【うちの本棚】第百十七回 喪服紳士録/園田光慶「うちの本棚」、今回は園田光慶の単行本の中でもレアな印象の強い『喪服紳士録』をご紹介します。園田光慶が青年マンガ誌に進出した最初の作品でもあり、ストーリー・画ともにバランの取れた秀作です。


本作『喪服紳士録』は、園田光慶が1968年に「ヤングコミック(少年画報社)」に連載した作品で、青年マンガ誌に進出した最初の作品でもある。

青年コミック誌は、青林堂の「ガロ」に端を発して、貸本劇画作家を多く起用した、少年マンガ誌とは一線を画す存在として創刊され、小学館の「ビックコミック」、少年画報社の「ヤングコミック」、双葉社の「漫画アクション」、日本文芸社の「漫画ゴラク」とその数が増えていった。もともと少年漫画という小中学生が主な読者対象だった週刊マンガ誌よりも上の世代に向けて描かれていたきらいのある貸本劇画の作家を積極的に起用していったのは当然のことだろうが、本作でも園田作品の雰囲気は貸本作品時代の意気込みが感じられる。
「喪服紳士録」とは、殺人請負業、つまり殺し屋のリストである。本作はそういった殺し屋を主人公にした連作になっていて、それぞれ読みきり作品としても楽しめる。唯一「完全紳士」と呼ばれる主人公だけが2度登場している。

また本作では『アイアン・マッスル』で見せたような派手なアクションは抑え気味で、むしろストーリーに凝った作品という印象が強い。殺し屋そのものに関するストーリーもあり、請け負った仕事に関してのストーリーもあり、少年漫画ではなかなか扱えなかったテーマやストーリー展開を思う存分試しているという雰囲気すらある。

正直、園田作品はそれ程の数を読んでいないのだが、本作は個人的に園田光慶のベスト作品という印象がある。絵的にもストーリー的にもバランスの取れた作品といってもいいかもしれない。

ちなみに、本作品の単行本は現在のところこの若木書房の「コミックメイト」版しかない(貸本時代に本作の元となった『喪服紳士録』及び『完全紳士』という作品があるが、本書に収録されたものとは別物)。個人的な印象として非常にレアな単行本であり、もし見つけることがあったら迷わず入手すべきと思う。

書 名/喪服紳士録
著者名/園田光慶
出版元/若木書房
判 型/新書判
定 価/240円
シリーズ名/コミックメイト
初版発行日/昭和46年7月15日
収録作品/喪服紳士録・全9話

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/