「特撮映像館」、今回取り上げるのは『妖怪大戦争』です。本作を基にしたリメイク版もありますが、その内容は別物。強大な妖力で日本妖怪を苦しめるダイモンにご注目ください。

前作とはうって変わってエンターテインメントに徹した活劇として構成された、シリーズの中でも特に知名度の高い本作。監督は本シリーズ、『大魔神』シリーズで特技監督を担った黒田義之で、本作では本編と特撮を兼ねている。


古代バビロニアの吸血妖怪ダイモンがよみがえり、海を越えて日本へやってきた。代官・磯部兵庫の姿を借り次々と人の生き血を吸っていく。

代官の屋敷の池をねぐらにしていた河童がそのことに気づいたが、ダイモンに追い払われ日本妖怪の助けを借りることに。しかし油すましたちの手を借りては見たもののダイモンの力は強大で倒すことができない。

一方、代官に仕える真山新八郎は叔父の祈祷師から代官が妖怪に命を奪われていることを知らされ、妖怪を退治しようとするのだが、ダイモンの妖力は祈祷師の命まで奪ってしまう。祈祷師に託された弓でダイモンの目を射抜き、妖怪を倒したように思えた新八郎だったが、新しく赴任してきた代官に姿を変えたダイモンのため、処刑を宣告されてしまうのだ。

関西弁の油すましなど妖怪たちの方言で日本各地から集まっていていることを匂わせるなどの演出もいい。日本の妖怪が結集するあたりは子供たちには楽しみなシーンだろうし、善の妖怪と悪の妖怪という分かりやすい構図もよかったのだと思う。ただ日本の妖怪が総動員で立ち向かわなければ勝てないダイモンの強さが目立ってしまったのは個人的にはちょっと残念な気がしないでもない。

ダイモンは大魔神同様、目だけは俳優の目をそのまま生かした造形。作り物の眼球でない凄味は大映ならではというところか。演じたのも大魔神と同じ橋本 力。

前作の好評を受けて急遽制作が決まった本作は、前作と同年の冬休みに公開された。併映は『蛇娘と白髪魔』。ホラー作品の2本立てということからも怪獣ブームが去っていたことがうかがわれる。

巨大な怪獣が暴れる作品とは違って等身大の妖怪が活躍する本作で目立った特撮・合成というと、やはりダイモンが分身するシーンとなるだろうか。また本作でもラストシーンの百鬼夜行が幻想的に描かれ余韻を残している。

妖怪がセリフをしゃべるのはシリーズ3作のうちでも、実は明確なものはこの『妖怪大戦争』だけ。妖怪と人間の関わりという点でも他の2作とは一線を画しているようなところがある。

まずは気楽に本作を楽しみ、2回目、3回目に上記のようなことに気を留めて鑑賞してみるといいかもしれない。

監督・特技監督/黒田義之
キャスト/青山良彦、川崎あかね、神田 隆、大川 修、戸浦六宏(語り)、ほか。
1968年/79分/日本

(文:猫目ユウ)