーツカットは、元々はカウボーイが乗馬用のブーツを履くときに、ブーツをジーンズの裾に入れるために生まれたものです。カウボーイブーツは、いろいろと装飾がついていますが、ジーンズの中に入れるのが正当。スリムフィットジーンズでブーツの中に入れるなどというのはスピリットに反します(笑)。
カウボーイブーツを探してみると、これがまた実に種類が多い。良く使うアメリカのネットショップでも、ものすごい数のブーツを揃えています。馬に乗るために爪先が尖った本格的な物が多く、さらに彩色や模様も非常に多種多様です。そしてしょっちゅうセールをするので安いのです。
初めて……ということでどちらかと言うとワークブーツに近い、短めで比較的地味なものを選んで買ってみました。

ところが、大きな伏兵が。
「関税」です。
革製の靴にかかる関税がものすごい率だったのです。結局、送料、関税、消費税を入れると、元の値段の倍以上に。ブーツの輸入には要注意です。
しかし、それにもめげず、もう一足、カウボーイブーツを輸入しました。これは本当のカウボーイのブーツですよ。

3)なによりカウボーイハットだ

リアルにお会いしたことのある方にはすでにお馴染みカウボーイハット。実際にはブーツよりも先にハットを入手しております。
実はカウボーイハットは元々大好きなのです。しかし売っている店がなく、たまにあっても気に入ったものがなく、あきらめ気味だったのですが、前述のアメリカの通販サイトを発見してから思い切って購入しました。
フェルトとストロー(パナマ草)があり、フェルトには材質と階級があります。最高級品はビーバーフェルト。これは高くて手が出ません。とりあえず買ってみたのはそれっぽくて安価なバッファローフェルトのもの。服の色をあまり選ばないブラウンで合わせやすく、使いやすいです。しかし使いやすいといってもその外見上相当目立ち、視線を感じる帽子なので、それなりに一種の覚悟が必要です。あと風で飛ばされやすいです。なんでカウボーイはこんなのかぶって馬で走れるのだろうと思ってしまいます。

そのうちちょっと良いものも欲しくなり、思い切って400ドルを超えるものを買ってみました。なんと受注生産品。
これがもう、期待通りのすばらしい出来で、手触り、かぶり心地とも見事でした。なるほど良い物は良いです。手入れ用にハットブラシも調達してしまいました。

夏用にはストローのハットも買いました。ストローハットはバリエーションが少なく面白みに欠けます。また最近はペーパーストローという紙製のものが多く、本パナマのものは少なくなって来ているようです。もちろん本パナマのものを買いました。
これら購入したカウボーイハットはすべて米国ステットソン社のもの。メイドインUSAです。ステットソンといえばハットの代名詞というほどの名工房。ここはこだわってみました。
しかし、嫁さんには、なんでこんなに帽子を買うんだと批難をあびています……
ちなみに、まだ街中で同じようなカウボーイハットをかぶっている人をみたことは、日本人ではまったくありません。とあるスタバの店内にいた本場アメリカ人とおぼしきお一人がかぶっておられました。
ところで、カウボーイハットをかぶっている時の難点の一つが、電車で座席に座って背もたれによりかかることができないこと。帽子のブリム(縁)が背もたれに当たるのです。此処は見栄で背筋を伸ばしています。
ワタシがカウボーイハットをかぶっている時は、冬場はちゃんとブーツ&ブーツカットのジーンズにして、カウボーイっぽくしていますよ(夏場は蒸れるので下駄履いてますが)。

4)ウェアはどうする?

本場アメリカではスーツにカウボーイハットもアリみたいですが、ポール・スミスファンのワタシの服には、どうしても英国テイストなものが多く、どうにも合いません。なので、これまたぽつぽつと輸入してみました。
形だけウェスタンな無地のもの、大きなプリントがされているもの、飾り生地のもの、ウェスタン風ジャケットなどを取り寄せてみましたが、よく見ないで買ってみたら、シャツ2点以外は全部化学繊維。ポリエステルとレーヨンです。安いなぁとは思ったのですが、通りで安いわけです。シャツはコットンだろうというのは勝手な思い込みであったと思い知らされました。買っちゃったものはしょうがないので着ていますけど。

あとは本当に乗馬できたらいいんですが、これが一番ハードル高いですねぇ(笑)。

まぁそんなウェスタンファションですが、カウボーイハットやブーツはもうほとんど一種の中二病ですね。なんか違う格好したいという。ブーツなんかはブーツカットジーンズの中に入ってしまうので外から見えないのですから、完全に自己満足です。そういうところにこだわっている自分を楽しんでいるわけですね。

(文・写真:エドガー)