こんにちは。のんびり、まったりとしたペースで、現在のおたく表現に関するルーツ等に考察を加える、咲村珠樹の「おたく温故知新」、今回は競馬のお話です。


UAE(アラブ首長国連邦)ドバイのメイダン競馬場で行われる世界最高賞金レース、ドバイワールドカップ(G1)を中心に、1日で6つのG1レースが行われる競馬の祭典、ドバイミーティング。3Rのドバイゴールドカップ(G3)ではレース中のアクシデントでレースが中止され、メイン(9R)のドバイワールドカップ終了後に再レースとなったり、昨年日本馬がワン・ツーしたドバイワールドカップは地元UAE勢のワン・ツーとなるなど、様々な話題がありました。史上最多の7頭が遠征した日本馬は、全て着外(ドバイワールドカップ、エイシンフラッシュの6着が最高)と残念な結果となりましたが、その興奮もさめやらぬ中、いよいよ今週末の桜花賞から国内クラシックシーズンの開幕です。昨年は破天荒な三冠馬オルフェーブルが誕生しましたが、今年はどんな結果が待っているのでしょう。牡牝とも絶対的な候補が前哨戦で負け、群雄割拠の様相を呈していますね。

ところでここ数年、アニメやまんがに登場するキャラの名前を持つ競走馬が目立ってきているのをご存知でしょうか?

最近話題になったところでは、2月のアーリントンカップ(GIII)に『銀魂』に登場する謎のキャラと同じ名前のジャスタウェイ(牡・栗東・須貝尚介厩舎)という馬が勝利しましたね。この馬、アニメ『銀魂』のシナリオライターである大和屋暁さんの所有馬なので、ネットでも「シナリオライターってそんなに儲かるのか」なんて話にもなっていました。この馬はクラシック路線には進まず、今週のニュージーランドトロフィー(GII)をステップに、5月のNHKマイルカップ(GI)を目指すようですね。

このテのアニメやまんがのキャラから命名された競走馬ですが、古くは1970年代にまんが家の川崎のぼるさんが所有していた、ダイザエモン辺りがはしりとされます。自身の代表作『いなかっぺ大将』の主人公ですね。しかしまぁ、これはジャスタウェイ同様、自分の作品から命名するという意味では「おたく的」とは言えません。

おたく的というか、好きなアニメ作品などから馬名を命名する……という流れは、1990年代に本格的なものが現れました。1991年にデビューしたエイシンモモ(牝・栗東・湯浅三郎厩舎)と1992年にデビューしたエイシンミンキー(牝・栗東・坂口正大厩舎)。これは2頭合わせて「ミンキーモモ」になる手の込んだものでした。馬主の平井豊光さんはおもちゃ会社を経営しており、そういった関係で当時放映中のアニメ作品(第2作の海モモ)から馬名を付けたものと思われます。

またこの当時、大ヒットしていたアニメが『美少女戦士セーラームーン』。こちらからも1993年にタキシードムーン(牡・美浦・和田正道厩舎)、1995年にセーラージュピター(牝・栗東・土門一美厩舎)がデビューして、アニメファンの一部で話題になりました。

こういったアニメ系の名前を持つ馬の中で、最も出世した馬といえばテイエムプリキュア(牝・栗東・五十嵐忠男厩舎)です。2歳時(2005年)にGI、阪神ジュベナイルフィリーズに人気薄で勝ち、驚かれたと同時に馬名のインパクトで一気に有名になりました。ちなみにこれは、馬主である竹園正継さん(GI7勝のテイエムオペラオーなどで知られる)が、幼かったお孫さんのリクエストで命名したそうです。牝馬ながら息の長い競走生活を送り、現役後半は「長距離の逃げ馬」として6歳で日経新春杯(GII)を勝ったり、エリザベス女王杯(GI)でクィーンスプマンテの2着に入るなどしました。どちらも高配当だったので、覚えている方も多いでしょう。

