「うちの本棚」、今回は園田光慶が貸本作品を手がけていた時期に、ありかわ・栄一名義で描き下ろした『挑戦資格』をご紹介します。設定の隅々に、のちに『ターゲット』で描かれたものの下地を見ることのできる作品です。


本作は、園田光慶が貸本作品を手がけていた時代に、ありかわ・栄一名義で発表したもの。本作を制作中に「少年キング」で『車大作』を連載し、雑誌にも進出することになり、結果的に1960年後半から描き下ろしを続けてきた貸本劇画の「ハードボイルド傑作集」シリーズを本作で終了することになったようだ。ちなみにこのシリーズは全26巻におよぶ。

本作の冒頭で、主人公は記憶をなくしており、バーで知り合った猪又という老人の紹介でやくざが経営するクラブの用心棒となり、マシンガンの名手アゴの銀次と出会う。少しずつ記憶を取り戻していく主人公は、自分が早乙女 豪という名であったこと、アフリカから、現地で捕らわれている父を助けるため、人を集めるため日本に戻ってきたことなどを思い出していくが、やくざ同士の抗争のため、雇い主であった佐伯が殺され、アフリカへ戻る前に佐伯の仇を討つことになる。その間、怪力とブーメランのむっつりの牛や身軽さと爆発物を得意とする手品師の狂といったメンバーたちとも知り合い、ともにアフリカを目指すことになる。

そう、のちに描かれる『ターゲット』が、まずアフリカを舞台にしていた下地がここにあったのだ。

当初は反白人グループと考えられていたルムンバ団だったが(父も彼らに捕らわれている、と豪も信じている)、実は彼らは白人のグループであり、世界征服を企む集団だった。
豪の父などがアフリカで掘りあてようとしていた金を資金に、細菌爆弾などを製造し、世界征服に向けた計画を進めていたのだ。このあたりの設定も『ターゲット』に通じるところだろう。実際『ターゲット』はこの『挑戦資格』を別の形で描いたものだったのかもしれない。

タイトルの印象だと、主人公が何かに挑戦するために次々にハードルを超えていくようなストーリーを想像するが、実際のところあまり的確なタイトルではなかったようにも思える。ストーリーの基本は主人公の、父の奪還(途中で死んだという噂を聞き復讐へと目的は変わるが)であり、ルムンバ団の正体が明かされるのも、主人公が仲間と離れているときに、仲間たちが知るという設定で、ルムンバ団に対する挑戦という形もあまり的確ではない。そしてそこに「資格」が必要になるわけでもない。

また作画面では、中盤以降は気合も感じるが第一部あたりは貸本劇画らしいといってしまうと語弊があるかもしれないが、流して描いているような印象も否めない。描き込みも『アイアン・マッスル』ほど描き込まれていない印象であった。

ただ、ストーリー展開は先を予想できないもので、どんどん読みたくなる勢いのあるものだ。

貸本劇画として刊行され、その後は再刊行の機会もなく埋もれていたが、パンローリングのマンガショップシリーズで再刊行され、再び読むことができるようになった。貸本で読んだことのある読者だけではなく、貸本を知らない世代の読者にも一読を薦めたい。

初出/東京トップ社(1962~1963年描き下ろし)
書誌/東京トップ社・ハードボイルド傑作集(全9巻)
パンローリング・マンガショップシリーズ(全3巻)

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/