皆さん、こんにちは。今回は、作品を横断する形で2011年のアニメ界の動きを俯瞰し、その特徴を指摘したいと思います。

全部で3個の項目に分けて論評致しますので、宜しくお付き合い戴ければ幸いです。


☆2010年に引き続きアニメ映画の多さ
2010年に引き続き、2011年も大量のアニメ映画が公開され、同時に2012年公開予定のアニメ映画の制作が大量に発表されるなどしました。
2011年公開のアニメ映画のうち、毎年恒例の子供向けテレビアニメの劇場版シリーズ(『ドラえもん』『アンパンマン』『クレヨンしんちゃん』『名探偵コナン』『ポケモン』『プリキュア』等)は昭和40年代の東映まんがまつりや東宝チャンピオンまつりから続く日本アニメ界の伝統ですので本稿では割愛するとして、ヲタク向けアニメ映画には2種類があります。
1つはテレビアニメの劇場版、もう1つは上映時間が1時間程度の中篇連作映画です。これら2種類のアニメ映画は2010年においても量産されており、2011年の情勢は2010年の延長線上にあります。これら2種類に当てはまらないヲタク向けアニメ映画は非常に少ない。実写映画界においては2000年頃からテレビドラマの映画化が非常に多くなっており、テレビアニメの映画化はこの流れに呼応するものと見てよいでしょう。また、2010年公開のヲタク向けアニメ映画は小規模上映の映画が多かったのに対し、2011年は小規模上映の映画も多かったけれども一方で『けいおん!』137館、『とある飛空士への追憶』91館、『鋼の錬金術師』90館と、2010年公開のヲタク向けアニメ映画よりもロードショー館数の多い映画が出現しています。この他、2010年のアニメ映画界においてはリピーターキャンペーン等の商法により1人の客からの興行収入を増やす商法が盛んに行われましたが、2011年はこのような商法を実施する映画は減少しました。しかし2011年には、たった1本の映画だけで2010年のアニメ映画が束になってかかっても敵わないような商法を実施した作品が出現しました。『けいおん!』であります。
『けいおん!』商法の全貌をお知りになりたい方は公式ホームページをご覧戴くとして、ここでは顕著な点のみを指摘します。『けいおん!』の前売り券には、主要なものだけで以下のものがありました。

▼『けいおん!』前売り券一例
・特製5枚組鑑賞券6500円
・お面5種&スーパーマルチクロスセット付き劇場前売券5775円
・CDジャケットサイズ圧縮Tシャツ付き劇場前売券4450円
・トースター付き劇場前売券6550円…他多数

そしてリピーターキャンペーンについては、入場券の半券3枚ごとにフィルムをプレゼントするキャンペーンが実施されたのですが、半券を貼り付けるリピートポイントシートは何と24箇所も欄があるのでした……。

☆ご当地アニメの多さ
アニメの舞台として実在の町並みを登場させ、町興しに利用する手法は数年前から盛んに行われています。このような手法の大本を辿れば、実写映画のフィルム・コミッションに行きつくでしょう。書籍『映像コンテンツ産業論』(菅谷実/中村清・編著、平成14年、丸善発行)にはフィルム・コミッションについて次のように書かれています。
「2000年は、日本のフィルム・コミッション元年である。(略)同省(引用者註・国土交通省)の総合政策局観光部は、地域の観光振興の延長線にこの活動を位置づけ支援をしているが、(略)映画振興という観点からの支援ではない。(略)フィルム・コミッションの設立母体は地方自治体、商工会議所、観光コンベンション・ビューロー等(以下略)」
アニメで町興ししている団体も基本的には上記の通りで、アニメのタイトルクレジットでは地方自治体や観光協会、商店街等が協力としてクレジットされています。2011年の主なご当地アニメは以下の通り。

▼2011年の主要なご当地アニメ
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』…埼玉県秩父市
『花咲くいろは』…石川県
『セイクリッドセブン』…神奈川県鎌倉市
『神様ドォルズ』…茨城県大子町
『たまゆら〜hitotose〜」』…広島県竹原市、神奈川県横須賀市
『コクリコ坂から』…神奈川県横浜市

☆アニメ界流行語大賞
2011年のアニメ発祥のフレーズのうち、ネット上で流行したものを取り上げます。

まず幾多の流行語を生んだ作品が『魔法少女まどか☆マギカ』です。「僕と契約して魔法少女になってよ!」は、「僕と○○して○○になってよ!」という具合に改変され、ネット上のみならず現実世界の店でも盛んに使われました。同番組は他にも流行語を連発し、挙げればキリがありませんがここでは「わけがわからないよ」「こんなの絶対おかしいよ」の2つを挙げておきます。「こんなの絶対おかしいよ」という台詞は『LASTEXILE 銀翼のファム』第10話「Illegal move」にも登場しました。

次に『TIGER&BUNNY』より「ありがとう、そしてありがとう」ネット上ではお礼を述べる時に用いられた他、「ありがとう」以外にも同じ言葉を2回繰り返す言い回し(例、「乙、そして乙」)として用いられました。また、日本郵政グループホームページの「郵便年賀.jp」というページにおける「しんねんことばテンプレート」というコーナーでも「ありがとう、そしてありがとう」という挨拶が紹介されています。

3つ目は『ロウきゅーぶ!』より「まったく、小学生は最高だぜ!!」これは、バスケットボールに取り組む小学生が技能を吸収するスピード、成長するスピードが早いことを称賛する台詞なのですが、ネット上では誤解を招くニュアンスで用いる人が続出(笑)。

4つ目は『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』より「え、あ、はい」ネット上で返事する時に盛んに用いられました。

5つ目は「○○ライザー先輩」。由来は『フリージング』で能登麻美子が演じたサテライザー先輩ですが、他のアニメでも能登が登場する度にネット上の住人が「能登ライザー先輩」とか、そのアニメで能登が演じているキャラクター名と「○○ライザー先輩」を合成した言い回し(例、『灼眼のシャナⅢ-Final-』のヘカテーだったら「ヘカテライザー先輩」)を書き込んでいました。

この他、当該番組以外の文脈ではあまり使われなかったものの『花咲くいろは』の「ホビロン!」、『Steins;Gate』の「トゥットゥル~」、『魔乳秘剣帖』の「貧乳は人に非ず!」、『輪るピングドラム』の「生存戦略」といった有名な台詞もありました。

(文:コートク)
※サムネール画像はイメージです。本文とは関係ありません。