さて、ここからは現役、および昨年まで走っていた馬をご紹介。

現役馬でよく知られているのが、やはり『機動戦士ガンダム』のシャア(牡・栗東・田島良保厩舎)でしょう。現在オープンで、ダートの1600・1800メートル戦を中心に使われています。厩舎側も「判って」いて、出走する際には赤い覆面(メンコ)を装着しています。名前から結構人気したりもするのですが、オープン入りしてからは苦戦続きで、馬券的には「当たらなければどうということはない」といった感じ。それでも馬券を買ってはずし、ひとり「認めたくないものだな……」とか「私もよくよく運のない……」などと後悔するのも一興かもしれません。

シャアがいるならアムロは……というと、JRA(中央競馬)ではありませんが、東海公営・名古屋にアムロ(牡・川西毅厩舎)がいます。どちらもオープンクラスなので、いずれダートの交流競走で「シャア対アムロ」が見られないかと、ちょっと期待しています。もし実現したら「見せてもらおうか、公営の馬の実力とやらを!」とかいう架空実況が成立しそうですね。

ガンダムの場合はメジャーなのか「ガンダム」がついているだけでも現役でエーティーガンダム(牡・栗東・湯窪幸雄厩舎)とヒシガンダム(牡・美浦・牧光二厩舎)と2頭。そしてジークジオン(牡・栗東・加用正厩舎)とかビームライフル(牡・栗東・須貝尚介厩舎)なんてものまで。

また『涼宮ハルヒの憂鬱』からはミクル(牝・美浦・矢野誠一厩舎)が昨年まで現役でした。一応JRAに申請された馬名の由来には「未来」と書いてあるのですが、これはやっぱり朝比奈みくるの名前の元ネタとも噂されますし、由来はハルヒだと思うのですが……詳細はやはり「禁則事項」なのかもしれません。

他には『天元突破グレンラガン』からテンゲントッパ(牡・美浦・岩戸孝樹厩舎)、『魔法の妖精ペルシャ』からクルクルリンクル(牝・栗東・須貝尚介厩舎)など。クルクルリンクルは、シリーズ前半(31話まで)でペルシャが変身に使っていたバトンですね。この2頭の場合、ちゃんとJRAに申請した馬名の由来に「天元突破」「アニメに登場するアイテム名」と堂々と書かれていて、ある種清々しいものを感じます。

『コードギアス 反逆のルルーシュ』からはルルーシュ(牡・美浦・藤沢和雄厩舎)という馬がいるのですが、残念ながらC.C.と契約してギアスを手に入れる前のようで、体力勝負が苦手なようです。昨年1月に2勝目を挙げて以降、1年以上の休養を経て3月31日の阪神12Rで復帰(1番人気)したのですが、勝負どころで先行馬の走行妨害を受けて3着でした。『R2』第12話のように、咲世子の身代わりが実現できれば、すごいパフォーマンスが期待できそうですが……。

競馬場で目につくのは、馬名だけではありません。下見所(パドック)で騎手や馬を応援する横断幕にも「おたくネタ」が見受けられます。代表的な例が、おたく(特に『けいおん!』の律ファン)で知られる小島太一騎手(美浦・小島太厩舎)ですね。先日も公開間もない『ストライクウィッチーズ劇場版』を観に行ったそうですが、その趣味を反映して『けいおん!』ロゴ風の横断幕が掲示されていたことがあります。

『けいおん!』ネタは馬にも。オールアズワン(牡・栗東・領家政蔵厩舎)はオール「あず」ワンということからか、『けいおん!』のあずにゃん(中野梓)の名台詞「やってやるです!」がモチーフになった横断幕が作られていました。

……という具合に、競馬にもかなり「おたく」な要素が進出しています。今まで興味のなかった方も、アニメやまんがを切り口に競馬をご覧になってみてはいかがでしょうか。ちなみに、現役馬と2000年以降にJRAの登録を抹消した馬に関しては、JRAのサイトで馬名検索ができ、馬名申請時に記入された「馬名の意味」が判るようになっています。今回ご紹介した馬はごく一部ですので、ぜひ「おたく馬名」を検索してみることをお薦めします。

JRA(日本中央競馬会)馬名検索ページ
http://jra.jp/datafile/

(文・写真:咲村珠樹)